2014年10月6日
欧州ここだけの話

競争相手とすら手を組んで水リスクに備える海外の先進企業たち

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。

 人間を含めてあらゆる生物にとって、水は生きていくのにかかせない物質です。
生きものだけではありません。企業活動も、水がなければ止まってしまうでしょう。

 降水量が多く、世界的に見ても水資源に恵まれた日本では、昔から
「水と安全はタダ」とか、「湯水の如く使う」という表現が使われるほど、
水はあってあたり前のもののように思われてきました。
なので、それがいかに大切なものなのか、そして、実は今その水に大変なリスク
が迫っている
ことを忘れてしまいがちです

 しかし、世界は今や大変な水リスクに直面しており、このままでいくと、
2030年には水の需要の40%(!)が不足するという事態が予想されています。

 たとえ日本の水事情は今後変化しないとしても、私たちの生活やビジネスが
海外に依存している以上、海外の水不足は私たちにも大きな影響を与えます。
つまり、私たちもこの水リスクに無縁ではないのです。

 にも関わらず、日本国内の水に対する危機感は… 私はむしろこの危機感の
なさに、危機感を感じます
。(いや、冗談ではなく…)

 海外企業が水リスクについてどのように臨んでいるのか、ロンドン在住の
下田屋毅さんにレポートしていただきます。

《欧州ここだけの話》#003

「CSR 先進企業の水への対応」

                 サステイナビジョン  下田屋毅

 「水への対応」は、近年、より関心が高まってきたCSR項目の一つで
す。私は、ロンドンをベースに活動をしており、様々なCSRに関する会
議に積極的に参加をしていますが、水のリスクに関する会議も英国など
で定期的に開催されていて、欧州の先進企業の取り組みに触れる機会は
多くあります。水に関する取り組みは、環境マネジメントシステムの中
で、自社の事業活動上で行われてきましたが、最近では、サプライ
チェーン上、特に海外の事業所やサプライヤーの水の影響に議論はシフ
トしてきて
おり、先進企業は既に様々な取り組みを行っています。

 先日、2014年8月31日〜9月5日まで約一週間に渡り、世界における
水リスクの対応に関する国際会議である2014ワールド・ウォーター・
ウィーク(WWW)が、スウェーデンのストックホルムにおいて開催さ
れ参加いたしました。この国際会議は、ストックホルム国際水研究所
(SIWI)が主催するもので、毎年同時期に1週間をかけて開催されてい
るものです。1991年からストックホルム・ウォーター・シンポジウム
として開催され、2001年に現在のワールド・ウォーター・ウィークと
いう名前に変更され今に至ります。これは世界の水に関連した発展途上
国における開発やサステナビリティの課題、貧困地域での課題、また新
興国や先進国の地域も含めた世界の各地域での水に関する様々な問題・
課題の幅広い範囲に対応するものです。世界130カ国から200以上の団
体・組織がイベントに協力し、国連機関や各国大臣、政府関係者、各国
の開発機関の参加は基より、企業、NGO、大学・研究機関の専門家な
ど、約3,000人もが参加する
大規模なものです。日本からは、政府関係
者、水に関するNPOなどで、約10人前後、日本企業の関係者は、私が
確認した中では、欧州支社も含めて残念ながらゼロでした。

水リスクに取り組む先進企業は?

 今回の会議で企業として存在感が高く感じた企業は、ザ・コカコー
ラ・カンパニー、ネスレ、ペプシ
、またNGOでは、WWF、CDPです。
そして、国連グローバルコンパクトのCEOウォーターマンデートがセッ
ションを設けて、これら企業の先進事例を一緒に伝えるとともに、水に
関する積極的な活動を促していました。CEOウォーターマンデートの
トップのギャビン・パワー氏と話をしましたが、彼は、「CEOウォー
ターマンデートへの日本企業の参加がないので、意識を高めてもらうた
めに日本への訪問も検討したい」とのことでした。これについては、私
は別途関係者と話を進めていきたいと考えています。

競争相手とさえ協力が必要

 さて、5日間のセッションで、企業活動に関わるセッションに積極的
に参加しましたが、やはり、ここに来てプレゼンをしている企業は、水
に関して危機意識が高く、取り組みが非常に進んでいると感じました。
これらの企業が今回も口を揃えて言っていたのは、「1社では実施する
のに限界がある。サプライヤーも含めて情報を共有し、他企業や団体と
協調行動をとっていく必要がある
」ということです。そして、水に関わ
る問題は、今後企業に差し迫るリスクとしては緊急度が高く、競合企業
であっても協力しなければならない課題である
ということです。具体的
には、水の問題ではコカコーラとペプシでさえ協力関係にあるというこ
となのです。また、それらの企業間を取り持つのが、WWFなどのNGO
です。WWFは、今までの水に関する取り組みを「ウォーター・スチュ
ワードシップ
」としてコンセプトを定義づけし、2013年に提示、取り
組みを促しています。またCDPは、投資家の視点からCDPウォーター
して、水に関する情報開示を促しています。2014年は、日本企業は
ターゲットとなっており、前年の21社から150社へと対象を広げていま
す。質問書が送られてきてびっくりした企業もあったのではないでしょ
うか。グローバルに水の情報開示は関心が高まっており、年々改善され
対応が進められています。水への対応が遅れている企業は、ビジネス上
のリスクとして今後投資も受けにくくなる
ことが示唆されています。

やった方が良いものではなく…

 以上が、今回WWWに参加した際の情報と雑感です。もし欧州やそれ
以外の地域での自社のCSR/サステナビリティに関する取り組みが遅れ
ていると感じたのであれば、すぐにでも行動を起こす必要があると考え
ます。欧州の先進企業は、「うちがやらなければ競合に先行され、負け
てしまう
」との危機感が原動力になっており、CSRは「やった方が良い
ものからやらなければならないもの
」へと認識が変わっています。つま
り実施していかなければビジネスの持続可能性にも影響があるというこ
となのです。これらの状況を真剣に受け止め、是非積極的に行動を起こ
して欲しいと思います。
 
 
初出:2014年9月25日発行 サステナブルCSRレター No.196

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