Response Ability Inc. Response Ability, Inc.

ESR (The Corporate Ecosystem Service Review:企業のための生態系サービス評価)

企業活動の生態系サービスへの依存と影響を評価するために、WBCSDがWRIなどと企業向けに開発した手法。

1.調査範囲の設定 2,ビジネスリスクとビジネスチャンスの特定 3,戦略の策定・実行の3つのフェーズに分けて行われます。
この手法によって、企業の事業活動と生態系サービスとの関係性(依存・影響度)を明らかにすることが可能になり、持続可能な企業となるために、自社の活動のどこに優先的に取り組むべきか、合理的かつ体系的に把握することができるようになりました。

オープンリソースで誰でも自由にできるため、世界中で数百社が利用しています。しかし、実施にこの分野の専門性が必要なため、企業内部だけでは活用するのが難しいのも事実であり、専門家による指導や協力があれば、よりスムーズかつ効果的に実施できます。

TEEB (The Economics of Ecosystem and Biodiversity:生態系と生物多様性の経済学)

2007年にドイツのポツダムで発表されたポツダムイニシアティブに基づき開始された、生物多様性と生態系サービスの経済評価に関するメタアナリシス研究プロジェクト、およびその報告書。
生物多様性の喪失の経済評価、生物多様性と生態系サービスの価値について、世界中の既存の研究を整理分類統合する形で行われ、5部からなる報告書(0. 生態学と経済学の基礎 1.政策決定者向け 2.地方行政担当者向け 3.ビジネス向け 5.統合報告)が2008年以降に発行されています。
その特徴は生物多様性の現状・将来の予測を整理するだけでなく、その経済的損失を定量化している点にあります。さらに、これらの定量化分析に基づいて、政策決定者や行政担当、ビジネスマンなどに、これらの経済的損失を防ぐべく、どのように生物多様性を保全すべきか、具体的な施策を提言していることから、その報告内容は、国際社会や各国の政策、さらには企業経営にまで大きな影響を与えています。
最近では、TEEBの考え方を実際の企業経営に生かすためのプロジェクト(TEEB for Business Coalition)も始まっています。

LCA (Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント)

自社の製品やサービスの環境負荷量を、自社内における製造プロセスなどに限定するのではなく、製品の原材料調達の最上流から製品が使用後、廃棄される最下流まで、製品のライフサイクル全体にわたって評価・分析すること。
この分析によって、製品の設計や製造プロセス等をどう変更すれば、環境への負荷を効果的に削減するかを明らかにすることができ、社会全体での環境負荷の削減に本質的な貢献ができるようになります。
企業の責任がサプライチェーン全体に対して問われるようになってきた昨今、このような分析は持続可能な企業経営にとって不可欠のものとなっています。

グリーンウォッシュ (greenwash)

事業によって発生する環境への負荷や影響の軽減に真剣に取り組むことをせず、社会貢献活動等を行うことで環境に配慮しているように見せるような活動のこと。
英語では、汚いものを白く塗ってごまかすことをホワイトウォッシュということから、環境に対するごまかしという意味でグリーンウオッシュと言われるようになりました。

意図的にグリーンウォッシュをする企業は少ないと思いますが、ごく小規模の植林などを行ない、そのことを生物多様性の保全への貢献と称することは、海外ではグリーンウォッシュと見なされ、NGOや意識の高い消費者からの批難や抗議の対象になることがあります。環境に良かれと思って行なったことが、かえって自社の評判やブランドを傷つけることになる可能性が高いので、注意が必要です。

このような誹りを防ぐには、自社の事業が自然環境へ与えている負荷を正確に把握し、それを削減することに真正面から取り組むことが重要です。

サプライチェーン・マネジメント (Supply Chain Management)

これまでの経営においてはサプライチェーン・マネジメントとは、調達におけるQCD、すなわち品質(Quality)、価格(Cost)、納期(Delivery)を適切に管理することでした。しかし、持続可能な企業経営のためには、これだけでは不十分です。
なぜなら、サプライヤーにおいても環境に対する配慮や、労働人権に関する配慮が適切に行われなければ、原材料の調達に関して様々な問題が生じたり、あるいは最終的な製品やサービスが市場から受け入れられないようになってきたからです。
例えば、最終製品にほんの少しでも有害な化学物質が混入していたり、生物多様性に配慮していない原材料が使われていたり、子供が製造過程に関与していたりする製品は、たとえいくら高品質・高機能であったとしても消費者から拒絶されてしまうことが起きています。
つまり、サプライチェーンにおいてどのように原材料が創られているのか、そのプロセス(Process)も含めた、QCD+Pの管理が持続可能な企業経営のためには必要なのです。
したがって、自社の事業活動はもちろん、サプライヤーにおいても同様の環境や社会への配慮を求め、またそれを実現することが、CSR的視点や持続可能な経営のためのサプライチェーン・マネジメントと言えます。

【同義語、関連語】責任ある原材料調達(responsible procurement)、倫理的な調達(ethical procurement)、CSR調達(日本における用語)

自然資本 (natural capital)

生物多様性は、金融資本や人的資本(人材)、製造資本(建物・設備)、知的資本(知的財産)などと並んで、将来にわたって価値のある商品・サービスのフローを生み出すストックである、という考えることができます。したがって、生物多様性も他のストックと同様の一つの資本であると捉えることができます。このような発想で、事業に必要な生態系サービスというフローを生みだす生物多様性を、自然資本と呼んでいます。

この考え方は既に1990年代から使われていましたが、最近になって自然資本を定量化する動きが進んでいることから、より現実的な概念、具体的な存在として意識されるようになり、経営判断の中にも織り込まれるようになりつつあります(→自然資本宣言)。

生物多様性を自然資本と捉え、それを適切に管理し、さらには増加させることは、持続可能な事業経営を行う上できわめて重要な課題となっています。

【関連語】生態系サービス、自然資本宣言

生態系サービス (BES:Biodiversity and Ecosysrtem Service)

人々の生活や企業の活動を直接・間接に支える自然の恵みを、生態系の機能として整理した考え方。

2005年に国連から発行された『ミレニアム生態系評価』によって、ビジネス界をはじめ一般に広く知られるようになりました。その中で、 生態系サービスは、以下の4種類に分類されています。

1. 供給サービス (provisional service) : 人間生活に必要な様々な物質(食物・原料・燃料等)を提供するサービス
2, 調整サービス(regulatory service) : 気候を調整する、洪水を制御する、水を浄化する、疾病の拡大を制御するなどの調整的なサービス
3, 文化的サービス (cultural services) : 人間が美しいと感じ、余暇を楽しんだり、様々な文化を生むことの源泉となるサービス。宗教的・霊的な価値を生み出すことも含まれる。
4, 基盤サービス(funadamental service) : 栄養塩の循環や土壌の形成、そして一次生産など、あらゆる生物が生きていくための基盤となるサービス。

最近では、こうした4つの視点から、事業活動を生態系や生物多様性の関係性を分析したり、また事業活動が生態系に依存している大きさ(価値)を経済的に測定することなどが行われています(→TEEB)。

生態系サービスの考え方によって、自然の重要性が理解しやすくなり、さらにその経済的価値が明らかになったことで、自然を保全することが人間生活と企業活動を持続させるために必要であるという認識が広まりました。

【関連】ミレニアム生態系評価

保護 (preservation, protection) と保全 (conservation)

「保護」と「保全」は似ているように見えますが、まったく異なる考え方です。

「保護」は、もともとある自然の状態に人間が一切手を加えず、あるがままの状態に守ることであるのに対し、「保全」は、人間がある程度自然に手を加えながら(場合によっては利用しながら、)管理することを指します。すなわち後者では、自然が持続可能な範囲内であれば、自然やそこから得られるものを利用することは認められるのです。

非常に貴重な自然や、絶滅に瀕しているような動植物はしっかりと保護する必要がありますが、多くの企業活動は自然やその産物(生態系サービス)を利用することによって成り立っています。したがって、企業がより真剣に考えなければならないのは自然の「保護」ではなく、自分たちにとって重要な自然資源や生態系サービスを持続可能なように「保全」することです。

ミレニアム生態系評価 (MA:Milllenium Ecosystem Assessment)

2001年〜2005年にかけて、国連にて実施された調査及びその報告書。世界中から1300人以上の科学者が参加し、生物多様性のIPCCレポートと呼ばれることもあります。
1.現状評価 2,シナリオ分析 3,対応方法の評価の3部から構成され、生態系の現状と、今後の劣化の予測、それに対する優先的な選択肢が示されています。
生物多様性の重要性を理解するためのキーワードである「生態系サービス」という言葉は、この報告書を通じて一般に知られるようになりました。人々の生活や企業の活動が、いかに自然(生態系)に依存しているものなのか明らかにし、企業が生態系を保全に取り組むことの重要性を気づかせるのに大きな役割を果たしました。

【関連】生態系サービス