2014年9月5日
NYサステナブル通信

言葉に惑わされない

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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。

 グローバルにビジネスを展開するには、当然、グローバルな
視点が必要です。しかし、私たちはどうしても、自分が今いる
場所の視点から見てしまいがちです。

 もちろんそれはある程度しかたがないことではあるのですが、
少なくとも他の視点があることは忘れないようにしなくてはい
けませんし、できれば時々でも別の視点から見てみるというこ
とを意識的にするといいのではないでしょうか。

 そんなことを言っても… と思われるかもしれませんが、そ
んなに難しく考える必要はありません。別の場所や、別の立場
にいる方に話を聞けばいいからです。

 そういう方々から話しを伺うと、ハッとしたり、なるほど!
と思うこともしばしばです。

 さて、今回のNYサステナブル通信にはどんな発見があるでしょ
うか? 田中さんの話しをお楽しみに!
 

NYサステナブル通信 #002

言葉に惑わされない

       FBCサステナブルソリューションズ  田中めぐみ

 海外在住者として私が感じる日米間の違いの中に、”言葉の捉え
方”があります。

 たとえば、一時期日本で「CSRからCSVへ」といった論調の記
事をよく見かけました。

 ご存知の通り、CSRは企業の社会的責任(Corporate Social
Responsibility)であり、CSVはマイケル・ポーター教授が提唱し
た、共通価値の創造(Creating Shared Value)のことです。

 詳細は教授の論文やメディアの記事を見て頂ければと思います
が、ざっくりと言えば、ポーター教授の主張は、社会活動を責任と
捉えるのではなく、機会として事業に取り入れ、社会問題を解決し
ながら企業利益を生む、つまり、企業価値と社会価値を共存させ
る、ということです。

 素晴らしい概念ではありますが、アメリカでは、似たような意味
を持つ言葉として「トリプル・ボトムライン(社会(People)・環境
(Planet)・財務(Profit)のすべてで利益を生む)」や「自然資本主義
(自然資本と人的資本を資本主義に取り入れる)」などがあります
し、CSRは事業と無関係の慈善活動のみとは捉えられていないた
め、CSVという用語が特別注目されることはありませんでした。

 日本で殊更CSVが取り上げられたのは、ポーター教授人気もあ
るのでしょうが、CSRやサステナビリティの概念が深く考えられ
ていなかったからではないかと感じました。

「エシカル」はエコなのか?

 また、何年か前から日本で「エシカル」という用語が流行ってい
るようですが、これもアメリカでの認識とは少し異なります。

 日本では「環境・社会問題に配慮した」という意味で使われてい
るようですが、アメリカでは一般的に環境面は含まれません。

 環境面を含めてエシカルという用語を最初に使ったのは、欧州の
ファッション業界だと思います。2000年代中頃にイギリスやフラ
ンスで開催された、環境・社会に配慮したファッションショーでエ
シカルという用語が使われていました。

 恐らく、当初、社会面のみに配慮した”エシカルファッション”に
取り組んでいた欧州の団体が、次第に環境面も取り入れるようにな
り、言葉だけがそのまま残ったのではないかと推測します。

 アメリカでも、英仏にならい、環境面を含めて「エシカルファッ
ション」を使う人が多少いましたが、一般的には動物性素材を使っ
ていない、労働搾取していないなど社会面に配慮したファッション
を指しますし、ファッション以外の分野で、環境面を含めてエシカ
ルを使うことはないように思います。

 環境・社会の両者を表す言葉としては、「サステナブル(持続可
能な)」や「レスポンシブル(責任のある)」が使われることが多い
ですが、どれが”正しい”用語なのかは各人・各企業の考え方次第で
すから、特定の用語に統一する必要はないでしょう。

 もうひとつ例を挙げると、随分前に日本で流行った「ロハス
(Lifestyle of Health and Sustainability)」という用語も、発祥は
アメリカですが、アメリカでその言葉を知っている人はほとんどい
ませんでした。

 ロハスは良い概念だと思いますが、日本では言葉のイメージが先
行したため、たとえ考え方に賛同してもイメージに合わない人は排
除されていた感がありますし、言葉の流行が終わると共に概念も廃
れてしまったように見受けられ、残念に感じました。

言葉より大切なもの

 言葉を前面に押し出すことは悪いことではないと思いますが、日
本では次々と新しい流行語を作り出し、それに飛びついているだけ
のようにも見え、少し苦々しく感じます。

 環境・社会問題対策は流行とは相容れないものですし、大事なの
は言葉ではなく、その背後にある概念とそれを形にする手法です。

 アメリカでも言葉の流行はありますが、皆が一斉に飛びつくこと
はありません。言葉はあくまで主張や見解を伝えるためのツールで
すから、深く考え、明確な意見を持ち、それを行動に移している企
業が言葉に踊らされることはありません。

 概念を伝えていくことは地味で時間のかかる作業ですが、一度理
解してもらえれば言葉に固執する必要がなくなります。顧客ロイヤ
ルティを高めるためにも、バズワードに踊らされず、丁寧に自社の
考えや取り組みを伝えていく努力が必要なのではないでしょうか。

 
初出:2014年8月28日発行 サステナブルCSRレター No.192

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