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巻頭言

【No.185】『本物のCSRへのお誘い』

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【No.185】 2014年07月11日
『本物のCSRへのお誘い』
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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。明日の満月より一日早く、CSRに関わる旬のメッセージをお届けいたします。

 以前からこのメールマガジンをお読みいただいている方は、今年最初の号で「そのCSRは役に立っていますか?」というタイトルで私が書いた記事を覚えていてくださる方もいらっしゃるかもしれません。

 CSRが日本に紹介されてから早10年、かなり進化・深化する一方で、形骸化してしまったり、流行に左右されたり、そんなちょっとどうかなと心配になるような状況も散見されます。

 そして一番心配なのが、CSRの課題が増える中で、CSRの重要性は大きくなっているにも関わらず、CSR部の言うことが社内では必ずしも歓迎されていない、という状況です。

 つまり、「CSR部はいろいろとウルサイことを言ってくる」とか、「CSR部は稼ぐわけではないのに、要求が多い」と思われてしまうことです。

 もちろんこれはすべて誤解です。CSRは経営にますます重要になってきていますし、きちんとしたCSRを行なうことで業績にも良い影響があるのです。

 実際、私たちは本業の役に立つCSRしかお手伝いしません。なので、いまお手伝いしているのも、原料調達の安定化をはかることであったり、サプライヤーとの協働であったり、企業価値を高めることであったり、いずれも「役に立つ」CSRばかりです。

 例えば、このところ様々な原材料価格が高騰していますが、これらの多くがCSRと密接な関係があります。CSRをきちんと行なうことでこうした問題に効率よく対処できたり、リスクが管理できるのです。

 ところが、CSR部の方を除けば、多くの企業人はそのことを知りません。なので、「CSR部はウルサイことを言うだけで、役に立たない」、「CSR部はコストセンターだ」などと、誤解されてしまうのです。

 私たちがふだんお手伝いしていることは本業に役立つことばかりです。なのに、CSR部の方々があらぬ誤解を受けたり、社内で評価されないのは大変不本意です。また、事業へ直接的に役に立つかどうか微妙なCSRをまだ行っている会社があるとすれば、とても残念に思います。

 ですので、事業に役立つ「本物のCSR」をもっと世の中に広めたいと考えて、先月から新しい情報発信を始めることにいたしました。前回の《RAIからのお知らせ》でも少しご紹介しましたが、今日はあらためてこの「月の便り」を通じて正式にご案内させていただきます。

 本物のCSRのための情報サイト「サスナビ!」

 4ヶ月前から毎日動画を配信している「サスナビ!」チャンネルと同じ名前ですが、こちらはブログ形式で、毎回読み切りのサラッと読める記事にしていきます。

 「サスナビ!」の思いは、以下の記事からもお分かりいただけると思います。もしこの考えに共感いただけるようであれば、ぜひブックマークをお願いいたします。

 「本物のCSRへのお誘い」

 あなたが訪問して下さることをお待ちしています!

【No.183】『マテリアリティは特定できましたか?』

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【No.183】 2014年06月27日
『マテリアリティは特定できましたか?』
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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。今日の新月にあわせて旬のCSRの話題をお伝えいたします。

 6月も終わりが近づき、サステナビリティレポートがちらほら発行され始めているようですね。今年のサステナビリティレポートの見所は、なんと言っても各社がマテリアリティ、つまり自社にとって重要な課題を何と考えているかでしょう。

 CSRご担当の方はもう先刻ご承知だと思いますが、念のためにここでもう一度、背景を確認しておきましょう。ことの起こりは、日本企業も多く参照しているグローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)が昨年2013年に発表したガイドラインの第4版、いわゆるG4です。

 これまで使われてきたガイドラインの第3版のG3やG3.1では、どちらかというと情報を網羅的に開示することが求められていました。しかし新しいガイドラインのG4では、報告する企業にとって重要と考えられる課題=マテリアリティについて詳しく報告することが求められているのです。メリハリの効いた報告にしましょうということです。

 ただし、です。報告側が勝手に「これが私たちが考えるマテリアリティです」と言っても恣意的になってしまうかもしれません。そのような意図はないにしても、見落としがあるかもしれません。なので同時に、なぜそれをマテリアリティだと特定したのか、その理由や、特定プロセスも報告することになっています。

 日本企業はこれまで網羅的で詳しい、つまり分厚いレポートを発行してきました。日本企業の「真面目さ」のなせる技だと思う半面、「どこの企業のレポートも似たりよったり」とか、「結局、何が大切なの?」という声も聞かれました。「これからもこのままでいいのか?」、そう悩んでいたCSR担当者の方々にとっても、G4の方針転換は福音だったのではないかと思います。

 一方で、自社のマテリアリティをどう決定するかは、なかなかの難問です。私のところにもいろいろな企業からご相談をいただきますし、マテリアリティを特定したいのでアンケートに答えて欲しいとか、インタビューさせてくれ、というご依頼をいただきます。

 なので、ご依頼をいただくと、資料を拝見しながら頭を絞って考えるのですが… 本当にこういうやり方でいいのかな、と悩んでしまうことも少なくありません。というのも、私がその会社の事業について知っていることはごく断片的なわけです。もちろん、全体像を掴みやすいようにと、その会社の方がいろいろと資料をご用意くださるのですが、資料を準備してくださった方が重要視していないことについての資料は当然含まれません。つまり、そもそも情報に選択バイアスがあるわけです。

 さらに、G4はサプライチェーン(調達網)についても情報開示することを求めていますが、サプライチェーンにおける影響まで考えるとなると、圧倒的に情報が不足しています。「そこをなんとかするのが専門家だろう」と怒られそうですが、一般的な議論や推論はできても、その会社の固有の事情まではわかりません。これはどんなに博識な専門家や有識者を集めたところで、同じことです。

 では、一体どうしたらいいのでしょうか? 少なくとも環境面については、一つかなり有効で確実な方法があります。環境影響を定量化すればいいのです。サプライチェーン全体にわたって定量化すれば理想的です。気候変動への影響と生物多様性への影響のように、性質がかなり異なるものもありますが、統合評価をすることで比較可能になります。

 それでマテリアリティがきちんと特定できるのか? と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にやってみるとかなり明確な傾向がわかりますし、定性的な推論をするだけよりはるかに説得力があります。

 なので、こうした手法や、先進企業がこれをどう活用しているかについて、もっと多くの企業の方に知っていただきたい思い、7月末にこれについてのセミナーを開催することにしました。ご興味のある方は、以下のお知らせをご覧ください。

 GRIは、GRIのガイドラインを参照する企業に対して、2015年までにはG4に切り替えるように求めています。今年、そして来年には、マテリアリティを的確に特定した素晴らしいレポートが、日本からもたくさん発行されることを楽しみにしています。

【No.181】『自然資本が環境白書にも登場』

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【No.181】 2014年06月12日
『自然資本が環境白書にも登場』
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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。満月は明日ですが、一日早く、旬のCSRの話題をお届けします。

 前回ご紹介した『リスクにさらされている自然資本』の日本語概要ですが、たくさんの方々にお申し込みいただだき、ありがとうございました。お申し込みいただいた方々には、概要がもうお手元に届き、お読みいただいたかと思います。(未入手の方は、このメールの最後にあるリンクからお申し込みください)

 この概要をお読みいただくと、ビジネスや私たちの日々の生活が、どれだけ自然資本に負荷を与えているか、その大きさに驚かれたと思います。いくら「大切だ」と言っても、定量的に示されなければ本当の「大切さ」はわかりにくいですし、あるいは自社の売上や利益と比較可能な数値でなければ、切実な数字としては感じにくいでしょう。しかし、このレポートに示されているように、それがどのぐらいの大きさなのか、そしてそれが利益をどれだけ脅かすのかがわかれば、もうじっとしてはいれないはずです。まさにこれが、自然資本を可視化することの本当の意味(効果)なのです。

 先週6日に2014年版「環境・循環型社会・生物多様性白書」(環境白書)が閣議決定されましたが、その中で自然資本が大きく取り上げられ、また外部不経済の具体的な大きさを測定した例として『リスクにさらされている自然資本』も紹介されています(p.89)。

 また、企業に求められる国際的な動きとして、IIRCが統合報告フレームワークで自然資本についての報告を求め、GRIもG4でサプライチェーンを通じた環境影響の報告を求めていることが紹介されています。これらはすべて自然資本の定量化とつながっているのです。

 また、個別企業が自然資本を考慮した経営を行なっている例としては、これまで私たちが何度もご紹介してきたスポーツウェアのPUMAの事例が紹介されています。かつては「外部不経済」として企業活動や市場が無視してきたことが、自然資本を定量化することでいよいよ内部化されるようになってきたと、環境省の方々もきっと感慨深く感じているのではないと想像します。

 そして私たちもまた、これまで日本の企業の方々にご紹介してきた自然資本の考え方や定量化の手法が、このように環境白書の中で大きく取り上げられるようになったことはとても嬉しいですし、日本でもこれからいよいよ本格的な活用が始まることに期待しています。

 自然資本の定量化を自社の経営にどう活かすかについては、これからも具体的にご紹介していきたいと思いますが、今回一つだけキーワードを挙げておきたいと思います。それは「インパクト比」です。

 『リスクにさらされている自然資本』の中でも具体的な値が紹介されていますが、これは自然資本に対する影響(外部不経済)を売上高で割った値です。この値が1よりも大きい事業は、自然資本を収奪するだけで、しかも使った分の価値すら創り出せていない赤字事業です。一方、この値が1よりも小さければ小さいほど、その事業は使った資本よりも大きな価値を生み出している事業であり、持続可能性も高いと予想されるのです。この値が、これからの自然資本経営の重要な指標になることでしょう。

 はたして、あなたの会社の事業のインパクト比はどうでしょうか? そんなことを考えながら、このレポートや今年の環境白書を読んでみてはいかがでしょうか。これからの課題が浮かび上がってくるはずです。

【No.179】『サプライチェーンにはこんなにリスクがあった!』

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【No.179】 2014年05月29日
『サプライチェーンにはこんなにリスクがあった!』
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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。新月にあわせて旬のCSRの話題をお伝えいたします。

 今年最初にお話ししたように、2012年は生物多様性にとって重要な年になりそうです。10月に韓国の平昌(ピョンチャン)で生物多様性条約のCOP12が開催されるからです。

 この重要な場で何が議論されるかもだんだん整理されつつありますが、企業に関連しては、原材料調達やその基準が大きなテーマになりそうです。また今回は、2020年に向けた「愛知目標」の進捗状況の中間報告がなされることになっていますので、世界中の先進企業が各社の進捗状況や思い切った目標を次々に発表することでしょう。

 その結果、始まることを予想すると… 生態系や生物多様性に対する影響(負荷)をこれ以上増やさないようにして、正真正銘の持続可能なビジネスモデルを確立する。その目標にどれだけ本気でコミットしているのか、肉薄しつつあるのか、この点がこれからの「良い企業」のクライテリアになるでしょう。

 機関投資家もそうした観点から投資先を評価・選別するでしょうし、何よりも、そうしたビジネスモデルを確立しないことには、ビジネスそのものが続かなくなることが見えて来たからです。

 例えば、この半年ぐらいの間に、原材料を持続可能なものに切り替えると宣言する企業がアメリカで増えてきています。こうした目標を掲げる企業は今までは欧州中心だったのが、その流れがアメリカにも波及し始めたのです。

 その背景には、アメリカでNGOがこの問題について企業を激しく攻撃し始めたこともありますが、企業経営者も「原材料の調達を持続可能にしないことには、ビジネスの継続はあり得ない」と発言しはじめており、かなり意識が変わってきたことがわかります。

 なぜこのような意識変革が急速に進んでいるのか、原因はいろいろあるのだと思いますが、おそらく一つには、自社のサプライチェーンを遡ってみたらがく然としたということがあるのではないでしょうか。

 つまり、自社内だけで環境の取組みを進めるのではなく、サプライチェーンを遡ってみたら、そこには自分たち自身の何倍もの環境負荷=環境リスクが存在していることに気付いたのでしょう。サプライチェーンでつながっていますので、それはサプライヤーのリスクというだけではなく、自分たちにとってのリスクなのです。

 これは、自社内だけでいくら努力を続けても、サプライヤーにも同じように頑張ってもらわなくては、ある日突然、事業が継続できなくなるかもしれないということです。

 日本企業は、自社内では環境負荷を減らすことにとても真剣に取り組んでいると思います。しかし、それだけでは自社の持続可能性は保証されないのです。

 では、私たちの事業活動がどのぐらい生態系と生物多様性に、つまり、自然資本に負荷を与えているのか? そのことに答えてくれるレポート『リスクにさらされている自然資本』が、昨年発行されています。もしこうした負荷を内部化したとすれば、世界の経済活動の1割以上にあたる7.3兆ドルがかかる、つまり、利益のかなりの部分が吹っ飛ぶという恐ろしい事実が報告されています。このことを知った企業人は当然、今までのやり方ではマズイと思うでしょう。

 既に英語でこのレポートをお読みになった方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちはこの度、このレポートの日本語概要版の監訳を行い、また、来週から配布を開始いたします(http://www.responseability.jp/pj/ncr)。この機会にぜひ日本語でお読みください。きっと驚く発見があるはずです。そして、これを読めばなぜCOP12でこのことが大きな議題になるのかも理解できるでしょうし、その結果を待たずに自社の取組みも始めたくなるでしょう。

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