こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。
あなたの会社のミッションはなんでしょうか? わざわざCSVなどという流行の言葉を持ち出さなくても、ほとんどの企業は「こういことで社会に貢献したい」、「こういう社会にしたい」という創業者の思いでスタートしたはずです。それがすなわちその会社のミッション(使命)であり、迷ったときに立ち返る場所になります。
ですから、CSRについてお手伝いするときも、私はいつもその会社のミッションをお聞きしたり、確認します。そこがすべての原点であるし、それがそのままCSRの柱になることも少なくないからです。
もちろん創業から時間が経つ間に、周囲の環境も変化し、ミッションを見直したり、ときに調整する必要がある場合もあります。そのこと自体は問題ありませんが、「儲かるから」というだけの理由で、ミッションとは大きくかけ離れたことをしていると… おかしなことになってしまう場合も多いのではないでしょうか?
だとすれば、常に自社のミッションを意識し、迷ったときにはそこに立ち返って判断する。そういう姿勢こそが、企業としての力を、信頼を強化していくように思います。
今回ご紹介するアメリカの事例もそうです。ドル箱であったタバコの販売をやめるという決断は、普通だったらなかなかできないはずです。ミッションに立ち返ったからこそできた決断、得られた成果と言えるのではないでしょうか。
《CSRファイル》#009
「全米2位のドラッグストア CVS の変貌」
レスポンスアビリティ 井上孟
皆さんはふだん企業のビジョンやミッションをどのくらい意識されているでしょうか? 日頃から短期的利益の追求を求められるあまり、いつの間にか企業のビジョンと事業内容が離れてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。
今年最後(※)の「CSRファイル」では、アメリカで今年大きな話題になったあるドラッグストアの動きをお伝えします。
(※この記事は、2014年12月25日発行の「サステナブルCSRレター」に掲載されたものです)
アメリカでは健康関連や医薬品を扱うはずのドラッグストアがタバコを販売しており、企業の本質的な存在意義との矛盾が指摘されていました。
そんな中、今年の2月にドラッグストア全米2位のCVSが、タバコの取り扱いを2014年内に中止することを発表しました。この発表は、オバマ大統領をはじめとしてさまざまな関係者から大きな賞賛で迎えられました。そして今年9月、同社は一カ月前倒しでタバコの販売を終了しました。
これだけならばただのイイ話ですが、今回はこの事例を少し掘り下げてみたいと思います。
実はCVSはこのために数年にわたり周到な準備をしています。2年前、同社はそのミッションに、「人々がより健康になるための支援をする」ことを掲げました。タバコの販売取りやめの検討が始まったのはこのときからです。とはいえ、タバコは同社にとっても重要な収入源なので、すぐに対応することはできなかったようです。
ミッションに沿った事業ポートフォリオに
そこで同社は数年がかりで会社を変え、ミッションに正面から向き合うことを決めました。行なったのは、事業ポートフォリオの見直しです。タバコの販売には重点をおかず、人々の健康を直接支援できる薬剤給付管理部門の売上を伸ばすこととしたのです。その結果、2013年時点で同部門は総売上の51%を占め、なお成長を続ける主力事業になりました。対してタバコの売上高は、全体の1.6%とごくわずかになりました。
その結果、2014年には、タバコの販売を中止しても薬剤給付管理部門の成長がその損失をカバーできる見込みがたちました。今年2月の発表はこうして行なわれたのです。
肝心の業績は?
実際の業績への影響はどうだったのでしょうか? 11月時点で同社の売上高は四半期ベースで9.7%増加しています。そして同社の12月の株価は2月より20%高い水準で推移しています。
さらにCVSは、今回の件で評判を大きく向上させました。現在はタバコを扱わない薬局のネットワークを構築し、競合他社とのさらなる差別化を始めています。
結果が完全に明らかになるにはまだ時間がかかりますが、今年はCVSにとって、売上や株価だけでなく、ミッションによりコミットすることで自社の存在価値を社会に明確に打ち出し、ブランド価値を向上させることができた躍進の一年だったといえます。
皆様の会社は、この一年でミッションの実現にどこまで近づけたでしょうか。来年一年もぜひ、ミッションの実現を意識して、会社の価値をさらに向上させていただきたいと思います。
初出:2014年12月25日発行 サステナブルCSRレター No.209
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