2015年8月16日
原材料調達

オリンピックもエシカルがいい。東京五輪はこのままで大丈夫?

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。

 新国立競技場のコンペやり直しにロゴの盗作疑惑と前途多難な感じの東京オリンピック・パラリンピックですが、もしかしたらそれ以上に大きな問題になるかもしれない課題があるのをご存じでしょうか? それは…

こんなオリンピックはいやだ!

 オリンピックを開催するために、どんな「モノ」を使うかということです。どういうことかというと、フェア・プレーを謳っているオリンピックで、とてもフェアとは言えないモノを使っていたらおかしいですよね。

 ところが実際には、児童労働によって作られたボールが使われているのではないかとか、森林を破壊した木材を競技場に使っているのではないかとか、そもそも競技場を作るために環境破壊がされていたり… 様々な問題が実際に起きうるのです。

 最後の問題について言えば、オリンピックが大規模化するにつれ環境負荷が増大していることや、世界的な環境への関心の高まりもあり、IOCとしても環境問題へ積極的に対応する姿勢を示しています。

環境配慮もオリンピックの大きな柱

 具体的には1994年にはスポーツ、文化に加えて環境をオリンピック・ムーブメントの3つ目のテーマとすることを宣言し、オリンピック憲章にも環境保護の項目を加えました。ですので、現在ではIOCは開催都市に対して、オリンピック開催の影響が環境にもたらす影響を事前に評価し、また環境に配慮したオリンピックとすることを求めています。

 さらには最近では、調達に関しても、製品やサービスの環境性と社会性に配慮した調達基準をもうけ、それを保証するための手続きまで求められるようになってきています(詳しくは、「オリンピック・パラリンピックと環境リスクの管理」(斉藤照夫、損保ジャパン日本興亜RMレポート、2014)などをご参照ください)。

持続可能を目指したロンドン大会

 2012年のロンドン・オリンピックではロンドン大会組織委員会(LOCOG)が「持続可能なオリンピック」を目指して、運営面はもちろん、調達においても厳密で包括的な調達基準(LOCOG Sustainable Sourcing Code)を作り、環境面、社会面に配慮した製品とサービスを用いるよう徹底しました。

 具体的に言えば、会場を作る木材や、大会で使用する紙はすべてFSC認証を取得したもの、会場や選手村で供される食品や飲料はフェアトレード、有機栽培、持続可能な生産をされた認証のあるものなどとしたのです。

 2020年の東京大会も同様の取り組みをIOCから求められますし、また東京大会の計画でも、厳格な調達基準とガイドラインを作成すると宣言しており、今まさにその準備が進もうとしています。

持続可能な調達、日本の現状は?

 であれば万々歳、どうぞその調子で進めましょう、となりそうですが… 実はここに一つ大きな問題があるのです。

 というのも、社会性と環境性に配慮した調達(以後「持続可能な調達」と呼ぶことにします)においては、日本は必ずしも進んではいないのです。というか、イギリスをはじめとする欧州各国と比べると、むしろ「遅れている」と言った方がいいでしょう。

 「いや、日本にはグリーン購入法があって、環境に配慮した調達を行っているではないか」と思われるかもしれませんが… 2000年に策定されたグリーン購入法(正式には、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」)は正直言って一昔前の法律であり、省エネや省資源、リサイクルに主眼が置かれており、近年世界的に問題にされている労働人権といった社会性の課題はもちろん、生物多様性といった環境課題についてもカバーされていないのです。

ロンドンがここまでできたのは…

 例えば、前述のようにロンドン大会では、チケットやプログラムはもちろん、大会で使用されるあらゆる紙はFSC認証を受けたものとされました。しかし、すでにFSC認証紙が日常生活に十分に浸透しているイギリスにおいては、これは特別なことでも、難しいことでもなかったはずです。

 街中や駅の中にある普通のコーヒーショップでも認証豆や認証砂糖を使っているイギリスにおいては、会場内や選手村のコーヒーや紅茶、砂糖をすべて認証されたものにしろと言われても、造作はなかったことでしょう。日本でだってできないことはないでしょうが、ちょっとハードルは高くなりそうです。

 さらに言えば、競技場の内装はもちろん、建設工事に使用するあらゆる木材を持続可能であることが独立した第三者によって証明された木材だけにしろと言われたら… これはなかなか厳しいと言わざるを得ないのです。

企業担当者にはまたとない機会

 しかし、だからこそこれは素晴らしいチャンスでもあるのです。これまでなかなか知られていなかった、理解されていなかった「持続可能な調達」という考え方を広め、持続可能な調達のための体制を一気に整備するのに、こんなにいい機会はないはずです。なにせ、これは大会を開催するために必要なことなのですから。

 特にこの機会を活用することをオススメしたいのは、こうした調達に関係する企業の担当者です。持続可能な調達が必要だとこれまで感じていても、社内やお客様からなかなか理解をもらえず、苦労なさっていたことと思います。だからこそ、今がチャンスなのです。持続可能な調達体制をいち早く確立し、これからのマーケットをしっかり掴んでください。
 

持続可能な社会を望むなら…

 もちろんこれは、持続可能な社会を望むすべての方々にとっても追い風です。IOCは最近、「レガシー」という考え方を非常に大切にしています。レガシー(legacy)とは遺産のことですが、ここでは大会が終わった後に社会に遺されるもの、考え方を指しています。

 つまり、大会を契機に環境や社会への配慮が一層進み、それが開催地などの地域にしっかりと根付くことを強く意識し、また求めているのです。オリンピックは済めば終わりのお祭りではなく、新しい社会を作るための重要な一里塚なのです。

 既に述べたように、環境や社会に配慮した製品やサービスの調達・流通に関して言えば、日本は必ずしも進んでいるわけではありません。もっとできること、しなくてはいけないことがたくさんあります。そうしたより進んだ配慮を求め、加速することができるのがこれからの5年、と言えるでしょう。あなたが意見を言うなら、今なのです。

エシカルなオリンピックへ

 こうしたことを背景に、東京大学名誉教授の山本良一先生が代表を務める日本エシカル推進協議会(JEI)は、2020年東京オリンピック・パラリンピックを環境のみならず社会面にも十分に配慮したエシカル(倫理的)なもの、すなわちエシカル・オリンピック・パラリンピックにすることを提言しています。

 そしてその一環として、エシカル・オリンピック・パラリンピックに相応しい調達基準とガイドラインを策定してもらうために、調達基準やガイドラインに含めるべき「エシカル調達ガイドライン配慮項目リスト」(PDF)を策定し、現在、賛同者を集めています(2015年8月24日まで)。リストの取りまとめは、不肖、私がいたしました。

 賛同は個人はもちろん、団体でも可能です(というか、歓迎します)。8月24日までに賛同していただいた方のリストをまとめ、この「エシカル調達ガイドライン配慮項目リスト」と一緒に東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に提出いたします。

 あなたご自身はもちろん、賛同していただけそうな個人や団体の方にもご連絡いただければ幸いです。ご興味のある方は、JEI事務局(japan.ethical【a】gmail.com)までメールでご連絡ください。
  
 

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