2014年9月17日
気候変動

ついにお尻に火がついた! アメリカの気候変動対策が始まる予兆

こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。

前回の記事でご紹介したアメリカの経済界と大統領行政府の気候変動リスクへのレポートをもっと詳しく知りたいというご連絡を何人かの方からいただきました。

まず、経済界が出したのはこれです。その名も”Risky Business – The Economic Risks of Climatic Change in the United States“(危険なビジネス – アメリカにおける気候変動の経済リスク)です。

概要をお話しする前に、まずは財界の有名人の言葉をお聞きください。英語は苦手という方も、彼らの深刻な表情からことの重大性は伝わってくると思います。

おそらくアメリカの経済界にとっても、長らく気候変動は「他人ごと」だったのではないかと想像します。わかってはいるけれど、遠い未来の問題や、自分たち以外の誰かが行動すればいい問題ですね。なので、できるだけ聞かないふりを続けてきたのでしょう。

しかし、最近の急増する気候災害の被害を見るにつけ、もはや目をつぶっているわけには行かなくなったということでしょう。そして、各州ごとにどんな被害が出るのか、また被害額がどのぐらいになるかを計算してみたら… 今度はもうビックリ、これは本当にヤバイぞ、と気がついたのではないでしょうか。

ウォルマートはなぜ変わったのか?

アメリカと言えば、Wal-Martはかつては環境のことなどまったく気にしない、とにかく安ければいいだろう、というタイプのお店でした。しかし、2005年のハリケーン・カトリーナで、いくつもの店舗が洪水の被害にあったのを見て、当時のCEOのリー・スコットが覚醒したという話があります。

やはり、他人事である限り人間は動かないということなのでしょうか。しかし、影響が重大なことについて言えば、本当にことが起こってからでは遅過ぎます。どれだけ早い時点で気がつき、対策を取れるか。そこに企業も、国も、命運がかかっているように思います。

“Risky Business”による地域ごとの経済への影響の分析では、沿岸域の資産やインフラが大きな被害を受けるというのがかなり特徴的でした。広いアメリカの中で沿岸域というのは面積的にはごく小さな部分ですが、人口も産業も集中しているので、被害額は大きいのですね。

また、熱波が南部を中心に襲いかかるということなのですが、ここでもちょっと見落としがちな指摘がありました。それは、労働生産性が落ちることや、健康被害が増大すること、エアコンの使用にする電力需要が増加するということです。たしかにその通りなのですが、日本ではまだあまり真剣には考えられていないことですよね。

もちろん南部の農業生産は50〜70%と激減するといいますから、壊滅的な影響と言ってもいいでしょう。しかし、アメリカの場合には北部では農業生産は増えるので、全体ではなんとか同じぐらいのレベルが維持できるというのです。

ただ、個人的にはこの予測はちょっと楽観的なのではないかと思います。温度だけで考えればコーンベルトなどが北側にシフトするだけかもしれませんが、実際には気象災害や水のことも考えなくてはいけないので、そんなにうまく行きそうには思えないのです。あくまで直感ですけれど…

また、もう一つ”Risky Business”がユニークな点は、自分たちだけでなく、政府が規制を含めて積極的な政策を取れるように、経済界がそれを支持しようと唱えていることです。今までなかった動きだけに、危機感や本気度を感じます。

政府もこれまではとは180度方向転換

そして前回の記事でも紹介したように、アメリカ政府もまた、気候変動には今から手を打った方がいい。なるべく早く対策を行なった方が「安上がり」であるという結論を出しました。

これまでのアメリカ政府が主張してきたこととは真逆ですが、もはやそんなことも構っていられないのでしょう。

そのレポートはこちらです↓
The Cost of Delaying Action to Stem Climate Change“(気候変動を防ぐ行動が遅れることのコスト)

レポートでは、早めの気候変動対策は、もっとも過酷で不可逆的な気候変動の影響に対する「保険」のようなものでもあるが、保険と違うのは、それがきれいな空気、エネルギー安全保障、生物多様性の保全などをもたらしてくれる投資でもあることだと、その意義を高く評価しています。

経済界と行政の方向性が合意したことで、今後アメリカは気候変動について、一気に積極的な動きを見せるのではないかと期待されます。世界にとってもちろんいいことですが、日本もぼやぼやはしていられなくなったということを忘れてはいけませんね。
 
 
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