2014年8月14日
月の便り

森林破壊ゼロが常識に!?

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こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。

3.11の東日本大震災後、
日本はエネルギーをめぐって大きく揺れました。

「こんな危険な原子力にはもう付き合えない。
 早く再生可能なエネルギーにシフトしよう」

そういう持続可能性を重視する声もある一方、

「そうは言っても、エネルギーがなければ始まらない。
 気候変動を防止するためにも、
 なるべく早く原発を再稼働して、
 競争力を取り戻そう」

企業、特に電力消費の大きなところからは、
そういう声も聞こえてきます。

そして、その後、原発の稼働率は限りなくゼロになり、
この一年弱は実際にゼロです。

「ほら、原発がなくてもやっていけるじゃない。
 原発を止めたからって、江戸時代の生活に戻るわけじゃない」

と前者が言えば、

「高い化石燃料を買わなくてはいけないので、
 日本の貿易赤字が一気に増え、電気代も上がった。
 やはり一刻も早く原発再稼働だ。」

と後者も譲りません。

ところがこの3年の間、世界ではどんどん再生可能エネルギーへの
シフトが進みました。

温室効果ガスの最大の排出国と批難されて来たアメリカと中国でも、
ものすごい勢いで再生可能エネルギーが増えています。

さらに個別企業で見てみると、
CO2の排出量を実質ゼロにする、
つまりカーボン・ニュートラルを宣言したり、
達成する企業が増えています。

カーボン・ニュートラルを宣言する企業は、
当初は金融など、もともとエネルギー使用量が少ない業界の企業が
中心でした。

しかし最近では、ITサービスやメーカーなど、
大量にエネルギーを使用する企業でも、
同様の宣言をするところが増えています。

背景にはいろいろな思惑や戦略があるのだと思いますし、
ここでこのことについて細かい分析はしません。
しかし、要は一言で言えば、
潮目は変わりつつあるのだということでしょう。

潮の流れを見極めず、いつまでも昔と同じ方でいいと思っていると、
とんでもないところに流されてしまったり、
下手をすると溺れてしまうかもしれません。

さて、前置きが随分と長くなってしまいましたが、
今回は森林についての国際世論、
そしてそれに対する国際的な企業の反応についてです。

《月の便り》

森林破壊ゼロが常識に!?

           サステナビリティプランナー  足立直樹

 生きものを保全するために一番いい方法は、その生息地を守るこ
とです。ですから生物多様性を保全しようと思ったら、天然林を開
発しないようにするというのは非常にいいやり方です。とは言うも
のの、天然林を一切開発しないというわけにもいかないですし…

 と考えるのが普通だと思います。しかし、「天然林はもはやこれ
以上一切開発しない
」、そう宣言する企業が増えています。しか
も、ここでいう開発とは、自社で直接開発する場合だけでなく、購
買している原材料の生産過程において、サプライヤーが開発する場
合も含むのです。つまり、間接的にであっても、森林の開発には一
切加担しない
、そう宣言することが常識化しつつある業界もあるの
です。

 こうした考え方は、“No Deforestation Policy”(森林破壊ゼロ
方針
)と呼ばれ、特にアメリカにおいて宣言する企業が急速に増え
ています。なぜここに来て、そのような動きが進んでいるのでしょ
うか?

 ことのおこりは、パームオイルの需要が急速に伸びるのにつれ
て、インドネシアなどで貴重な熱帯林が伐採されてプランテーショ
ンに転換される動きが拡大したことでした。これを受け、パームオ
イルを原材料に使う企業が、アメリカでNGOから大々的に批判を
受けたのです。

 「パームオイルなら、認証油を使えば問題ないのでは?」ちょっ
と詳しい方なら、きっとそう思われることでしょう。しかし、現在
もっともよく使われている認証油ではトレーサビリティが不明確で
あること、また、プランテーション開発に伴う森林破壊に歯止めが
かからないことから、NGOは企業により責任ある行動を求めて、
森林破壊に一切加担しないことを迫り始めたのです。

 アメリカなどでは、日本とは比べものにならないぐらいにNGO
の影響力が大きいので、企業は次々にNGOの圧力に屈し、今や森
林破壊ゼロ方針を表明することが、パームオイルを大量に使う企業
の間では「常識」になりつつあるというわけです。

 最初に述べたように、生物多様性の保全という観点から言えば、
これは歓迎すべきことです。2020年までに生息地の減少を少なく
とも半減しようという、生物多様性条約の愛知目標を達成するため
にも、必要なことと言っていいでしょう。それでも正直言って、森
林破壊ゼロ方針がこのスピードで企業の間に広がったのは、かなり
驚きです。

 しかし考えてみれば、これが日本と海外の温度差なのかもしれま
せん。「森林保全は好ましいことだけれど、一気にゼロというのは
無理だろう」という日本に対し、「人類の生存はもちろん、自社の
事業も依存している生物多様性がこれ以上損なわれることは看過で
きない。森林破壊ゼロという困難な目標にチャレンジし、持続可能
な企業になろう
」と考える海外企業。かなり大きな認識の差が生じ
て来ているように思います。

 気候変動対策で、一気に再生可能エネルギーへの転換を進めた海
外企業と、競争力の維持を理由に腰が重い日本企業のコントラスト
がデジャヴのように甦ります。

 しかし、だからといって森林破壊ゼロ方針を宣言した海外企業の
方が、日本企業よりも一概に優れているとは、私は思いたくはあり
ません。環境に対する配慮をまじめに積み重ねることや、実際の環
境技術において、日本企業が優れている点はたくさんあります。

 ただ残念なのは、急速に変化したルールに気が付かなかったり、
慎重に様子を見るばかりでなかなか動き出さず、結果的に流れに乗
り遅れてしまう
ことです。潮目が変わったことに気付いたら、積極
的に新しい流れに乗って、その中でぜひ実力を見せつけて欲しいと
思います。

 ちなみに日本企業の中ではいち早く花王が、森林破壊ゼロ方針を
表明しています。変化は日本にも到達しているのです。
 
 
初出:2014年8月7日発行 サステナブルCSRレター No.189

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