2015年10月1日
本物のCSR

ビジネスチャンスとしてのSDGs

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。先週末、9月25~27日にニューヨークで開かれた国連サミットで、これから2030年までに世界が達成すべき目標、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals : SDGs)」が採択されました。

 「2030年に向けた地球全体の目標を知っていますか?」でも紹介したとおり、既に国連加盟国は8月にこの内容に合意していますが、今回ニューヨークに集まった世界各国の首脳によって正式に採択されたのです。

 気をつけなくてはいけないのは、これは単なる政治目標ではなく、全世界で真摯に取り組むべき目標であることです。そして、その達成は各国政府や国際機関だけでは不可能であり企業の貢献が期待されていること、いやむしろこれらのうちどれか、あるいはいくつかに取り組むことが企業の地球社会に対する責任であると言ってもいいということです。

 つまりはこれが今後のCSRにおけるグローバルアジェンダなのです。と言ってもピンと来ない方もいらっしゃると思いますので、企業としてSDGsをどう捉えるべきなのか、もう少し深く考えてみたいと思います。

SDGsはビジネスの目標なの?

 「そもそもSDGsはビジネスの目標なの?」という質問に対して、私は自信を持ってYesと答えたいと思います。理由は三つあります。

 一つは、既に述べたようにこれは全世界の目標であり、企業セクターとて例外ではないということ。

 二つ目は、こうした社会課題の解決に取り組むことで「あの会社はわかっているな」と思われますし、しっかりした貢献をすれば「さすが」と評判アップできること。

 そして三つ目は、これはビジネスチャンスでもあるからです。なぜなら、「課題」があるということは、その解決が求められているということであり、それは明らかに「ニーズ」なのです。社会課題を自社の事業力で解決することができれば、それは新たなビジネスの開拓なのです。

 と言っても、まだなかなかわかりにくいと思いますので、17の課題について、これから一つずつ考えてみましょう。今日は目標1とそのターゲットについてです。

目標 1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる(End poverty in all its forms everywhere)

1.1 2030年までに、現在 1日 1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。

1.2 2030 年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。

1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度および対策を実施し、2030年までに貧困層および脆弱層に対し十分な保護を達成する。

1.4 2030年までに、貧困層および脆弱層をはじめ、すべての男性および女性の経済的資源に対する同等の権利、ならびに基本的サービス、オーナーシップ、および土地その他の財産、相続財産、天然資源、適切な新技術、およびマイクロファイナンスを含む金融サービスへの管理を確保する。

1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な立場にある人々のレジリエンスを構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的打撃や災害に対するリスク度合いや脆弱性を軽減する。

1.a あらゆる次元での貧困撲滅のための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの多大な資源の動員を確保する。

1.b 各国、地域、および国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを設置し、貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援する。
【出典:IGES仮訳】

 日本との関わりで言えば、「貧困を削減する」だけだとピンと来ないかもしれませんが、ターゲットも含めてよく読んでみると、国内でもまだできていないことがたくさんあることがわかると思います。

世界の貧困の現状

 一方で、世界の貧困、特にもっとも厳しい貧困の現状はどのようなものなのでしょうか? 以下、国際連合広報センター(UNIC)のファクトシートからご紹介します。

  • 全世界で極度の貧困の中で暮らす人々の数は、1990年の19億人から半分以下に減少しました。しかし、今でも8億3,600万人が極度の貧困に苦しんでいます。開発途上地域では、およそ5人に1人が一日1ドル25セント未満で生活しています。
  • 南アジアとサハラ以南アフリカには、極度の貧困の中で暮らす人々の圧倒的多数が集中しています。
  • 脆弱で紛争の影響を受ける小さな国々では、貧困率がしばしば高くなっています。
  • 全世界で5歳未満の子どもの4人に1人が、年齢に見合う身長に達していません。
  • 【出典:持続可能な開発のための2030アジェンダ採択 — 持続可能な開発目標ファクトシート】

    どうしたら貧困を削減できるのか?

     それでは、どうしたら貧困を削減できるのでしょうか? 貧困というと寄付ということをすぐに思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは緊急避難的措置にはなっても、根本的な解決にはなりません。つまり持続可能ではないのです。

     貧困を解消する持続的な方法は、仕事や雇用を生み出すことです。となれば、企業ができることはいろいろありそうです。雇用拡大はもちろんですが、いわゆるBOPビジネスを行うことや、起業支援など、起業の経験やノウハウが役立つ場面は多くあります。

     またターゲットの方を見てみると、貧困層や脆弱な立場の方々に様々なサービスを提供したり、技術や資源へのアクセスを確保したりというものがありますが、これも起業が強い分野ですね。

     いやそのためのお金は誰が出すんだ?と心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、各国は資源動員、つまり予算を増やすことや、投資拡大の支援が求められていますので、この分野にはこれから確実にお金が流れ込むはずです。

    すでにお金は動きはじめている

     実際、今回のサミットでも中国が20億円(2400億円)を投じて途上国支援の基金の創立を表明しました。中国が支援される側から支援する側にまわったという意味でも重要な一歩ですが、それをこの国際的な文脈の中でさらに浮かび上がらせようという戦略かもしれません。

     また、国際開発金融機関(MDBs)と国際通貨基金(IMF)は既に今年7月に、SDGsの達成に取り組む途上国に対して、今後3年間で4千億ドル以上の資金を動員すると発表しています。

     もちろん直接こうしたお金をあてこめということではありませんが、公的資金が投資され開発が加速すれば、市場も拡大するはずです。もちろん単なる「(経済)開発」ではなく、あくまで「持続開発」になるよう、企業がこれまで蓄積した知恵とノウハウを提供したいものです。

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