2014年7月14日
月の便り

サプライチェーンにはこんなにリスクがあった!

《月の便り》「サプライチェーンにはこんなにリスクがあった!」

              サステナビリティプラナー  足立直樹

 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。新月にあわせて旬の
CSRの話題をお伝えいたします。

 今年最初にお話ししたように、2012年は生物多様性にとって重要な
年になりそうです。10月に韓国の平昌(ピョンチャン)で生物多様性条
約のCOP12
が開催されるからです。

 この重要な場で何が議論されるかもだんだん整理されつつあります
が、企業に関連しては、原材料調達やその基準が大きなテーマになりそ
うです。また今回は、2020年に向けた「愛知目標」の進捗状況の中間
報告がなされる
ことになっていますので、世界中の先進企業が各社の進
捗状況や思い切った目標を次々に発表することでしょう。

 その結果、始まることを予想すると… 生態系や生物多様性に対する
影響(負荷)をこれ以上増やさないようにして、正真正銘の持続可能な
ビジネスモデルを確立する。その目標にどれだけ本気でコミットしてい
るのか、肉薄しつつあるのか、この点がこれからの「良い企業」のクラ
イテリアになる
でしょう。

 機関投資家もそうした観点から投資先を評価・選別するでしょうし、
何よりも、そうしたビジネスモデルを確立しないことには、ビジネスそ
のものが続かなくなることが見えて来たからです。

 例えば、この半年ぐらいの間に、原材料を持続可能なものに切り替え
ると宣言する企業がアメリカで増えてきています
。こうした目標を掲げ
る企業は今までは欧州中心だったのが、その流れがアメリカにも波及し
始めた
のです。

 その背景には、アメリカでNGOがこの問題について企業を激しく攻撃
し始めたこともありますが、企業経営者も「原材料の調達を持続可能に
しないことには、ビジネスの継続はあり得ない」と発言しはじめてお
り、かなり意識が変わってきたことがわかります。

 なぜこのような意識変革が急速に進んでいるのか、原因はいろいろあ
るのだと思いますが、おそらく一つには、自社のサプライチェーンを遡
ってみたらがく然とした
ということがあるのではないでしょうか。

リスクはサプライチェーンに

 つまり、自社内だけで環境の取組みを進めるのではなく、サプライチ
ェーンを遡ってみたら、そこには自分たち自身の何倍もの環境負荷=環
境リスクが存在していることに気付いたのでしょう。サプライチェーン
でつながっていますので、それはサプライヤーのリスクというだけでは
なく、自分たちにとってのリスクなのです。

 これは、自社内だけでいくら努力を続けても、サプライヤーにも同じ
ように頑張ってもらわなくては、ある日突然、事業が継続できなくなる
かもしれないということです。

 日本企業は、自社内では環境負荷を減らすことにとても真剣に取り組
んでいると思います。しかし、それだけでは自社の持続可能性は保証さ
れないのです。

 では、私たちの事業活動がどのぐらい生態系と生物多様性に、つま
り、自然資本に負荷を与えているのか? そのことに答えてくれるレポ
ート『リスクにさらされている自然資本』が、昨年発行されています。
もしこうした負荷を内部化したとすれば、世界の経済活動の1割以上に
あたる7.3兆ドルがかかる、つまり、利益のかなりの部分が吹っ飛ぶと
いう恐ろしい事実が報告されています。このことを知った企業人は当
然、今までのやり方ではマズイと思うでしょう。

 既に英語でこのレポートをお読みになった方もいらっしゃるかもしれ
ませんが、私たちはこの度、このレポートの日本語概要版の監訳を行
い、また、来週から配布を開始いたします※(http://www.responseability.jp/pj/ncr)。この機会にぜひ日本語でお読みく
ださい。きっと驚く発見があるはずです。そして、これを読めばなぜ
COP12でこのことが大きな議題になるのかも理解できるでしょうし、
その結果を待たずに自社の取組みも始めたくなるでしょう。

初出:2014年5月29日発行 サステナブルCSRレター No.179

※この記事の初出時点の記載であり、現在は既に公開されています。

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