2014年9月26日
月の便り

海外でCSRのコミュニケーションをする意味を理解していますか?

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。

 前回は、日本の大メーカーも自然可能エネルギー100%へのシフトを始めたこと(日本の企業も動き出した! 100%全量、自然エネルギーへ)をご紹介したところ、とても反響がありました。やはり先進企業の活動には勇気づけられますね。(あるいは、他社に先んじられて、ドキッとした会社もあったかもしれませんが…)

 今回はもう一つ、日本の頑張っている企業をご紹介したいと思います。ただ、今回ご紹介している優れている部分は、前回の大和ハウスとは少し違います。内容的に進んでいるのはもちろんなのですが、そのことをきちんと伝えようとしている点です。

 CSRではよく「ステークホルダー」という言葉が使われ、ステークホルダーとのコミュニケーションの重要性が語られます。しかし実際には、年に一度ステークホルダー・ダイアログを開いて、環境報告書(サステナビリティ・レポート)を発行しておしまいという会社も少なくありません。

 「伝えることと、伝わることは別」なのですが、これではそれ以前の、伝えることすらしていないに等しい状態で、本当にもったいないことだと思います。

 そしてもう一つ重要なことは、CSRにおいて地域というコンテクストを意識することは不可欠ですが、生産と市場の両方の地域をしっかりと意識してCSRを行っている日本企業はまだまだ限られているように思います。

 本気でCSRを行なおうとするのであれば、事業と関連性の強い地域のステークホルダーとのコミュニケーションを密にする必要があります。本社が日本にあるからという理由で、日本でだけCSRをしていたのでは不十分なのです。

 そうした中、今回の記事でご紹介する富士ゼロックスは、日本国内だけでなく、アジアにおけるCSRにとても力を入れているという点で際立っています。参考になる点がいろいろとあると思いますので、ぜひお読みいただければと思います。

急速に発展するアジアのCSR、
あなたの会社はどこまでフォローできていますか?

             サステナビリティプランナー 足立直樹

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。昨夜、香港から帰っ
てきました。蒸し暑い香港に比べると、東京はもう秋の空気ですね。

 今回の主な目的は、CSR Asiaが主催するCSR Asia Summit2014に
参加することでした。ご存知の方も多いと思いますが、CSRAsiaはアジ
ア全体でCSRの推進を行っている団体です。毎年秋にサミットと称して
大会を開催しますが、今年は10周年ということで、本拠地、香港での開
催でした。

 毎回とはいかないのですが、私は都合がつくときにはなるべく参加す
るようにしています。同様の集まりはいくつかありますが、アジアでは
このCSRAsia Summitがもっとも中心的なものになりつつある印象を受
けているからです。

 今回は10周年ということで主催者側も力が入っており、参加者も400
名と最大規模だそうです。日本からの参加者は10名弱と少ないのが残念
です。以前には日本からのツアーが企画され、もう少し参加者が多かっ
た回もあったのですが…

急速に深化するアジアのCSR

 反対に目立ったのは中国本土からの参加者です。場所が香港だったこ
とも大きいとは思うのですが、中国においてCSRが急速に進展している
ことを反映しているのではないでしょうか。もっとも、中国での活動の
発表は、中国企業ではなく外資系のところがまだ多かったようではあり
ますが…

 テーマとしては、アジアのCSRではお馴染のサプライチェーンは今回
もやはり中心的な課題でした。ただ、単にCSR調達をしていますという
レベルではなく、一次サプライヤーの先をどうするのかとか、木材、
紙、パーム油、綿花など原料にかかわる話題、そしてサプライチェーン
の情報開示など、より深化しています。

 つまり、注目されている課題も日本とは変わらなかったり、場合に
よっては日本よりも進んでいるように思えるものも
ありました。今やほ
とんどの日本企業が海外でも操業している、いや海外の割合の方が多い
ところも増えているわけですが、このようなアジア各国の急速な動きに
きちんとキャッチアップできているのか、ちょっと気になるところで
す。

参加するメリットは?

 このような国際的な会合に参加するメリットは、最新の状況や事例を
学べるというだけではありません。自社の取組みを、関心の高い各国の
ステークホルダーに知ってもらえる
という点も大きいでしょう。ですの
で、日本からの参加者が少ないのは、日本企業が頑張っていることを他
の国の方々に知ってもらえないという意味でも残念に思います。多くの
企業が堅実にCSRに取り組んでいるだけに、余計もったいないのです。

 そのような中、今回、日本企業で唯一プレゼンスが大きかったのは、
富士ゼロックスさんです。同社は担当者が一人、二人参加して発表をす
るというレベルではありません。このサミット全体のゴールドスポン
サーとなり、香港、中国本土、シンガポールなどからもたくさんのス
タッフが参加していました。そして開会セッションでは、取締役で中国
全土を統括する方がユーモアたっぷりにキーノート・スピーチを行い、
分科会では、執行役員で調達本部長の方がサプライチェーンのリスクを
どう管理しているのか、事例を発表なさっていました。

 緻密で徹底的な同社の取組みが高く評価されたのはもちろんですが、
さすが日本企業という声も聞きました。最近の国際的な会合では、中国
ばかりにスポットライトがあたり、日本は素通りされてしまうことも多
いのですが、きちんと発表を聞いてもらえれば、日本の底力は通じるの
です。また、CSR部だけでなく、調達や営業関連部門などからも多くの
方が参加しているところにも、同社が本気であり、またCSRが事業の中
に深く根付いていることを、多くの出席者が感じ取ったことでしょう。

コミュニケーションしないことのリスク

 一方、今回はアジアの金融の中心の香港ならではの企画として、ESG
に関するセッションもありましたが、この中ではいくつかのスピーカー
が名指しで「日本は特殊で、ESG投資がなかなか普及していない」と
言っていたのは気になるところです。

 詳しいことは今後またブログなどを通じてご報告したいと思います
が、アジア各地の早い変化についていくためにも、また、ふだんの活動
を多くのステークホルダーに知ってもらい、適切な評価につなげるため
にも、こうした会合には積極的に参加することが重要だと改めて感じま
した。国内だけでしているのは、居心地はいいかもしれません。しか
し、それではもったいないですし、下手をするとそれがリスクになりか
ねないからです。

 では、どうすれば? ご安心ください。海外のステークホルダーとき
ちんとしたコミュニケーションを行なうことも、私たちがお手伝いしま
す。アジア各国の最新の状況を踏まえた上で、効果的な活動を行い、そ
れをうまくアピールすることも、私たちが得意とするところです。
 

初出:2014年9月19日発行 サステナブルCSRレター No.195

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