2014年7月29日
NYサステナブル通信

テスラの特許開放から学ぶ「持続可能性と情報共有」

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。

 今回は、メールマガジン「サステナブルCSRレター」からの御紹介で
す。サステナブルCSRレターでは、よりタイムリーに、より様々な視点
から、役に立つ「本物のCSR」の情報をお届けするべく、海外の執筆者
からの寄稿を増やしています。

 既にロンドン在住の下田屋毅さんの連載も開始していますが、新たに
ニューヨークから、FBCサステナブルソリューションズ代表の田中めぐみ
さんからご寄稿いただけることになりました。

 田中さんは、FBCサステナブルソリューションズの代表として、ニュ
ーヨークをベースに環境・社会問題の調査研究を行い、持続可能な社会
の実現に向けて取り組み、『サスティナブルシティ ニューヨーク』『グ
リーンファッション入門』をはじめ、多くの著書、訳書を出していらっ
しゃいます。

 欧州とは少し違った北米のCSRの現状について、田中さんの視点から
タイムリーな話題をご紹介いただきます。どうぞご期待ください。

 なお、田中さんの執筆記事は、代表を務められるFBCサステナブルソ
リューションズ(http://www.fbc-ny.com/)のほか、ヤフー(http://
bylines.news.yahoo.co.jp/tanakamegumi/
)でもお読みいただくこと
ができます。どうぞあわせてご覧ください。

 また、田中さんへのインタビューを、サスナビ!チャンネルでご覧い
ただくことができます。

 
 

 それでは、田中さん、どうぞよろしくお願いします!
 

《NYサステナブル通信》#001

テスラの特許開放から学ぶ「持続可能性と情報共有」

           FBCサステナブルソリューションズ  田中めぐみ

 初めまして、FBCサステナブルソリューションズの田中めぐみです。
アメリカの持続可能性に関する情報をお伝えしていきますので、どうぞ
よろしくお願い致します。

 先月、電気自動車(EV)メーカーのテスラモーターズが、保有する特許
のすべてを開放することを発表しました。CEOのイーロン・マスク氏
は、決断に至った理由を次のように述べています。

 「テスラモーターズは、持続可能な輸送手段の実現を早めるために設
立された会社であり、特許はその目的を阻害する。」「EVの生産台数は
未だに業界全体の1%未満に過ぎず、テスラだけでは気候変動を食い止
めるのに間に合わない。」「大手競合から身を守るために特許を取得し
たが、真の競合は他社EVではなく、世界中で日々生産され続ける膨大な
数のガソリン車だと気付いた。」

 全特許の開放という異例の事態に株価の下落が懸念されましたが、予
想に反し、発表から現在までに同社の株価は18%上昇。同社充電システ
ムの業界標準化が真の狙いかとも囁かれましたが、概ね”良い行い”によ
るブランド価値向上を期待して市場は好反応を示しました。

 テスラが成功したからといって、一般の企業がこの大胆な試みを真似
することは難しいでしょうし、必ずしも特許開放が成功するわけでもあ
りません。

 2009年のダボス会議でも、持続可能性に関する価値ある技術は共有
されるべきという概念が提唱され、翌年ナイキやヤフーなど異業種9社
が知的財産を共有するウエブ・プラットフォーム「グリーン・エクスチ
ェンジ」を設立しました。ナイキは、靴底に使用する環境配慮型ゴムの
製法など400もの特許を会員向けに開放し、他社に参画を促しました
が、賛同する企業は増えず、残念ながらこの試みは立ち消え、失敗に終
わりました。

 このふたつの事例から、何が読み取れるでしょうか。

 どれだけ優れた技術を持つ企業でも一社だけでは社会を変えられない
ということ、むしろ一企業の秘密保持が地球環境全体の損失に繋がる可
能性があること、にも関わらず、企業は情報開示に抵抗があること、一
方で、市場や消費者はその重要性を認識し、支持という形で行動を起こ
し始めていること、ではないでしょうか。

 社会は所有から共有へと変化しています。企業が抗ってもこの流れを
止めることはできないでしょう。モノも情報も共有するオープンな社会
になるにつれ、企業も透明性が求められています。意図せず起こった不
祥事であれ、社会のためになる技術であれ、共有することで信頼という
大きな資産を得られ、他社や社会とのネットワークを構築できます。長
期的に見れば、自社も社会も共に繁栄するという最良の結果が得られる
かもしれません。テスラやナイキは、多くの企業に一歩踏み出す勇気を
与えてくれているのではないでしょうか。

  
初出:2014年7月17日発行 サステナブルCSRレター No.186

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