前回の記事「企業と水の知られざる関係とは?」では、企業活動がいかに水に依存しているか、それゆえ世界の水リスクがいかに日本企業にも関係があるのか、そしてそれにどう対応していったいいのか。そうしたことを水ジャーナリストでアクアコミュニケーターの橋本淳司さんにお聞きしました。
今日あなたと一緒に考えたいのは、それではこの水の問題について、私たちの国はそれをどのように管理しようとしているのか。あるいはさらにより良くと管理するためにはどうしたらいいのか、ということです。
水の憲法ができました
日本にもこれまで、「水問題」がなかったわけではありません。農業では水利権は重要な課題でしたし、かつては工場による地下水の汲み上げや、河川の汚染などが問題になった時代もありました。
こうした問題について、日本では一つひとつ法律や条例が作られて対応が行われているのですが… 一つの河川に由来する同じ水であってもその用途によって管轄が異なり、統一的な管理ができていなかったのです。
これでは困るということで、流域を単位として統合的に管理できるようにと、これまでとはまったく異なる考え方に基づいて昨年、2014年春に制定されたのが水循環基本法です。ようやく、「水の憲法」が出来たのです。
外国人が日本の水を買い占める!?
実はこの水循環基本法ができた背景としては、少し前に問題視された、「外国資本による日本の水源地の買い漁り」があると言われます。美しく豊かな水が湧き出す日本の森林、海外から見れば喉から手が出るほど欲しいような貴重な資源なのに、日本ではその価値を高く評価する人はおらず、ただの山林として二束三文で買える… これに気がついた外国人が、その水源地を安く買い漁っているという話です。
実際にどのぐらいの土地が実質的に外国人に買われているのか、土地を買ったところで、その水を輸出することができるのか。そんなことをしても採算が合わないのではないか。いろいろな議論や憶測が流れましたが…
林野庁が調べてみると、たしかに最近になって外資による森林買収は大幅に増えているようであり、これに対抗すべしと超党派の水制度改革議員連盟が作られ、法律へとなったものです。
しかし、水リスクの観点から言えば、より重要なのは、「水は国民共有の貴重な財産」と位置づけられたことや、流域を単位として水循環を保全する必要がある、政府や自治体がそれを行う、というようなことの方でしょう。
この水循環基本法の基本的な考え方を、橋本さんに詳しく解説していただきました。
「サスナビ!443 橋本淳司さん (8) 水循環基本法が定める、○○を単位とした水の管理とは?」
地下水が減少している意外な原因
ところで、こうした水資源について気になるのは「地下水」です。以前問題になった工場による地下水の過剰な汲み上げは、規制の成果や工場による節水の努力もあり、最近では少なくなったようです。ところが、最近はもっと別の、ちょっと意外な理由で地下水が減っているのだと言います。
地下水で有名な熊本市を例に、地下水が減っている3つの理由について説明していただきました。
「サスナビ!444 橋本淳司さん (9) 地下水が減っている3つの理由を知っていますか?」
地下に供給される水が減って、地下水が減っている。ちょっと意外ではありませんか? ただその理由は、地方では水田の減少、都市部ではアスファルトの舗装によって地面を覆れてしまうことと、少し原因は違っているのですね。
私たちが都市洪水を防げる!
ところで、アスファルトで地面が覆われてしまった都会では、もう一つ別の水問題がおきています。都市型洪水です。
これを防ぐために、最近は放水路や地下貯留場など、大型の地下施設が作られています。しかし、そんな大規模なインフラを作れなくても、各家庭に小さなミニダム、要は雨水タンクを作ることで簡単に問題が解決できるのだそうです。
「サスナビ!445 橋本淳司さん (10) お金をかけずに都市型洪水を防ぐ方法とは? 」
地下水が不足することと、水が溢れ出て来ること、一見正反対に見えるようなこの二つのことが、実は同じ原因によるものだということも興味深いですね。
水循環も気候変動と関係があった!?
話を水循環基本法に戻しますと、この法律が本当に目指しているのは、水が循環する環境を見直し、循環を健全化することです。なぜなら、最近は気候変動の影響で、水循環が以前に比べて圧倒的に速くなってきており、そのことが、干ばつと豪雨の原因ともなっているからなのです。
地下水への水の流入が減ることが、地下水減少にも、都市型洪水の原因にもなっているということを先にお話ししましたが、もっと大きな水の循環で言えば、干ばつも豪雨も原因は同じなのだそうです。
「サスナビ!446 橋本淳司さん (11) 干ばつと豪雨の原因は同じ!? 」
戦国武将に学ぶ治水の知恵
降った雨をどう御すか、そしてそれをどう農作物の生産に活かすか。これは古くから為政者に共通の課題であり、適切に治水行える為政者が安定した治世を保つことができました。
このことは現代にも当てはまりそうです。しかし、必ずしも近代的な技術で大規模なインフラを作り、力づくで制御することがベストというわけではなさそうです。
橋本淳司さんへのインタビューの最後の締めくくりとして、2014年に制定された滋賀県の流域治水の推進に関する条例を例に、昔ながらの治水の知恵をこれからの水利用にどう活かすかということをお話いただきました。
滋賀県の新しい治水条例は、戦国武将の知恵をどのように活かしているのでしょうか?
「サスナビ!447 橋本淳司さん (12) 治水の知恵は戦国武将に学べ! 」
橋本淳司さんにお聞きする水にまつわる様々な話はいかがでしたでしょうか? 持続可能な企業経営や地域作りに役立つヒントがいくつもあったことと思います。
あなたの会社では、「水循環を守る」という発想はあったでしょうか? この発想があるかどうかが、きっとこれから先の命運を分けるはずです。水リスクに備えるには、水循環を守れ!です。
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