2014年9月19日
CSRファイル

こうすればあなたの会社も動く!? ネスプレッソに学ぶ、CSRの進め方

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。

 あなたはネスプレッソをご存知でしょうか? ネスレの子会社で、エスプレッソやコーヒーを淹れる機械を販売している会社です。最近はホテルの客室などに備え付けてあるのを見ることも多くなりました。

 また各国の目抜き通りなどにブティック(!)を作ったり、ジョージ・クルー二を起用したユーモラスなCMを流すなど、かなりPRに力を淹れています。きっとあなたもご覧になったことがあると思います。

ジョージ・クルー二よりも私は…

ジョージ・クルーニって実は案外…

 私はエスプレッソが好きなので個人的にも愛用しています。手軽においしいエスプレッソが飲めるのは大きな利点ですが、エスプレッソの粉がシングルユースのアルミパックに入っているのがちょっと気になるところです。

 実はそうしたお客様からの声は大きいそうで、同社では使い済みのアルミパックをリサイクルしています。ただし、日本以外ですが… 日本でもネスプレッソは回収したいそうなのですが、法律制度が障害となってまだ難しいそうです。

 また、主原料はコーヒーですので、どのようなコーヒーを使うかは、品質の面はもちろん、CSR的な面からも気になるところです。

 そのような中で、ネスプレッソは今なにを考えているのか、何をしようとしているのか。弊社の井上が報告いたします。

《CSRファイル》#005

ネスプレッソが大胆なコミットメントをできたわけ

                  レスポンスアビリティ  井上孟

 今回は、企業活動にとって最も重要な「予算」に関係する話題です。
皆さんの会社のサステナビリティ関連の年間予算はどのくらいでしょう
か? 先月8月29日、ネスレネスプレッソは今後6年間でのサステナビ
リティプログラムへの投資計画を公表しました。その額はなんと550億
毎年およそ100億円の予算をつける計算になります。今回はその背
景をご紹介します。

 ネスプレッソは主に最高級のコーヒーカプセル「グラン・クリュ」シ
リーズを販売しています。ビジネスの拡大にも積極的で、今年8月には
アメリカでの売上倍増計画を発表しています。

 一方、同社の製品に利用できる高品質なコーヒー豆は限られており、
世界で生産されるコーヒー豆のわずか数パーセントしか使えません。そ
こで、ビジネスを拡大するためには、そのわずかなコーヒー豆を安定的
に調達することはもちろん、生産量を増やす
ことも求められます。その
ために、ネスプレッソは、コーヒー農家が経済的に充足し、さらに生産
効率を高めることが不可欠
だと考えています。

 この考えに基づき、同社は2003年にレインフォレスト・アライアン
スとともにAAA Sustainable Quality プログラムを始めました。これ
は、コーヒー農家に経済的・技術的支援を行い、コーヒー豆の品質を高
め、環境や人権に配慮し、かつ生産性を高める取り組み
です。条件を満
たした農家のコーヒーは同社が高額で購入するため、コロンビアの農家
ではこれまでに収入が平均87%増加
しています。

アルミパックや二酸化炭素にも大胆な取組み

 同社はさらに2009年から、リサイクル体制の拡充と二酸化炭素排出
量の削減に取組んできました。今回8月29日に発表された投資は、この
取り組みを拡大させるためのものです。The Positive Cup と名付けら
れたこのプログラムには、以下の目標が含まれます。

1)コーヒー豆の100%をAAAプログラムから調達する
2)コーヒーカプセルに使うアルミニウムの調達を100%持続可能にする
3)カーボンを100%「インセット」し、カーボン・ニュートラルを達
成する

 カーボン「インセット」とは、バリューチェーン内で炭素排出量の削
減を行い、それにより自社の排出量を埋め合わせることです。自社とは
関係ない企業と取引して炭素排出量を埋め合わせる「オフセット」とは
異なり、サプライヤーとの間でメリットを共有できるのが特徴です。

 この The Positive Cup により、同社の取り組みは持続可能なコー
ヒー豆とアルミニウムの調達、そして気候変動への対応の3分野に拡大
します。

サステナビリティはトップから

 それでは、なぜネスプレッソはこのような思い切った投資を行なえる
のでしょうか? いくら最高級のコーヒー豆が必要だからといって、サ
プライヤーに550億円もの投資ができるものでしょうか? 通常なら
ば、必要性は感じてもそんなに大きな投資はなかなか行なえないでしょ
う。

 実はネスプレッソでは、CEOのジャンマルク・デュボワザン氏自身が
外部のサステナビリティ関係の有識者と定期的に対話を行ない、様々な
アドバイスを受けています。そして今回の決定は、まさにその外部有識
者との会合で策定されたものなのです。トップダウン型のアプローチに
より、投資の規模やスピードを加速させた
良い例といえるでしょう。

 一方、日本においては、サステナビリティが経営の根幹に関わるとい
う認識を持っている経営者はまだあまり多くはありません。実際、経営
者にサステナビリティの重要性を理解してもらえずに苦慮しておられる
方も多いのではないでしょうか。

 今回のネスプレッソの決定には、外部有識者がサステナビリティの重
要性や企業にとって必要な活動を継続的に経営者に伝えてきた背景があ
ります。社外の専門家の言うことであれば、経営者も真剣に話を聞き、
サステナビリティへの理解を強力に後押しできます

 あなたの会社のCSRは推進するために、ネスプレッソのようにCEOと
外部有識者との対話の場を思い切って作ってしまうのも一つの方法かも
しれません。
 
 
初出:2014年9月11日発行 サステナブルCSRレター No.194

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