2015年8月12日
金融CSR

大手銀行の通信簿、見てみたくないですか?

こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。今日はいつもとちょっと違った話題を提供したいと思います。

 CSRは本来すべての会社が取り組むべきものであり、関係があるのですが、どうしてもメーカーのことを注目しがちではありませんか? おそらくそれは、事業内容がわかりやすいということ、環境負荷がわかりやすいことなどが理由になっているのではないかと思います。

 大きな工場があって、煙がモクモクと出ていたりすると、いかにも環境に負荷を与えていそうですし、それを減らすためにいろいろなことができそうです。(あ、ちなみに日本国内の工場で、煙突から白い煙がモクモクと出ていたら… たぶんそれは水蒸気です。なので、大気汚染の心配はありません。しかし、エネルギーはかなり使っていそうですね…)

金融セクターの負荷は少ない?

 一方、金融セクターというと、紙ゴミ電気ぐらいしか環境負荷はなく、とてもクリーンな事業というイメージがあります。また、そうしたわりと少ない環境負荷についても、さらにそれを下げる活動をして、立派なCSR報告書も出して、よく頑張っている、そういう印象を持っていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。

 けれどよく考えてみると、金融機関にとってより重要なのは間接的な影響の方かもしれません。つまり、融資や投資をした事業が持つ環境や社会への影響です。なぜなら一般に、投資先や融資先の事業は、金融業そのものよりも環境にも社会にもはるかに大きな影響を与えているからです。

 いや、それは金融機関の「直接的」な影響ではなく、融資先や投資先が与える「間接的」な影響なのだから、そこまで責任を求めるのは酷というものだろうと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

間接影響も影響のうち

 しかし、実はこれはメーカーでも同じことです。組み立てメーカーであれば、自社の工場における負荷はもとより、サプライチェーンにおける負荷についても把握したり、場合によっては一緒に管理することが求められるようになって来ています。

 また、自動車メーカーや建設会社であれば、製造時の環境負荷よりも、使用時の負荷の方がはるかに大きいことが分かっています。なので、自動車メーカーや建設会社は、省エネ設計などをして、使用時の負荷を減らす努力をしているわけです。

 だったら金融機関だって… というわけで実際、最近であれば、PRI(責任投資原則)などのイニシアティブに署名したり、スチュワードシップ・コードを受け入れたりしているわけですね。

 一方で、そうは言っても金融機関が実際にどのように融資や投資をしているのか、外からはなかなか見えにくいものです。

金融機関を横並びで調査しました

 だったら、統一的なモノサシを使って、いろんな金融機関を評価してみよう。こうした考え方は海外ではかなり以前から使われていたのですが、この度、日本国内の大手5行について社会性の視点から13テーマ、のべ228項目についての格付を行なった結果が公開されました。いって見れば、大手銀行の詳細な通信簿が公開されたというわけです。

 これはFair Finance Guide Japanが調査・公開したもので、もともと2009年にオランダで開発されたモデルに基づいています。現在、OxfamがFair Finance Guide Internationalという形で様々なNGOなどをネットワークし、日本を含め世界7カ国(ベルギー、ブラジル、フランス、インドネシア、日本、オランダ、スウェーデン)に展開しています。

 日本ではA Seed Japan, JACSES, PARCの3つのNGOが運営し、またメコンウォッチ、FoE Japan、アムネスティ日本、オックスファムジャパン、JATAN、Green Economy Forumが協力をしています。いずれも海外の事情に詳しいNGOですね。

 基本的な考え方については、以下の動画を見ていただくのがわかりやすいと思います。

 そして肝心の評価結果はというと…

 ぜひFFGJのサイトでチェックしてもらいたいと思いますが、結構低い点数でびっくりするかもしれません。念のため申し添えておくと、各項目は5点満点ではなく、10点満点です。

FFGJ

 ちょっと厳しいのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、社会的に望ましい金融機関のあり方い比べると、このような評価になってしまうのだそうです。

 海外はどうなのか、比較してみるのもいいでしょう。試しにこのプログラムがスタートしたオランダ(Fair Financial Guide Netherland)を見てみると… かなり高い点数の銀行もあって驚きます。(逆に、環境分野では積極的とされているRabobankの点数が低くてびっくりしたりもしましたが…)
(ちなみに、オランダのサイトは当然ながらオランダ語による表記なのですが、Google翻訳で見るとかなりきちんとわかります!)

 アメリカ版やイギリス版なども見てみたいですね。また、今回は主に社会性についての評価ですが、環境面での詳細な評価も知りたいですね。
 
 
※補足の記事を書きました。こちらもぜひお読みください。(2015/08/15)
あなたのお金が人殺しのために使われていたら?
 
 
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