2015年7月23日
NYサステナブル通信

サプライチェーンの透明性、アメリカでは法律で要請

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。

 少し前にロンドン在住の下田屋毅さんに「現代の奴隷労働の状況と対応」というタイトルで、奴隷労働の現状をご報告いただきました。(当ブログでは「あなたも奴隷を使っている!?」でお読み頂けます。)奴隷労働はサプライチェーンにおける人権問題ということで、昨年秋にジュネーブで開催された「第3回ビジネスと人権フォーラム」でも大きく取り上げられています。

 つまり、現代の奴隷動労をなくすことはビジネスの優先課題であり、国際的に取り組みが進められているのです。

 アメリカではどうなのでしょうか? 実は、それを防止するための法律まで作られているのです。そこで今回は、奴隷労働をなくすためにアメリカがどのように対応しているかを、ニューヨーク在住の田中めぐみさんに解説していただきます。

 経済のグローバル化が進み、サプライチェーンが世界中に伸びるている現在、これは欧州やアメリカ企業だけの課題ではありません。日本企業も当然同じように対応を求められているのです。この課題にどのように対応するのか? あなたの会社の準備状況はどうなのか? この機会にぜひ考えてみてください。そして、重大な経営リスクとして、経営層に報告することも必要です。

《NYサステナブル通信》#004

「サプライチェーンの透明性」

       FBCサステナブルソリューションズ  田中めぐみ

 アメリカでは、CSR情報の開示に関する政府の規制が徐々に増
えてきています。

 そのひとつに、2012年に施行されたカリフォルニア州サプライ
チェーン透明法があります。

 同法は、同州で事業を行う、世界売上1億ドル以上の小売・製造
業者に対し、サプライチェーンにおける人身売買や奴隷労働を排除
する取組みを開示するよう求める法律です。

 あくまで、同州事業者のみを対象とする州法に過ぎませんが、大
企業の多くが同州で事業を行っているため、現在、当該情報を開示
している企業は400社ほどにも上ります。

 また、同法は排除を強制するものではなく、情報開示の要請に留
まりますが、対策していないことへの批判を恐れる企業に対して牽
制の役割を果たすため、実質的には抑制効果があると考えられま
す。

他人事ではない奴隷労働

 人身売買や奴隷労働は、遠い国で起こっている他人事のように感
じるかもしれませんが、途上国に生産拠点がある企業にとって、身
近で重要な問題です。

 グローバル化に伴い、生産拠点と消費拠点の距離が遠くなり、サ
プライチェーンが複雑になるにつれ、仕入・消費する側から生産拠
点の状況が見えにくくなりました。しかし、現在でも、先進国企業
が発注している途上国の生産工場で、労働搾取や人権侵害は起こっ
ています。

 そして、そうした事実が明るみに出れば、非難されるのは、現地
企業ではなく、生産を依頼した先進国の企業です。アメリカの消費
者は、途上国の労働問題は関与する先進国企業の責任と考えている
ため、問題が起こると米国内での不買運動に発展します。

それは誰の責任なのか?

 自社のみならず、サプライチェーン全体の透明性を高め、海外サ
プライヤーの労働管理をすることは、グローバル企業の責任であ
り、リスクマネジメントなのです。

 昨年、バングラデシュの縫製工場が倒壊し、1,000人以上の死者
が出る大惨事が起こりましたが、この工場に生産を依頼していた欧
米の大手小売・アパレル企業が、メディアやNPO、消費者から厳
しく非難されました。

 その後、先進国各国の小売・アパレル企業は、バングラデシュの
縫製工場の安全確保を目的とする国際合意を設立し、監視を強化す
ると共に体制改善に対して資金援助を行っています (ヤフーコラム
http://goo.gl/un14cAに詳細を記載しています)。

 日本では、こうしたことに関心のある消費者は未だ少なく、法規
制もありませんが、グローバル企業の社会的責任として、生産拠点
で何が起こっているかを知り、バングラデシュのような凄惨な事故
が起こる前に、率先して対策を取ることが必要ではないでしょう
か。

初出:2014年12月11日発行 サステナブルCSRレター No.207

※メールマガジンをご購読いただくと、このような記事をタイム
リーにお読みいただけます。ご興味をお持ちの方は、ぜひ以下の
欄からお申し込みください。↓

「本物のCSR」情報メルマガ

初心者にもベテランにも役立つ
「本物のCSR」情報を無料でお届けします