2014年7月16日
生物多様性

名古屋は日本抜きでスタート

こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。

あなたは「名古屋議定書」をご存知でしょうか?
もし中味も含めてご存知だとしたら、かなりの生物多様性通ですね。

さらに、タイトルと写真だけでピン!と来たとしたら…
その筋の方ですね(笑)

これは、生物多様性条約(CBD)の第10回締約国会議(COP10)で採択された、遺伝子資源の取り扱いに関するルールのことです。

CBD-COP10は2010年10月に名古屋市で開催されました。ですので、それを記念して名古屋議定書という名前が付けられたのです。

正式名称の「生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書」(Nagoya protocol on Access to Genetic Resources and the Fair and Equitable Sharing of Benefits Arising from their Utilization to the Convention on Biological Diversity)からも分かるように、遺伝子資源へのアクセスとその利益の分配に関するルールです。

ちなみに、この問題は英語ではAccess and Benefit Sharingと呼ばれるので、それを省略して通常ABSと呼ばれています。

どういう問題かというと、医薬品や機能性食品などの開発につながる遺伝資源を利用するにあたって、その利益配分を公平にするにはどうするか、一方、その遺伝資源へのアクセスをどうするか、というものです。

途上国と先進国の対立

なぜこれが問題になっているのかと言えば、これまで特に途上地域から多くの遺伝資源が無断で、あるいはきちんとした合意や公平な利益配分なしに持ち出され、その遺伝資源を使って先進国の製薬会社などが莫大な利益を上げてきたという背景があるからです。

途上国は、遺伝資源はもともとは自分たちの国にあったものなのだから、得られた利益は原産国にも還元するようにと主張してきました。

一方利用国(主に先進国)やその企業は、遺伝資源はたしかに途上国に存在していたが、それを薬などの形に開発して価値を高めたのは自分たちであり、これは開発した側の知的財産であると主張し、お互いに譲らなかったのです。

もっとも利用国側は、肝心の遺伝資源にアクセスできなくなっても困るので、利益配分のルールを明確にすることで、遺伝資源へのアクセスを認めることを求めていました。

これはとても根の深い問題で、1992年に生物多様性条約が作られたときに、条約の目的の一つとして謳われたのですが、国際合意ができるまで20年もかかったのです。

議長国、日本の果たした役割

実を言えば、名古屋でもけっして安産ではありませんでした。COP10期間中まで議論がもつれこみ、最後まで膠着状態が続き、このまま議定書は成立しないとも思われました。それが最終日に当初の予定時間を大幅にオーバーして、最後の最後、日付が変わってからようやく採択されたのです。日本の議長案と、粘り強い交渉の成果でした。議長国日本の逆転満塁ホームランと言っても良かったと思います。

ところが、この議定書が発効するには50ヶ国以上が批准することが条件になっているのですが、2012年のCOP11までには10ヶ国程度しか批准が集まらず発効できませんでした。

今年10月にあるCOP12にももう間に合わないかとの観測も流れていたのですが、この半年ぐらいの間に急に批准する国が増え、7月14日にウルグアイが51番目の国として批准書を提出したことで、COP12会期中の10月12日に発効することが決まりました

日本は、発効までもう少し時間がかかるだろうと高を括っていたのか、まだ批准の準備が終わっていません。できる限り早期にとは言っていますが、国内制度の準備が整うのは早くて来年でしょう。

名古屋議定書を妥結させたのは日本の大きな貢献でしたが、それを批准、発効させるのには間に合わなかったのは、ちょっと(かなり?)残念な結果です。

しかし、もっと大切なのは国内制度です。名古屋議定書が意味をもちきちんと機能するかどうかは、各国の国内制度によります。議長国であった日本が、時間はかかっても、世界がなるほどと納得するような優れた国内法を整備することができるかどうか、そこが一番注目したいところです。

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