こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。
弊社で発行している「サステナブルCSRレター」の巻頭言「月の便り」の転載を再開したいと思います。今回ご紹介するのは少し前になりますが、昨年2014年10月の記事、ちょうど生物多様性条約のCOP12(第12回締約国会議)が開催されていた時のものです。
COP12については、サスナビ!チャンネル(↓)でもいろいろとご紹介していますので、こうした動画もご覧いただきながら読んでいただきますと、より雰囲気が伝わってくると思います。
そもそもCOP12ってどんなもので、どんな風に行われたのでしょうか?
企業担当者は今回のCOP12をどのようにご覧になったのでしょうか?
今回話題の名古屋議定書の発効とABSについてはどうでしょうか?
「ビジネスと自然資本会計に注目が集まる、
COP12の現場から」
サステナビリティプランナー 足立直樹
こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。今日のメールは
韓国の平昌(ピョンチャン)からお送りします。報道でご存知だと
思いますが、現在ピョンチャンでは、生物多様性条約のCOP12が
開催されており、私も先週末からこちらに来ています。
今回のCOPの焦点は、まず一つは10月12日に名古屋議定書が発
効し、その最初の会合(MOP1)が開催されていること、そして生物
多様性の保全のための費用を倍増することが前回のCOP11で決ま
っていますが、その費用をどこから持ってくるのか(いわゆる資源
動員)、そして、愛知目標の2020年達成に向けての中間評価で
す。
しかし私はそれに加えて、ビジネスの役割がさらに高まってきた
ことも特徴なのではないかと思います。昨日15日から始まったハ
イレベルセグメント=閣僚級会合に先立ち、12日から3日間、こ
れまでの生物多様性条約のCOPの中で最大級の「ビジネスと生物
多様性フォーラム」が開催され、その中で多くの議論や発表が行な
われました。
そして、昨日15日のハイレベルセグメントの開会式では、COP
史上初めて、ビジネスセクターから各国代表に対してビジネスフォ
ーラムの結果の報告と意見表明を行なう時間が与えられました。非
常にタイトなスケジュールの中で、これは異例の厚遇と言えます。
このようにビジネスに注目が集まるのには、もちろん理由があり
ます。
生物多様性でビジネスに注目が集まるわけ
ビジネスフォーラムに生物多様性条約のディアス事務局長が何度
も登場して強調していたことは、愛知目標の達成に向けての進捗状
況は残念ながら厳しいものだということです。20ある数値目標の
うち、達成可能が見込まれるのは今のところ3つに過ぎません。ま
だ6年あるというものの、決して楽観はできません。
一方、生物多様性をもっとも「利用」しているのは、ビジネスセ
クターです。また、資源動員にしても、各国政府からの直接の拠出
による増加の可能性はかなり限られていますが、ビジネスの仕組み
が変われば、生物多様性の保全に役立つ活動に大きなお金の流れが
生まれる可能性があることに期待が集まっているのです。遺伝子資
源へのアクセスと利益配分の仕組みである名古屋議定書にしても、
まさに利用者から生物多様性の豊かな地域へ大きなお金の流れを保
証するものです。
つまり、国が中心となった「自然保護」的な活動による生物多様
性の保全では、規模的にも、スピード的にも、まったく不足するこ
とがますます明らかになる中で、ビジネスによる貢献が頼りの綱と
して期待を集めているということです。
そのような中、いくつかの先進的な企業が自社の取り組みを披露
しましたが、興味深かったのは、こうした会社はいずれも、自社の
ビジネスの継続性への危機感から取組みを行っているということで
す。原材料が不足する、水が足りなくなる、このようなビジネス上
の重大な危機に対応するためには、今からきちんと手を打っていか
なくてはいかない。その対応策として、生物多様性を保全している
のです。だからこそ、こうした企業は本気なのです。
ここでも自然資本が…
また、ビジネスフォーラムの中ではレポーティング(報告)に関
するセッションや発表が多かったのも特徴的でしたが、その中で
「自然資本」と「自然資本会計」はやはり最大のキーワードでし
た。そして、ここに一気に様々な動きが集約されつつあることを改
めて感じました。
熱心な読者の方はもうお気付きかもしれませんが、以上のことは
いずれも、これまで私がいろいろなところでお話ししてきたことと
まったく同じです。ですので、今までのところ私にとって特に目新
しい話はなかったのですが、「これからはこうなりますよ」と今ま
で話して来たことが正しいと確信する一方、日本企業がこうした国
際的動きにしっかりと対応していくためには、さらに積極的な行動
を加速していく必要があることを強く感じています。ぜひあなたの
会社でも、「自然資本会計」を活用して、事業の継続性を確かなも
のにして、さらに生物多様性の保全にも貢献をしていただきたいと
思います。
《関連のお知らせ》
自然資本について詳しく知りたい方は、足立の書き下ろしレポート、
『自然資本「超」入門』をぜひお読みください。
初歩から自然資本について勉強したい方に最適です。
初出:2014年10月16日発行 サステナブルCSRレター No.199
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