2015年10月13日
持続可能性

健康・福祉は世界的な成長ビジネス

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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。先週の火曜日からマレーシアの首都、クアラルンプールに来ています。先週はCSRの、今週はサステナビリティの会議があってそれに参加しています。クアラルンプールは私が研究者をしている頃に暮らしていたこともある街なので、週末はちょっと懐かしい場所を尋ねたり、友人にあったりもしました。

 そしてここは非常に変化の早い街ですので、そうしたことからも刺激を受けています。うかうかしていると、日本なんて置いきぼりにされそうです。

ヘイズが社会問題に

 もちろん一方で環境にも、社会にも、いろいろな問題もあります。今回特に問題だったのはヘイズ(煙害)の問題でした。インドネシアの森林火災や野焼きで発生した煙が数百キロ離れたシンガポールやマレーシアにまで漂って来て、空は毎日どんよりしており、ひどいときには学校も閉鎖されるほどです。

 当然ながら健康被害も出ていて、マレーシアの市民は文句を言っています。その健康がSDGsの三番目の目標になります。もちろんSDGsの目標は、もっとずっと広い意味でのすべての健康ですが、やはり途上国の方が健康問題につながるより多くの原因があると言えるかもしれません。

SDGsは企業にとって重荷なのか?

 そういえば先週参加したCSR Asia Summit 2015では、SDGsについてのセッションもありました。私自身は裏番組に参加したので聞けなかったのですが、企業としてSDGsにどう取り組むかということがテーマでした。参加した方に聞くと、最初は「また企業がやらなくてはいけないこと(義務)が増えるのか?」という不満の声も聞かれたそうですが、議論が進むにつれ、これがビジネスチャンスであることの理解も進んだようです。

 さて、それでは今回も目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」の背景となるファクトから見ていきましょう。例によって、UNICのまとめを引用します。

MDGsから引き継いだ課題

小児保健

  • 1990年以来、1日当たりの子どもの死者は17,000人減少してはいるものの、毎年600万人を超える子どもが、5歳の誕生日を迎える前に命を落としています。
  • 2000年以来、はしかの予防接種でほぼ1,560万人の命が救われました。
  • 世界的な進歩にもかかわらず、サハラ以南アフリカと南アジアが子どもの死者数に占める割合は増大しています。5歳未満で死亡する子どもの5人に4人は、これら2地域で暮らしています。

    妊産婦保健

  • 全世界で、妊産婦の死者数は1990年以来、ほぼ半減しています。
  • 東アジア、北アフリカ、南アジアでは、妊産婦の死者数がほぼ3分の2減少しました。しかし、開発途上地域の妊産婦死亡率(出生数に対する妊産婦死者数の比率)は、依然として先進地域の14倍に上ります。
  • 開発途上地域では、推奨される医療を受けられる女性が全体の半分にすぎません。

    HIV/エイズ

  • 2014年までに、抗レトロウイルス治療を受けられる人々の数は、2003年のわずか80万人から、1,360万人へと増加しました。
  • 2013年のHIV新規感染は210万件と見られ、2001年の水準を38%下回っています。
  • 2013年末時点で、HIV感染者は3,500万人に達しているものと見られます。
  • 2013年末時点で、24万人の子どもが新たにHIVに感染しています。
  • 【出典:国際連合広報センター、持続可能な開発のための2030アジェンダ採択 — 持続可能な開発目標ファクトシート】

     容易に予想されることですが、途上国では基本的な医療サービスが著しく欠けていることがわかります。しかし、毎年5歳になるまでに600万人の子どもたちが亡くなっているというのはやはり大変な数ですし、その8割がサハラ以南のアフリカおよび南アジアに集中しているというのは衝撃的です。それだけ世界は偏っているということです。

     また、二番目に妊産婦保健に関するファクトが来ています。大きく改善はしているものの途上地域ではきちんとした医療サービスを受けられる妊産婦の数はまだまだ少なく、引き続きテーマであることがわかります。

     そして三番目のHIV/エイズはここしばらくの間に急速に改善され、きちんとした治療を受ければ死に至る病ではなくなりましたが、一方で子どもの感染者もまだあり、どう減らしていくかはやはり引き続き課題です。

    目標3が目指すのはより包括的な健康と福祉

     実はこれら3つの項目は、MDGs(ミレニアム開発目標)に含まれていたものなのですが、SDGsではこの3つに限定せず、もっと包括的な目標設定をしています。さて、それではSDGsの目標とターゲットを見てみましょう。

    目標 3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する

    3.1 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を10万人当たり70人未満に削減する。


    3.2 2030年までに、新生児および5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。生後1ヶ月以内の新生児の死亡率を1000人当たり12人まで、5歳までの死亡率を1000人当たり25人まで削減する。


    3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する。


    3.4 2030年までに、非感染性疾患(NCD)による早期死亡を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健および福祉を促進する。


    3.5 麻薬乱用やアルコールの有害な摂取を含む、薬物乱用の防止・治療を強化する。


    3.6 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。


    3.7 2030年までに、家族計画、情報・教育、およびリプロダクティブ・ヘルスの国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関するヘルスケアをすべての人々が利用できるようにする。


    3.8 すべての人々に対する財政保障、質の高い基礎的なヘルスケア・サービスへのアクセス、および安全で効果的、かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンのアクセス提供を含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。

    3.9 2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質および土壌の汚染による死亡および病気の件数を大幅に減少させる。

    3.a すべての国々において、たばこ規制枠組条約の実施を適宜強化する。


    3.b 主に開発途上国に影響を及ぼしている感染性および非感染性疾患のワクチンおよび医薬品の研究開発を支援する。また、ドーハ宣言に従い安価な必須医薬品およびワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護およびすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を完全に行使する開発途上国の権利を確約したものである。


    3.c 開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国において保健財政、および保健従事者の採用、能力開発・訓練、および定着を大幅に拡大させる。


    3.d すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康リスクの早期警告、リスク緩和およびリスク管理のための能力を強化する。

    【出典:IGES仮訳に一部加筆】

     いかがでしょうか? 子どもや妊産婦の健康衛生だけでなく、メンタルヘルス、交通事故、薬物濫用、公害など非常に広範囲に健康・福祉をとらえていることがわかると思います。

     また、医療サービスの提供はもちろんですが、情報提供や教育、医薬品およびワクチンへのアクセスの権利を謳うなど、対応も広範なものになっています。

    世界での成長産業

     もちろん日本でも医療や福祉は今後ますます重要性が高まることは間違いありませんが、それ以外の国々でも同様の需要や支援は拡大するのです。健康・福祉がますます重要なビジネスになることは間違いありません。世界的な成長産業です。

     ただし同時に、こうしたことは基本的なサービスであり、医薬品等へのアクセスは権利でもあるのです。そのことを無視するような営利主義に対しては批判の声も上がるでしょう。

     適切な価格で、効果的な医療サービスを提供する。それがこれからの大きなビジネスになるのです。

     医療・福祉が社会から必要とされ、また尊敬される重要なビジネスであることはいつの時代になっても変わることはありませんが、SDGsのターゲットを見ながら、自分たちのリソースをどのように目標達成のために生かせるか、あらためて考えてみると、きっといろいろなアプローチが見つかるはずです。

     たとえば3.3に関連して水浄化技術の意義が再確認できるでしょうし、3.6は自動車産業が取り組むべき課題です(もちろんこれまでも取り組まれてきていますが)。そして、3.9を見ると、きわめて多くの企業が目標3と関係があることもわかるはずです。

     

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