こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。昨日(「AREA2015、今年のアジア責任ある起業家賞は?」)の続きで、AREA (Asia Responsible Entrepreneurship Awards) 2015の表彰式の報告です。
前回も少し書きましたが、今回日系企業で受賞したのは東芝、ホンダ、リコー、武田薬品の4社。いずれもCSRの世界でよく名前の上がる先進企業です。このうち東芝、ホンダ、リコーの3社については、現地法人の活動を、現地法人が直接応募して受賞したものでした。それぞれの地域社会に貢献しているということですから素晴らしいのですが、会社全体としての方針はどのうなのか、またグループ全体でどのぐらい操業地域にコミットしているのかというのは正直ちょっと見えにくい気もします。
またこの3社もそうですが、本社のCSR関係者の方が見当たらないのも気になるところです。一つにはまだこの賞やイベントがそれほど有名ではないからということもあるでしょうが、では非常に有名なイベントや会議だったらたくさん日本からの参加者がいるのかと言えば… そういうものでもごく少数です。
メディアが取材しているから大丈夫? いや、それもほとんどありませんから、そこで何がホットだったのか、どんな議論がされたのか、日本にはあまり伝わらないのです。そういうところでどんどん海外の動きから取り残されていっているのではないかと思うのですが…
愚痴はこのぐらいにしておいて、一社だけ日本から直接参加していた武田薬品の話をしましょう。武田という名前を聞いてピンと来た方もいらっしゃるかもしれませんが、東京から来ていらっしゃったのは同社のCSRヘッドの金田晃一さんでした。
私は、さすがにこのイベントには日本からの参加者はいなさそうだなと高を括っていたのですが、少し離れたところから手を挙げて近づいて来る方がいて、照明の加減でお顔もよく見えなかったので誰だろうと思っていたら… 金田さんだったのでした。
「いやぁ、よくわざわざ参加なさいましたね。」と声をおかけしたら、「賞をいただいたので」というお答えでした。そしてしばし、この手の会議、相変わらず日本からの参加者は少ないですねという話題で盛り上がりました(笑)。
なぜ武田薬品は参加するのか?
金田さんと言えば、いろいろな会社でCSRをリードして来た、言ってみればCSR請負人のような方ですから、もちろん単に授賞式に参加するというのが理由ではないでしょう。
ご本人は、「活動現場や今回のようなCSRの流れを作っている現場の両方の現場に行かないと大局観が掴めませんから」とおっしゃっていました。なるほどです。そして実際に武田薬品ではその大局観をもとにCSR戦略を作っているそうで、つまりは「会社のCSRを動かす際の、「近道」を教えてもらっているような感じ」ともおっしゃっていました。
あるいは、「PDCAサイクルをまわす前段階としてR (Recognition=認識) の段階が必要であり、その認識がおかしければ活動自体もおかしなことになってしまう。」 そして「この認識をしっかりしないと、変化が早いCSRの世界で永遠にフォロー型のCSRに甘んじてしまうことになってしまう」ともおっしゃっていました。
まさにその通りで、海外でCSRをと思っても、何をしたらいいのか分からなかったり、せっかく行なっても思ったほど評価されなかったり… そういう残念な日本企業は多いですからね。最悪なのは、CSRは国内だけで海外ではほとんど何もしていないというパターンですが、これだって、海外、特に途上地域でこれだけCSRが盛んになっていることをきちんと認識していないが故の誤りでしょう。
ちなみに武田薬品が受賞したのは、Health Promotion Award(健康増進賞)部門で、同社の「タケダ-Plan保健医療アクセス・プログラム」の活動が認められためです。このプログラムは、各地のニーズをしっかりと把握した上でNGOとうまく提携し、本業と関係がある、つまり自分たちの強味が活かせる分野での活動です。世界の共通アジェンダである「国連ミレニアム開発ゴール(MDGs)」も意識していて、さすがと思わせるプログラム構築です。
こういうしっかりしたプログラム設計をするためには、現場での情報収集が欠かせないということなのですね。
予算がないから!?
日本企業のCSR担当者の方からは、「予算がなくて海外のイベントには…」ということもよくお聞きしますが、以上のようなことがわかっていれば、海外のイベントに参加するぐらいの投資はすぐにペイすることは明らかでしょう。なので、価値のわかっている会社は、積極的に参加する。そういう会社は常に一歩先を行ける。投資効果はますます高くなる。そういうポジティブ・フィードバックが働いていそうです。
一方で、金田さんは様々な機会をとらえて世界中のイベントに参加しているそうで、今年は中東のドゥバイでの会議がおもしろかったとおっしゃっていました。CSRは地域ごとに特色がありますから、少なくとも自分たちが事業をしている地域はおさえておきたいですね。これをお読みになったあなたも、ぜひまずはどこか一つのイベントでいいので参加してみてください。
それでも今すぐにというわけにはいかないかもしれませんし、一体どんな雰囲気で行われるのだろうと興味をお持ちになるかもしれません。これから参加するための「予習」のために、今回の授賞式の様子を少しご紹介しておきましょう。
女性陣はそろってドレスアップ
今回は夕方5時近くまでイベントがあり、その後、夜7時半からディナーと表彰式でした。海外ではしばしばありますが、こういう夜からのプログラムって、日本ではちょっと信じられないぐらいにフォーマルです。少し長めの休憩時間の間に部屋に戻った参加者や受賞者の方々は、しっかりドレスアップしての再登場です。
女性はドレスの方が圧倒的、イブニングドレスも少なくありません。男性も受賞者はタキシードにブラックタイの方が目立ちます。あとはそれぞれの国の正装(民族衣装)をなさっている方も少なくなく、なかなか華やかな雰囲気でした。
何も知らない日本人が、日本のつもりで参加すると、完全に圧倒されるでしょう(笑) スーツを来てればまぁいいだろうなんて思って、暑いところだし、夜だから少しリラックスしてと思って、ノーネクタイでジャケットだけにすると、完全に裏目に出るのです。まぁそれでも、たとえカジュアルな服装で参加しても、咎められることはまったくないので、そういう緩さもまたアジアのいいところですが…
あまり畏まった格好をしたくない人はカジュアルでも構わないのですが(ドレスコードが指定されているわけでもないですし…)、女性の方々は特に、これをオシャレをするチャンスだと喜んで、着飾って楽しんでいるようにも見えます。
ちなみに、これが専門家が集まる国際会議だと、夜は本当にリラックスした雰囲気でのカルチャラルイベントになる場合も多いように思います。今回はどっちなのかなぁと予想しながら、荷造りをするわけですね。ご自分で着付ができる方は、着物で登場すると無茶苦茶受けます(笑)
終了したのはなんと…
まずはディナーがゆっくりとサーブされて、それからいよいよ表彰式が開始。各受賞者の活動内容を短いビデオクリップで紹介し、一団体ずつ壇上でトロフィーを手渡し、記念撮影をしていくので、かなりゆっくりな進行でした。
当初の予定では10時半終了でしたが、とてもその時間には終わりそうにありません。結局、すべてのプログラムが終了したのはなんと11時半近くでしたが、受賞者の方々が皆さんとても嬉しそうにしていたのを見ると、こういうものにはしっかり時間をかけるのもいいなと感じます。
そんなことを感じながら、マカオの夜もふけて… なのですが、イベント終了後に部屋に戻る途中でカジノを通ると(カジノの中を通るのが近道だったのです!)、こちらはこちらでいよいよヒートアップしている様子でした。
※今回使用した写真は2枚とも、金田晃一さんにご提供いただきました。
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