2015年7月1日
アジアのCSR

ICS2015に見るアジアのCSRの今

こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。少し時間が空いてしまいましたが、6月19日にマカオで開催されたCSRの国際会議、International CSR Summit 2015の報告です。

マカオで開催されたものの、主催団体はマレーシアに拠点をもつEnterprise AsiaというNGOです。Enterprise Asiaはもともと社会起業家を応援する活動をしているのですが、社会課題を解決するという点でCSRにも関係性が深いことから、CSR Summitも開催しています。

参加者は、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン、インドが中心です。日本からは私一人かと思ったら… もうお一人いらっしゃいました(後述)。

今回のテーマは二つあって、一つはDemocratizing entrepreneurship(起業家精神を民主化する)とInstitutionalizing CSR(CSRを組織化する)です。

Institutionalizing CSRと聞いて最初に思ったのは、CSRを組織の中全体に広げ、事業と一体化する、アジアもそういう時代なのかと思ったら… 実は必ずしもそれだけではなさそうです。

パネルディスカッションが3つあったのですが、そのテーマを見るとどこに興味があるかがわかります。

最初のパネルは、Creating a Legislative Framework for Sustainable Practices(持続可能な慣行のための法的なフレームワークを創る)でした。実は、いまアジアでは、CSRを「義務化」「法制化」するという動きが進んでいるのです。

CSRは法定義務です!?

例えば、インドでは、一定の事業規模の企業に対して、純利益の2%をCSR活動に支出することが会社法で義務づけられています!

CSRって、「社会のサステナビリティを達成するための、企業による自発的な行動」じゃなかったの!?とびっくりしてしまいますが… また、CSR情報の開示については、もう完全にアジアの大きな流れと言ってもいいかもしれません。

で、このパネルでは、こうした義務化は是か非かの議論が行われました。おもしろかったのは、フィリピンからのパネリストであるGwendolyn Garcia氏の発言です。彼女は現在は国会議員ですが、以前はセブ州知事を3期9年に渡って務め、様々な改革を行った実力者です。そのGarcia氏は、CSRは「魔法のバズワード」だと言います。87269904

「CSRと言えば、企業は動いてくれるわよ」というわけです。もちろんそのためにいろいろなインセンティブも与えたようですが、法制化して強制しなくても、うまく機能させることはできると自信満々で、なかなかやり手の政治家だなと感じました。

台湾からは、初代の環境保護署長(=大臣)であるDr. Eugene Chien(簡又新)がパネルに加わり、いかに政府が環境行政をリードしてきたかを説明してくださいました。アプローチそのものは日本と似たところも多いのですが、Dr. Chien自身がもともと工学系の研究者(技術者)であることもあり、より技術オリエンテッドであるようにも思いました。

アジアでもCSVがブーム?

そして二つ目のパネルでは、Creating Shared Value and Impact on Business Profitabilityということえ、いわゆるCSVの考えで、CSRをいかにビジネス戦略に活かし、また利益につなげるかというテーマで議論されました。

インドネシア最大のタバコ会社のCEOであるPaul Norman Janelle氏や、シンガポール最大のチェーンストアで生活協同組合のFairPriceのCEOのSeah Kian Peng氏などが登壇しました。

アジアでもCSVが注目されてきたということがわかり興味深かったのですが、まだ全体像がしっかりと浮かび上がっている感じではありませんでした。むしろこれと関連しておもしろかったのは、元フィリピンネスレのDavid Laurel氏のプレゼンテーションで、ネスレがいかにフィリピンのBOPを開発したかの実話です。

ネスレと言えば、CSVの発信元で、またアジアではBOPビジネスの先駆者です。ですので、CSVもマイケル・ポーターの受け売りのような通り一辺の話ではなく、しっかりと地に足のついたものでした。が、そのネスレのチームであっても、同じ国籍のスタッフが地元の貧困層と向き合い、信頼感を得るためには大変な苦労をしていることがよくわかりました。BOPもCSVも、本物にするのは、そう簡単なことではないのです。

あるいは、タイの石油会社、The Bangchak Petroleumの上級副社長のYodphot Wongrukmit氏は、同社がタイの農村部の生活を改善するために、自分たちのサービスステーションをいかに進化させて来たかをプレゼンテーションなさったのですが、これも同社が地域にいかに真剣に向き合ってきたか、そしてそれがビジネスにも結びついているかがわかって興味深く感じました。

おっと、ここまででかなり長くなってしまいましたね。
では、続きはまた次回ということで…
「チェックボックスを超えろ! こんなCSRもアリ!」

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