2014年8月7日
欧州ここだけの話

CSOが推し進めるイケアのサステナビリティ戦略

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。今回はロンド
ン在住のCSRコンサルタント、下田屋毅さんがサステナブルCSR
レターに寄稿してくださった記事のご紹介です。

 CEOという言葉は日本でもすっかり普通になりましたが、それ
ではCSOはいかがでしょうか? チーフ・ストラテジー・オフィ
サーがいる会社はいくつかあるかもしれませんが、今回ご紹介いた
だくのはチーフ・サステナビリティ・オフィサーです。

 日本企業でチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)を置い
ていらっしゃるところはまだほとんどないと思います(ご存知の方
は、ぜひ教えてください)。

 しかし、欧州企業のCSOの場合、その発想、その発言にもびっ
くりするはずです。

 それでは、下田屋さんのレポートをどうぞ!

《欧州ここだけの話》 #002

CSOが推し進めるイケアのサステナビリティ戦略

                サステイナビジョン 下田屋毅

 イケア(本社オランダ)は、スウェーデン発祥で欧州・北米・ア
ジア・オセアニアなど世界26か国に約300店舗を出店している世
界最大の家具販売店で、従業員はグループ全体で約13万5千人。

 イケアは、2011年1月、気候変動対策に関する国際NGO「クラ
イメイト・グループ」のCEOであり創始者であった、スティー
ブ・ハワード氏をCSO(Chief Sustainability Officer:最高サス
テナビリティ責任者)に招聘しました。

 ハワード氏は次のように語ります。「2030年までに貧困から抜
け出して中産階級に加わる人々は30億人で世界の中産階級が50億
人に膨れ上がる。これは資源が枯渇し始めている世界には大きな試
練となります。

 また、地球温暖化の影響で気温が6度上昇すると予測されていま
すが、近年体験している不可解な気象現象の多くはたった1度の気
温上昇で引き起こされているものです。二酸化炭素の排出は2010
年代終わりまでには峠を越して減少するようにしなければなりませ
ん。また、100万以上の人口を擁する都市は、1950年から現在ま
で12から500にまで近づいていて、2050年までの1世紀で人類
は、これまでにないペースで都市を作りつづけ、人々を貧困から救
い、そして気候を変動させていきます。

 サステナビリティは“やった方が良い”の段階から“やらなければ
ならない”段階に入っています。今まさにここで取り組まねばなら
ず、今後も人類が存続する限り継続しなければなりません。」

 ハワード氏は、上記を背景として企業がどのように貢献できるの
かを2012年10月に2020年をターゲットとしたサステナビリティ
戦略である「ピープル&プラネット・ポジティブ」を立ち上げ、自
社のCSR/サステナビリティをトップダウンで推進しています。

イケアのサステナビリティ戦略

 このサステナビリティ戦略は、次の3つに焦点を当てています。

1.数百万の顧客を元気づけ、より持続可能な生活を送ることを可
能にする。
2. 資源とエネルギーに依存しない努力する。
3.イケアのビジネスによって影響を受ける人やコミュニティのた
めに、より快適な生活を提供する。

 イケアは、2020年8月までに、持続可能な資源からの木材、
紙、段ボールを100パーセント調達するとしていて、その木材の
割合を2012年度の22.6%から2013年度は32.4%と増加させま
した。このうち、28.4%がFSC認証材、そして4%が再生材で構
成されています。

 また、現在イケアで使用している綿花の3分の2以上が、ベター
コットンなどサステナブルな農法で栽培されているとのこと。

 ベターコットンは、NGOベター・コットン・イニシアチブ(BCI)
が取り組みを進めているもので、農薬や化学肥料の使用と灌漑用水
の使用を抑え収穫高を増加させることができるものです。

 イケアは国際NGOのWWFなどと共にBCIの創業メンバーとして
インド、パキスタン、中国などで活動に尽力。同社は、2015年8
月までに、使用する綿花の全てをベターコットンなどの持続可能な
資源から100%調達するとしています。

 また、2020年8月までに、事業で消費するエネルギーと同等の
再生可能エネルギーを生み出すとし、イケアはこの達成に向けて、
2013年度までに世界の店舗に55万枚以上のソーラーパネルを設
置、風力発電設備を96機設置し稼働させています。

 イケアは、このように将来的な気候変動の影響や資源の枯渇など
のリスクを見据えてサステナビリティを事業の中核に据えている良
い事例です。そしてそれらリスクに対応するには、1社では限界が
あることから、他社やNGOと協働し世界においてリーダーシップ
を取りながら対応を進め、顧客や従業員、そしてサプライヤーなど
のステークホルダーをも自社のサステナビリティ戦略にうまく巻き
込んでいる事例でもあります。

 CSOのハワード氏は、「サステナビリティの取り組みは完璧と
いうものはなく、前進する過程で過ちを犯すもの」としながらも、
「企業として明確に方向性を持ち、透明性を保ち、本当に重要な課
題に率先して取り組むことが大切」だとしています。

 是非この事例を参考に、自社のCSR/サステナビリティ戦略を進
めて頂きたいと思います。
 
 
初出:2014年7月31日発行 サステナブルCSRレター No.188

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