こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。WWFジャパンの粟野美佳子さんに、WWFジャパンが最近発行したレポート『環境報告に見る 企業の生物多様性取り組み状況』を元にお聞きしたインタビュー(前半)とそれを紹介する記事(「生物多様性を誤解している!? 日本企業の実態をNGOが明らかに」)は大反響でした。
これをメルマガ「サステナブルCSRレター」で紹介した日には、一日で300名以上の方がこの記事を読んでくださいました。ドキッとした企業の方々多かったのかもしれません。
あるいは、この秋にISO14001が改訂され、生物多様性への取り組みの報告が求められるようになるという話を既にお聞きになっていて、「生物多様性、やっぱりやらなくちゃなぁ」ということかもしれませんね。
※ちなみにISO14001の改訂については、日本で4番目にISO14001の審査員の登録をなさった猪刈正利さんへのインタビューを以下の記事で紹介しています。改訂内容にご興味がある方はこちらをご覧ください。
「ISO14001の改訂で生物多様性への取り組みが義務化!?」
そして今回は、粟野さんへのインタビュー後半の概要をご紹介したいと思います。耳が痛い、しかし非常に重要な指摘が多数含まれています。どうぞ動画と併せてご覧ください。
なぜ「生物多様性=植林」が横行するのか?
6回目の動画では、生物多様性=社会貢献、生物多様性=植林という安易な解釈、活動になってしまっている企業が多いことについて、その原因を推察します。
「サスナビ!420 粟野美佳子さん (6) 生物多様性の取り組みは社会貢献でいいの? その誤解が生まれる理由は… 」
やはり自社の事業との関係性をしっかり考える、このプロセスをスキップするわけにはいかないようですね。
原材料リスクをどう効率的に管理するか?
そして、自社との関係性を考えれば、多くの事業活動において、原材料調達は外せない課題になります。ところが今回のレポートで明らかになったのは、明確な原材料調達方針を持つ企業がまたきわめて限られているということです。
経営のコンサルティングをしている立場から言えば、これは生物多様性にとってのリスクである以上に経営上のリスクであるということを強調したいと思います。生物多様性のためではなく、自社の事業の継続のために早急に手を打つ必要があるのです。(もちろん生物多様性も重要ですけれどね)
そしてそういうことに気がついた企業をサポートする制度として、原材料の認証制度があります。認証原材料を使うことで、かなりリスクを回避することが可能だらです。実際、欧州や北米はもちろん、それ以外の国でも、認証原材料を使うのが当たり前になっている場合も少なくないのです。
ところが、この認証制度について、日本では誤解されていることが多いようです。おそらくそれは、日本国内と海外ではそもそも文化的に考え方が違うことがあるのかもしれません。
「サスナビ!421 粟野美佳子さん (7) こんなに大きい、認証制度についての国内外の温度差!」
NGOのことを誤解していませんか?
実はWWFは、自然保護活動をするだけでなく、こうした認証制度を企業と一緒に作ってきました。しかし、こうしたNGOの専門性が日本ではまだ十分に理解されていないようです。
これは、日本ではNGOへの信頼度が低く、高い専門性を持つNGOの存在が知られていないということがあるようです。しかし、これも世界の常識とは異なります。
グローバルなビジネスを展開している企業は、WWFなどの有力NGOとむしろ積極的に提携をしています。そしてそれは、NGOからの評判を良くしようということが理由ではないのです。
「サスナビ!422 粟野美佳子さん (8) NGOと組むことの必要性、意味を理解していますか? 」
無知、不明を告白していませんか?
つまり、先進企業がNGOを協働したり、持続可能な原材料調達に取り組むのは、レピュテーションリスクやNGOからのネガティブキャンペーンを避けるためではないのです。自社の事業を継続するために必要だからなのです。
たとえば最近世界各国で、森林破壊ゼロ(deforestation free)という国際的な目標にコミットし、ビジネスのやり方を変える企業が増えています。これも国際世論にただ迎合するということではありません。それだけの理由で、こんな大きな決断はできません。
そうではなく、このような行動が、自分たちの事業を継続するために必要なことなのだということに、企業も気がつきはじめたということなのです。
一方、日本では、環境報告書を発行する企業の割合が少なく、また、発行していてもその中で生物多様性について明確な考えを示せていません。このことはつまり、こうした問題を理解していないことを、自ら社会にむけて告白しているようなものかもしれません。
「サスナビ!423 粟野美佳子さん (9) ビジネスリスクを理解していないことを告白している日本企業 」
このまま逃げ切れるのか…?
日本はなぜこれでやって来れたのかと言えば、島国であり、「日本語」という壁が日本企業の内情が外にそのまま伝わることから守ってくれていたのかもしれません。日本語で発された情報は、ほとんど外に伝わることはないからです。
ところが、情報やメディアのグローバル化により、日本国内の情報だからと言って海外に伝わらないで済むということはなくなってきました。かつては見過ごされていた日本国内のことも、もはや覆い隠すことはできなくなってきたのです。
特にこれから東京オリンピック開催の2020年に向けて、海外のメディアや消費者は日本企業に注目するでしょう。そのときに、今までと同じやり方でやっていて問題はないのでしょうか?
そして、いま国際的には企業は生物多様性にどのように取り組むことが求められているのでしょうか? また、それを実際に行うのにはどうしたら良いのでしょうか? 粟野さんからの、具体的なご提言やアドバイスをお聞きください。
「サスナビ!424 粟野美佳子さん (10) いま世界が求めている生物多様性への取り組みの神髄とは? 」
「みんながまだやっていないから、自分たちもやらなくて大丈夫」ではないのだ、という粟野さんの発言が印象的でした。
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