2015年7月21日
原材料調達

ブラジルに行かないと見えなかったもの

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。今回もまた海外の話題です。前回のタケダの金田さんの言葉ではありませんが、やはり現場を見ないとわからない、大局観を掴めないということがたくさんあります

 いや、現場には現場のスタッフがいるし… と思われるかもしれません。もちろんそうなのですが、それでも人は自分の視点からしか見られないものなのです。実際、きちんとしているところであっても、私がお邪魔してCSRの視点から拝見すると、今まで気がつかなかったリスクが見つかることはよくあります

 もちろんリスクだけではありません。こんな風にすれば…と、新しいチャンスが示唆されることもしばしばです。

 ましてや原材料のサプライチェーンとなるとどうでしょうか? 商社やサプライヤーまかせで、実際にどんなところで原料が作られているか社内の誰も知らない、そんな場合も少なくないでしょう。

現場に行けばすべてがわかる?

 最近はサプライチェーン・リスクが話題になり、それをどう管理するかが課題になっていますので、CSR担当の方がサプライヤーや、さらにその上流まで訪問する、そういうことを行っている企業む増えていていいことだと思います。

 一方で、現場まで行ったはいいけれど、どこを見たらいいのかわからない、という声もよく聞きます。あるいは、現地の取引先はやはりビジネスを継続したいわけですから、良い部分しか見せてくれない、正確な説明をしてくれない、という場合もあるようです。

 専門的な視点がある方がいけばもちろんそうした問題はかなり回避できるのですが、CSRの部署に現場の専門家がいる、特に環境や社会の特定の問題の専門家がいらっしゃるわけではないでしょう。

専門家と一緒に訪問するメリットとは?

 一方、私がそういう現場にお邪魔すると、おおよそ最低限のリスクはチェックすることができます。もちろん私もすべての原料のことがわかるわけではありませんし、短い訪問時間の間、また見せていただける範囲でチェックできることは限られています。それでも、頭の中で過去に訪れた他の現場と比較したりすれば、どの程度の管理をしているかはわかりますし、実際に今ある問題だけでなく、将来的なリスクも想像できるものもあります。

 ちなみに、こういう場合に重要なのは現場を見ることに加えて、そこで働いている方々との会話です。いろんなことをお聞きするのですが、その会話の中から、結構いろいろなことがわかるのです。

 あ、こんなことを書くと、現場の方は私に来て欲しくなるかもしれませんね(^^;) なので、この話はどうぞ秘密にしておいてくださいね(笑) それに私だって、クライアントのために仕事をするのですから、リスクを見つけたとしても、それをどう克服するのか、問題を解決するのかということを考えます。粗捜しをしに行くわけではないのです。

 そんなわけでいろいろな業種の方から、サプライヤーやサプライチェーンのリスク診断のための視察の依頼を受けますが、今回はそんな仕事の一旦をちょっとだけご紹介します。昨年12月のブラジル出張についてです。

 こうした視察は、私自身もいろいろな現場を見ることができて勉強になるのですが、今回もブラジルの農園の管理が想像以上に進んでいて感銘を受けました。もちろん今後考えなくてはいけない様々な課題も発見したのですが、課題が明確になれば、後は実行するのみです。こういうサプライチェーンの調査には、様々なメリットがあるのです。

 《月の便り》

「地球の裏側で見たものは…」

            サステナビリティプランナー 足立直樹

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。12月に入り日
本はすっかり冬の空気だと思いますが、私は先週末からブラジルに
出張して夏に逆戻りです。前回の上海での話に続き、今度はブラジ
ルからの「現場」レポートをお届けしたいと思います。

 ブラジルというと、日本からはまさに地球の裏側です。12時間
のフライトに2つ乗る必要があり、順調に行っても、乗り継ぎ時間
を入れると30時間近い行程です。今回は大幅なスケジュール遅延
があったので、ブラジルに着くまでに40時間近くかかり、目的地
までは丸二日以上かかりました。

 なぜこんな遠くまで来たかと言えば、そこから日本に向けてたく
さんの原材料が届けられているからです。私たちの生活や企業活動
を支えるために、大豆、トウモロコシ、コーヒーなどの農産物、さ
らには鉄鉱石や銅などの鉱物と、実に多くの原材料が日々供給され
ているのです。

 ですから、たとえ日頃はあまり意識することがないとしても、と
ても関係性の深い地域なのです。そして今回は、そこで農産物がど
のように作られ、一次加工され、日本に向けて輸出されるのか、そ
のプロセスをCSR的な視点から確認するための調査を行いました。

現場に来るとわかること

 そしてもちろん、実際に来てみないとわからないこと、気付かな
いこともたくさんありました。

 たとえば、スケールです。日本に比べてはるかに大きいであろう
ことは予測できますが、地平線までの見渡す限りの農園はやはり圧
巻です。数十haというのはこちらでは「小農園」扱いで、家族経
営でも1,000haというところが珍しくありません

 この広さになるともちろん機械化は必須ですが、収穫には大型の
機械を何台も使っても何週間もかかり、一次加工のための行程は
24時間3交代でもなかなか追いつかないといいます。

 ですから、個人経営や家族経営であっても、日本の農業とはまっ
たく印象が違いますし、仕組みも高度に組織化されています。特に
今回訪問した農園はいずれも様々な国際認証を取得しているところ
なので、環境面、社会面においてもしっかりした管理をしていまし
た。

 そして興味深かったのは、機械化が進んでいるもう一つの理由
が、ブラジルはもともと労働慣行について政府による管理や規制が
非常に厳しいということです。多くの人口を抱え、また周辺諸国に
も大きな労働力はあるのですが、厳しい労働時間制限や労働安全衛
生管理の結果、そして人件費の高騰で、機械化はさらに加速し、
CSR的な問題も発生しにくい状況になっています。

ブラジルが抱える課題とは?

 こうしたことが農園の方々の努力による品質向上と相まって、ブ
ラジル農業の国際競争力をさらに増しているようです。そして出口
側を見れば世界的な需要増、ブラジルの農業は順風満帆かと言う
と… 条件のいい場所では農地の開発余地が少なくなって来ている
ことや地球規模の異常気象の影響など、新たな課題も出てきている
ようです。

 このようにして作られた作物が日本に届くのには、輸送時間だけ
で二ヶ月ぐらいはかかるそうです。たしかにつながってはいるけれ
ど、見えにくい。それが現代のサプライチェーンなのでしょう。し
かし、そこを可視化し、問題を解決しやすくするのが、CSRの仕
事なのではないかと思います。

 さて、あなたご自身は、自分の会社を支える原材料がどこから届
けられているのか、その行程を把握し、最上流の生産現場を実際に
訪問したことがあるでしょうか? もしまだであれば、ぜひ一度機
会を作って訪問することをお勧めしたいと思います。

 そこにはビジネス的にも、CSR的にも、様々な発見があるはず
です。そしてなぜ、CSRを推進することが事業の継続性、安定性
のためにも重要か、実感することができるはずです。
 
 
初出:2014年12月5日発行 サステナブルCSRレター No.206

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