2015年8月7日
CSRファイル

年初の予想が的中! 持続可能な調達がトレンドに

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。今回再録する「CSRファイル」は、今年最初に発行した弊社のメールマガジンに掲載した記事です。そのタイトルはズバリ、「2015年は持続可能な調達が進む」です。

 実は、私自身も今年の「新春のご挨拶」で、今年は持続可能な原材料調達網を確立することが大きなトレンドになるだろうと書きました。原材料の安定的な調達やCSR調達についてご相談をいただくことが以前より確実に増えていることを日々実感してたからです。

 それだけではありません。これをとりまく状況も、特に海外で急速に進展しているからです。そしてその影響で、日本企業の動きも目立ってきました。

 今回の「CSRファイル」では、最近もっとも動きが早い原料の一つであるパーム油を取り上げ、2015年年初の状況をご紹介しています。そしてそれを紹介するメールで、私はこのように書きました。

 正直に申し上げれば、ビジネスを取り巻く環境はけっして楽観で
きるものではありません。しかし、その中でCSR的な視点を持
ち、先手を打っていくことがビジネスの継続性に確実に役立つよう
になる
でしょう。

CSR的な視点を持ち、CSRの課題をしっかりと把握し、それに適切に対応する。それが生き延びるための条件になりつつあるということです。そのためにも、今年のトレンドである「持続可能な調達」については、ぜひともしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

予測は正しかったのですが…

 それから半年強が経ち、もうすっかり2015年の後半に突入していますが、この予測は正しかったと言えるようになりました。

 もちろん全体から見ればまだしっかりと取り組み始めていない企業の方が多いのですが(それは先日ご紹介したWWFのレポートを見れば一目瞭然ですね(^^;))、しかし、やらなくてはいけないと動き始めた企業は確実に増えています。

 私たちにご相談いただく企業は、大企業、それも超大手が圧倒的に多いのですが、最近ではそれだけでなく、中堅企業の方が増えていることからも裏づけられます。それだけ裾野が広がっているということです。

 ただ実は、「急速な変化」が私の予測をも上回っていたという事態すら起きてきています。 「持続可能な調達に取り組み始めれば、それで十分」とすら言えなくなってしまったのです!

 ですので、今回ご紹介するようなことだけ考えていれば大丈夫、というわけではなくなりつつあることに注意が必要です。そうしたことについてはまた別の記事でご紹介したいと思いますが、まずは今から半年強前、今年最初の段階で既にどんな状況だったかを以下の記事でお読みください。

《CSRファイル》#010

「2015年は持続可能な調達が進む」

              レスポンスアビリティ  武末克久

明けましておめでとうございます。新しい年の始まりに、今年はどんな年になるだろうと思いをめぐらしている方も多いのではないかと思います。私は、2015年は持続可能性に配慮した認証原材料に関する企業の取り組みがますます加速する年になると考えています。

認証原材料の中で最も急成長しているのがパーム油でしょう。持続可能なパーム油の国際的な認証制度を管理するRSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil )が2014年11月に公開した“Impact Report 2014”によると、RSPO認証パーム油の年間の生産キャパシティは、RSPO認証パーム油の生産が開始された2008年以降増加を続け、2014年6月時点で1,110万トンです(現在では1,180万トンまで増加。これは世界のパーム油の年間生産量のおよそ18%に相当します)。

一方で需要の方はどうかというと、供給ほどは成長していないようです。同報告書によると、2013年に「認証油」として取り扱われたパーム油は、生産された認証油の51%にとどまりました。およそ半分の認証パーム油が一般的なパーム油として流通したことになります。

しかし、2015年には、需要が拡大し、需給の差が縮まるのではないかと考えられます。というのは、多くの企業が2015年までに認証パーム油に切り替えると宣言しているからです。

RSPOが2013年に公開した“A Snapshot of RSPO Members’Annual Communications of Progress”によると、300を超える企業が、使用しているパーム油を2015年までに100%認証油にするとしています。これらの企業は、目標を達成するために認証油への切り替えを年内に加速させるでしょう。

パーム油だけではありません

このように2015年という目標年限が国際的に強調される原材料は私が知る限りではパーム油だけですが、パーム油でのこのような動きによって、それ以外の原材料の取り組みも促進されるのではないでしょうか。

企業が使用している原材料は多岐に渡りますが、中にはパーム油と同様に森林破壊の大きな原因になっているものもあります。認証パーム油への切り替えを進める企業は当然、パーム油だけではなく、これらの原材料についても認証原材料に切り替えるなどの持続可能性に配慮した原材料調達を推進させるでしょう

とはいえ、認証原材料の使用や認証製品の販売は国外、特に欧州での話であって、国内ではまだ関係ないとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし日本でも、FSCのマークが印字された紙パック飲料やレジロール(レシート)、レインフォレストアライアンスのカエルのマークがついた缶コーヒーが2014年の後半に登場するなど、普段の生活の中で認証マークを目にする機会が増えてきています。実は国内でも認証原材料を使用する土壌はでき上がりつつあるのです。

 以上のようなことを考えると、2015年は持続可能な原材料調達の取り組みが大きく前に進む1年になると私には思えるのです。この動向を皆様にしっかりお伝えするために、今年も最新の情報をお届けしていきます。どうか楽しみにしてください。

初出:2015年1月8日発行 サステナブルCSRレター No.210

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《レスポンスアビリティから関連のお知らせ》

 「持続可能な調達と言っても、何から手をつけたらわからない。」
 そうおっしゃる方も多いと思います。そのような場合には、生物多様性という課題とからめて考えるのが有効かもしれません。企業にとって生物多様性はしばしば、持続可能な調達ともっとも関係が深い問題だからです。

 「持続可能な調達」と「生物多様性」という二つの大きな課題に一度に取り組むこともできるのです。詳しくはこちらをご覧ください↓
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