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巻頭言集

【No.176】『種をまかなくては…』

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【No.176】 2014年04月30日
『種をまかなくては…』
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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。昨日29日が新月でしたので、これにあわせて旬の話題をお伝えします。

 いよいよ先週末からゴールデンウィークが始まりましたが、どのように連休を過ごされているでしょうか?もしかしたらこのメールも、休暇先でお読みになっていらっしゃるかもしれませんね。そして今日ではないにしても、連休中は自然の豊かなところに出かける予定という方も多いことと思います。

 かくいう私も、連休の間は東京を離れ、長野で過ごしています。春の到来が東京より一カ月ほど遅いので、ちょうどいまコブシが咲き、サクラもいよいよ満開、そして、樹々の若芽も膨らんで来たところです。わずか数週間前まではまだほとんど茶色一色だった世界が、急に鮮やかな色彩を帯びてきました。

 緑の多いところに来ると、季節の変化をしっかりと感じることができます。一週間前、いえ、数日前と比べても、蕾の膨らみであったり、葉っぱの量であったり、確実に変化していることが目で見てわかります。あぁ、この植物たちも生きているんだなぁ。季節は巡っているんだなぁと実感することができます。

 実はこれは、東京で暮らしていても、本当はわかるはずです。街路樹も、プランターに植えられた植物も、山の緑と同じように日々変化しているからです。数や種類が少ないので目立たないということもあるかもしれませんが、それ以上に都会にいるときは私たちの慌ただしさが、生きものの変化に気付き、それに心を動かす余裕を失っているだけなのでしょう。

 植物がゆっくりと、しかし確実に成長していくのは、もちろんゆえあってです。昨年の秋に葉を落としてからも、植物の体内では様々な準備が進められ、一方、ある種の活動はじっと休眠したまま時が来るのを待ち、そしていよいよ気温が緩み、太陽の光をいっぱいに受け、地面には適度な湿り気もある。そういう条件が整ったとき、ついに蕾は膨らみ、若芽から新葉が展開するのです。

 こうした植物の静かな営みを見ていると、それをひたすら粛々と進める植物の物言わぬ、しかし断固とした強い信念のようなものを感じますし(もちろん、植物が考えているわけではありませんけれど…(笑))、そしてそれを見事に開花、結実させるのは、やはりすべての必要な過程を経てのことなのだと思います。あたり前のことですが、生育の途中で得た水や栄養が、実の付き方を決めるのです。私たちの身体も、自分が食べたものだけで作られています。不自然なものを食べれば、身体に不自然な影響も出てくるでしょう。

 そして、そもそも種を蒔かなくては収穫はできません。私たちも行動をしなければ、結果を出すことはできません。適切な行動をせずに、良い結果が得られるわけはないのですが… 実際には結果にだけ注目してしまい、「なぜ成果が出ないのだろう?」となっていることも多いのではないでしょうか。

 つまり、あらゆるものには原因や過程があって、はじめて結果が出るということです。それは、植物の成長を見ているだけでも実感し納得できることです。しかし都会で、花屋さんから奇麗に咲いた花を買って来る生活をしていると、そんな単純なことすら忘れてしまうのかもしれません。

 季節の変化を身近に感じていただけるようにと、このメールマガジンは新月と満月という自然のリズムの節目にお送りしてきましたが、これからはより季節を身近に感じていただけるようにしようと思っています。ですので、5月中頃からは発送のタイミングをもうちょっと変えようと考えています。どんな風に変わるのかはまだヒミツですが、あなたもちょっと考えてみてください。

 そしてなんと言っても、これからは薫風薫る季節です。お近くでも結構ですので、ぜひ緑を見ながらゆっくりと散歩でもなさってみてください。植物をじっくりと観察すれば、きっといろいろな発見があるはずです。

 

 

【No.175】『スコープ3の真の目的は?』

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【No.175】 2014年04月15日
『スコープ3の真の目的は?』』
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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。また満月が巡ってきました。旬のCSRに関する話題をお届けしたいと思います。

 このメールマガジンをお読みのあなたのところにも、もしかしたらCDP(カーボンディスクロージャープロジェクト)から今年の調査への回答依頼が届いているかもしれませんね。

 そこで今回は、前回の巻頭言で最後に書いた「なぜスコープ3で報告するのか?」ということについてお話をしたいと思います。

 言うまでもなくスコープ3とは、自社による直接的、間接的な温室効果ガスの排出に加えて、サプライチェーンにおける排出量まで含めるという範囲(スコープ)の定義です。一昔前の環境管理であれば、自社の工場やオフィスで使用する電力、ガス、油の量を測定し、それに排出係数をかければ済んでいたわけですが、通勤、出張はもちろん、サプライチェーンにおける温室効果ガスの排出量もきちんと管理しなくてはいけなくなると、たしかにこれはかなり大変です。

 環境報告書のために社内の環境データをまとめるだけでも忙しいのに、これ以上手間がかかることは勘弁して欲しい。しかも、自社内だけならともかく、サプライヤーやさらにその先となると… そんな担当者の嘆きはよ〜く理解できます。たしかに大変です。

 しかし、スコープ3でGHG排出量を管理することで、企業にとっても明らかなメリットがいくつもあります。

 まず一つは、自社が環境マネジメントや持続可能性という重要な課題について積極的であることを機関投資家にアピールできることです。もちろんスコアが良いに越したことはありませんが、多少スコアが悪かったとしても、参加しないよりは良い印象を与えることはできます。

 そしてこれがもっとも重要なことですが、サプライチェーンの中でホットスポット(もっとも排出量が多いところ)を特定することにより、どこを改善するのが効果的かがわかるということです。サプライチェーン全体の競争力を向上させたり、将来のリスク要因をつぶすために、これは大きなことです。

 さらに、社内やサプライヤーの意識向上にも役立てることができます。なぜスコープ3での測定が必要なのか、また、その結果何がわかったのか。そうしたことを社内外にきちんと説明することにより、今後の改善がやりやすくなるでしょう。

 こうして整理してみてわかるのは、スコープ3による報告のメリットは、その結果をどれだけ活用するかにかかっているということです。つまり、報告することが目的ではなく、報告した後のデータの活用こそが真の目的だということです。前回ちらりと書いたのは、まさにこのことなのです。

 このように、目的を意識した上で取り組めば、スコープ3の報告は、労力をかけただけの、いやそれ以上の効果が期待できます。ぜひそうした意識をもって取り組んでいただければと思います。そして、具体的な進め方についてアドバイスや支援が必要な場合には、もちろん私たちがお手伝いをいたします。

【No.174】『なんのためのCSR?』

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【No.174】 2014年03月31日
『なんのためのCSR?』
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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。明日からいよいよ新年度ですが、新月はそれより一日早く来ました。新年度より一日早く、旬のCSRに関する話題をお届けしたいと思います。

 新年度になると、CSR部や環境部に新しい担当者を迎えるという会社も多いのではないかと思います。あなたの部門にもしそのような方がいらっしゃたら、ぜひこのメールマガジンもご紹介ください。きっとお役に立つと思います。

 「サステナブルCSRレター」講読お申込み

 宣伝はさておき(笑)、新しく加わった方々も含めて、なんのためにCSRをしているのか、この機会にもう一度社内で確認してみるのはいかがでしょうか? というのも、これはCSRに限りませんが、言葉が普及するにつれ、その本当の目的であったり、それがどういう背景のもとで必要とされ始まったものなのか、曖昧になることがよくあるからです。

 日本のCSR元年と言われたのが2003年ですが、それから既に10年以上経ちます。多くの会社で、当時CSRを担当した方はもう他の部署に異動になられているのではないかと思います。あなたの会社はどうでしょうか?

 2003年頃にCSRについて勉強したり、議論していた方々は、「CSRとは何ぞや?」、「何のためにCSRをするのか?」ということを真剣に考え、そしてそれを自社にどう活かそうかと悩んで、CSRの目標やプログラムを作られたと思います。

 しかし、時間が経ってくると、当初の思いや議論のことは次第に忘れられ、あまり意味を深く考えることなく、活動だけが続いている。そういう場合もあるのではないかと思います。

 前回話題にしたCSVにしても、アメリカと欧州でCSRについての意識が違うことを理解していれば、そして欧州型のCSRが世界をリードしていることを認識していれば、「これからはCSRではなくCSVだ」という言説は出て来ないはずです。

 そういう言説が出て来るところを見ると、やはりそろそろ原点に立ち返えること、そして現在の自社の状況を鑑みて再びCSRの目的や目標を見直すことが必要なのではないかと思うのです。

 このことは、「スコープ3」や「マテリアリティの特定」についても当てはまります。スコープ3で温室効果ガスの排出量を報告したり、自社のマテリアリティをきちんと特定しなくてはいけないということに対して、負担が増えたとネガティブに捉えている方もいらっしゃるようですが、本当にそうなのか? ということです。

 スコープ3もマテリアリティの特定も「報告」のためだけであれば、たしかに面倒な負担が増えたということになるかもしれません。しかし、なぜスコープ3で報告するのか、なぜマテリアリティを特定するのかという意味を理解していれば、そしてその結果を業務改善や経営判断に生かすようにすれば、非常に意義のあることになります。CSRや環境の仕事の本当の意義を社内に理解してもらうまたとないチャンスとも言えるでしょう。

 目的を意識して活動するのと、やらなくてはいけないから活動する。その差はとても大きいと思います。これについて、詳しくはまた次回以降お話ししましょう。

【No.173】『CSVから本物のCSRへ』

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【No.173】 2014年3月17日
『CSVから本物のCSRへ』
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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。昨夜の満月を、私は広島で見ました。平和公園の上の満月を見ながら、今の私たちの状況を先人たちはどのように思うのだろうと考えてしまいました。持続可能性もまた平和がなければ成り立ちません。すべての人が希望をもって暮らせる持続可能な社会を目指して、引き続き頑張りたいと思います。

 さて、今回取り上げたいのは、CSV(Creating Shared Value=共通可価値の創造)という考え方です。CSVは日本ではかなり好意的に受け入れられているようで、社会課題や環境課題にビジネスとして、つまり本気で取り組もうと考える企業が増えてきているようです。

 今までもよく言われてきた「本業を通じたCSR」を体現する動きとして、あるいはさらにそれを強化する動きとして、CSVのきちんとした事例が増えることは歓迎すべきことだと思います。

 その一方で、「CSRはもう古い」、「これからはCSRではなくCSVだ」という声も聞こえてくるようになって来たことにはいささか懸念しています。

 というのも、CSVはあくまで(欧州型の)CSRの一部であり、既存のCSRの内容を置換えられるようなものではないからです。もっと言えば、CSVはあくまでビジネス戦略であり、社会が企業に期待する役割から発している欧州型のCSRとは明らかに出発点が異なるのです。

 前回、現場でのリアルな体験が重要ということをお話ししました。CSRとCSVの違い、もっと根本的には欧州型のCSRとアメリカ型のCSR(そもそもアメリカではあまりCSRという言葉すらあまり使いませんが…)の違いなども、CSRの国際的な会合などに参加していれば、すぐに気が付くでしょう。

 それはさておき、同様の懸念を持つ専門家の方々も多いようで、先週13日に大阪で「広がる企業の人権・労働課題ーCSVはCSR課題を解決できるか」というシンポジウムが開催され、その席上で「CSRとCSVに関する原則」が発表されました。私はシンポジウムには参加できませんでしたが、原則に署名だけさせていただきました。

 詳細については現在ウェブサイトが準備されているところだそうですので、原則のポイントだけご紹介しましょう。

 1. CSRは企業のあらゆる事業活動において不可欠です。
 2. CSVはCSRの代替とはなりません。
 3. CSVはCSRを前提として進められるべきです。
 4. CSVが創り出そうとする「社会的価値」の検証と評価が必要です。

 冒頭にも書いたように、きちんとしたCSVが増えれば、それは社会にとって非常に好ましいことですが、その前提としてきちんとしたCSRも確保しなくてはいけないということです。

 私どもレスポンスアビリティでは「本物のCSR」という言葉を使って、社会にとってはもちろん、自社にとっても意味のあるCSRを推進する必要性を強調し、またそのようなCSRの推進のお手伝いをしています。

 CSVが進むことには賛成ですが、それと同時にCSRを再考し、「本物のCSR」に腰を据えて取り組むことも忘れないようにしていただきたいと思います。なぜなら、それは必ずあなたの会社を良くすることにつながるからです。

【No.172】『リアルな体験も忘れずに』

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【No.172】 2014年3月3日
『リアルな体験も忘れずに』
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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。土曜日が新月でしたので、週明けの今日、旬のCSRの話題をお届けいたします。

 前回のメールマガジンを出す直前の2月17日に東京で、環境省などの主催で「自然資本と企業・自治体経営」という国際シンポジウムが開催されました。かなり専門的なテーマであったにも関わらず、企業を中心に300名近い参加者があり盛況でした。読者の中にも参加された方がいらっしゃるかもしれませんね。

 私は最後のパネルディスカッションに登壇しました。本当は、日本企業が自然資本という考え方や自然資本会計を経営にいかに活かしているかを紹介したいところだったのですが、残念ながらまだそうした例はほとんどありません。なので、私からは参加してくださった日本企業の方々に、自然資本会計が今後の企業経営にいかに役立つかをご紹介するに留まりました。

 一方、海外、特に欧州では企業も国も、自然資本という考え方を経営に盛り込み、またそのために自然資本会計の方法論や実践が急速に進んでいることが報告されました。

 私自身は一応この分野を専門としていますので、日ごろから情報収集に努めていますし、また、海外の仲間からもいろいろな話を聞きます。しかし、この一年のスピード感には正直ちょっと驚いています。

 何が彼らをここまで追い立てているのかと思うほど、次々に様々なプログラムや団体が作られ、ちょっとした「自然資本会計ブーム」と言ってもいいほどです。

 ますます広がる国内外の温度差に、このままで大丈夫なのかと危機感を感じるほどです。そして、なぜここまでにギャップが広がるのかと、不思議になります。

 原因の一つは情報が不足しているということなのかもしれませんが(そして、そういうことにならないように私たちがもっと頑張る必要があるということなのでしょうが…)、もう一つはリアルな体験の多寡なのかなと思います。

 単なる「情報」だけであれば、インターネットがこれだけ発達した今の時代、世界中どこにいても、ほぼ同じ情報に接することができます。言葉の壁もあるかもしれませんが、たいていの情報は英語ですから、頑張ればなんとかなるはずです。

 それよりむしろ、いろいろな会議やイベントに実際に参加して、そこにどんな人々が集まり、どんな勢いや様子で話をしているか、そういうことをリアルに感じる体験が圧倒的に違うのではないかと思うのです。

 情報を得るだけであれば、後から会議の結論を文書で読んだり、プレゼンテーションの資料をペラペラめくるだけでもこと足りるのでしょう。しかし、こうした動きの「勢い」や現場の熱気は、やはりその場にいないと感じにくいものです。まさに温度感なのですから。

 「極東」の島国としては辛いところですが、いやだからこそ、意識的にリアルな体験の機会を増やすことが重要なように思います。

 生物多様性条約の第12回締約国会議(COP12)は、10月にお隣の韓国で開催されます。それ以外にも、アジアでも案外いろいろな国際会議やイベントが開催されれています。ご自身が一番専門とする、あるいは興味をお持ちの話題について、まずは自分で参加してみることも、大切なのではないでしょうか。

【No.171】『制約が生む持続可能性』

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【No.171】 2014年2月18日
『制約が生む持続可能性』
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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。満月は土曜日でしたので、少し時間が経ってしまいましたが、旬のCSRの話題をお届けいたします。

 この週末は東日本を中心に再び大変な大雪となりました。山梨や奥多摩など、いまだ雪に閉じ込められている地域もあるようです。被害にあわれた方には心からお見舞を申し上げます。サプライチェーンが分断されたという話も聞きました。雪の被害がここまで広範囲に広がるとは… 天災はいつも私たちの想像力を越えた形でやって来ますね。関東では明日の夜からまた雪との予報も出ています。どうぞくれぐれもご注意ください。

 私自身は、電車が遅れてスケジュールが少し変わったぐらいで、ほとんど大雪の被害は受けずにすみました。そして、なんとかお天気が回復した日曜日、海外からのお客様を京都や滋賀にご案内しました。

 建物や庭の美しさはもちろんですが、日本の古い建物が持続可能な建築であることにとても興味をもたれたようでした。考えてみれば、かつての日本家屋は、木、竹、土、稲藁など、すべてその地方にあった天然の素材から作られています。次第に苔むして来ますが、そうやって周囲の自然の中に自ら溶け込んでいるものだとも言えます。そして最後は朽ちて土に戻る。完全に生分解性があるわけです。

 日本庭園は、実はかなり人の手が入った人工的なものですが、それが不自然に見えないのは、自然界の特徴的な美しさをうまく切り取って詰め込んでいるからでしょう。全体として見れば人工的な存在であっても、一つひとつの要素はすべて自然の中にあるものなのです。

 枯山水に到っては、抽象化された形式の中に森羅万象を感じさせる仕組みであり、自然と人間が一緒に創り出した小宇宙をきわめて限られた場所の中に再現しています。これも大自然を身近に楽しむ日本の知恵と言えるのかもしれません。

 海外からのお客様が「持続可能な建築だ!」と喜んで写真をたくさん撮っているのを見ながら、昔はこういう材料しか身近になかったし、これで作るしかなかったわけだし… などと思いました。そして、そのときふと気付いたのです。

 持続可能性というのは、そういう制約の中でこそできるものだということです。

 かつての日本人は、持続可能な生活や、持続可能な建築を意図的に目指したわけではなかったはずです。その場にある素材、手に入るものを使って生活していたから、モノを作っていたから、結果的に持続可能になったといえるのではないでしょうか。

 身の回りにあるものを使って何とかやりくりする。そういう制約を認めるところから、持続可能性が実現できたのではないかと思うのです。もちろんその結果、冬の間はとても寒い思いをしたり、今と比べれば何かと不便だったのは事実です。しかし、身の回りの材料で暮らしが成り立つように考えたが故に、木も切り過ぎないように厳しく制限したり、モノを大切にしたり、そういう暮らし方が生まれたのだと思います。

 当時と同じような日本家屋では、私などはとても冬は耐えられないと思いますので、数百年前の生活に戻ろうと言うつもりはまったくありません。しかし、今ある制約の中でなんとかやっていくと決めることが、実は結構大切なことなのかもしれません。

 新しい技術を使うのは結構です。生活レベルを極端に落とす必要もないと思います。ただ、「足りないものは、ないものは、なんでも遠くから買ってくればいい、運べばいい」そういう発想は少し変えた方がいいのかもしれません。

 「いま手元にあるものでなんとかできないか?」一度はそうやって考えてみるようにすることで、本当のイノベーションも生まれ、持続可能な企業や社会に近づくのではないか。そんなことを考えた週末でした。

【No.170】『今年は生物多様性に注目が集まるわけ』

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【No.170】 2014年1月31日
『今年は生物多様性に注目が集まるわけ』
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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。新月が巡ってきました。CSRに関する旬の情報をお届けしたいと思います。

 あなたは、今年CSRの中で何が大きなトピックになりそうだと思いますか? いろいろあると思いますが、私の専門の分野で言えば、やはり生物多様性に注目していただきたいですし、実際、そうなると思います。

 というのは、今年は2年に一度の生物多様性条約の締約国会議(COP)が開催される年だからです。今回は12回目ですのでCOP12、開催地はお隣の韓国、期間は10月6日から17日になります。COP12全体のテーマは、「持続可能な開発のための生物多様性」です。このタイトルからだけでも、生物多様性が生物の問題ではなく、むしろ私たち人間社会の問題であることがお分かりいただけると思います。

 具体的な内容の中で特に注目したいのは、2020年の愛知目標の達成のために各国がどのように取組みを進めているか、中間評価が行われたり、また、保全のための費用をどうやって集めるか、資金メカニズムについても決定されることになっています。

 前者については、国だけでなく、企業でも愛知目標を意識して取り組んでいるところが多くありますので、こうした先進企業がこれまでの成果を発表してアピールするでしょうし、後者の資金メカニズムについては、税制改革を含めて、企業にどのような貢献を求めるか、道筋が決まるはずです。当然要注目です。

 また、この2年でいわゆる自然資本についての議論や活動も海外ではかなり進んでいます。これについても先進的な企業やグループから、成果の発表やこれからの進め方について呼びかけが行われるでしょう。つまり、これからの世界の大きな流れが示される機会と言っても過言ではないと思います。

 ちなみに日本では、2月17日に環境省が「自然資本と企業・自治体経営」というタイトルで国際シンポジウムを開催します。海外のゲストスピーカーや企業から、自然資本という切り口で、生物多様性への最新の取組みが紹介されるはずです。私もパネルディスカッションに登壇し、日本の状況などについてお話をする予定です。

 また、2月25日は、もうすっかりお馴染になった「企業が語るいきものがたり」が三井住友海上の主催で開催されます。今年はもう7年目で、テーマは「持続可能な消費と生産をめざして、企業が果たす生物多様性保全の役割ー COP12に向けてー」です。私も基調講演やパネルに参加させていただきます。(詳細は、「注目のセミナー」をご参照ください)

 このメールマガジンをお読みいただいている方は、生物多様性や自然資本にご興味のある方が多いのではないかと思います。ぜひこうしたシンポジウムにご参加いただき、これからどういう流れができそうなのか、いち早く感じ取っていただければと思います。そして10月のCOP12はお隣の韓国での開催です。航空運賃は国内出張より安いかもしれませんので、一部でも実際に参加していただくと、世界の熱気を感じ取ることができるのではないでしょうか。ちなみに開催地のピョンチャン(平昌)は2018年の冬季オリンピックの開催地であり、「冬ソナ」のロケ地としても有名なのだそうです。

 また、実務面で言えば、生物多様性に配慮した「持続可能な調達」は、日本でもますます話題になり、また実際に取り組む企業が増えています。ですので、今年は生物多様性が単なる「気になる言葉」ではなく、実質的に深く取り組むべきテーマになる年になるのではないかと思います。これを機に生物多様性にしっかりと取り組みたい、あるいはもう一度最初からしっかりと勉強したいという企業人向けには、私どもが事務局をしているJBIB(企業と生物多様性イニシアティブ)にご参加いただくことも役に立つのではないかと思います。JBIBでは、新年度からの参加をご検討いただいている企業様向けに3月7日に説明会を開催いたしますので、こちらもぜひご参加いただければと思います。(RAIからのお知らせ参照)

 このように生物多様性にとってビッグイヤーである2014年は、新春から次々にいろいろな行事等が予定されています。引き続き、ご注目いただきたいと思います。

【No.169】『そのCSRは役に立っていますか?』

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【No.169】 2014年01月16日
『そのCSRは役に立っていますか?』
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こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。今夜は今年最初の満月です。今年もほぼ満月と新月の日にCSRに関するホットな情報をお届けしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

新年のご挨拶はすでにメールでお届けしたかと思いますが、もし届いていなかった、あるいはお休み中なので読めなかったという方は、こちらでお読みいただくことができます。

その中でも述べたように、私たちレスポンスアビリティでは、今年は「本物のCSR」を追求していきたいと思っています。

「本物のCSR」とは、個人の思いと会社の事業のベクトルを一致させるものであり、事業に役立つものであり、そして究極的には、会社と社会を持続可能にするものです。

レスポンスアビリティでは7年半前の創業当初より、「本質的であること」、「本気であること」、「正直であること」を大切にするバリュー(価値感)としてまいりました。これは言い換えると、本質的な問題に、タブーなしで、本気で取り組むことです。ですから、「本物のCSR」の追求は、まさに私たちが全力をあげて追求することだと確信しています。

このメールマガジンをお読みいただいているあなたの会社ではどうでしょうか? いま行っているCSRは事業の役に立ち、社員のモチベーションを引き上げ、そして社会の役に立っているでしょうか? いま行っているCSRの先には、持続可能な未来が待ち受けているでしょうか?

あなたの答えがYesであれば、あなたは既に「本物のCSR」を実行しているということです。ぜひそれをどんどんと進めていただき、その効果を私にも聞かせてください。

もし自信を持ってYesと答えられないとしたら… まだそれほど心配する必要はありません。おそらくほとんどの会社がまだその段階にあると思います。ただ、いつまでも今のCSRでいいとは言えません。ぜひ今年を「本物のCSR」をスタートする年にしていただきたいと思います。

もちろん私たちも、あなたの会社のCSRを「本物のCSR」にするお手伝いを、本気でする覚悟です。本質的な課題について、現実的なアプローチでお手伝いします。その第一段として、昨年最後の号で予告した「CSR実践基礎講座」を今日から正式スタートいたします。単なるCSRの知識ではなく、「本物のCSR」を実践できるようになっていただくだめのオンライン講座です。

これまで行なってきたサプライチェーン・マネジメントについても、個別のコンサルティング以外に、気軽にご利用いただけるサービスも開発中です。準備が出来次第ご案内いたしますので、どうぞご期待ください。

最後になりましたが、この一年があなたにとって実り多きものになることをお祈りし、また、「本物のCSR」の追求にご一緒いただけることを願っています。

【No.168】『整理の季節』

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【No.168】 2013年12月18日
『整理の季節』
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 こんにちは、レスポンスアビリティの足立です。昨夜は、今年最後の満月でした。月とともに、今年最後のCSRに関する旬の情報をお届けいたします。

 先週後半は、エコプロダクツ展で忙しかった方も多いのではないかと思います。お疲れ様でした。

 私も自分の講演の合間をぬって、広い会場をざーっと駆け足で見て回りました。これまで常連だったいくつかの大企業の名前を見なくなった一方で、今回初めて見る中堅企業もあり、15回目となりエコプロ展も一つの時代の変わり目を迎えたのかなと感じました。

 エコプロを区切り目に設定して、そこでその年の成果を発表する企業もあります。そういう企業のブースは、今年はどんな成果を発表しているのだろかと、こちらも訪問するのが楽しみになります。担当者の方も、「大変だったけれど、頑張ったんですよ」とちょっぴり自慢気な表情をなさっていて、あぁ、こういう方々の努力の積み重ねが会社や社会を動かしているのだなと感じ入ります。

 ただちょっと気になるのは、本質的な問題にあえて触れずに、少しだけ良くなった部分をことさらとりあげて、あるいは雰囲気だけで宣伝しているような製品や会社です。これではただの商品市と変わりありませんね。

 エコプロを訪れるのは、専門家ばかりではありません。むしろ、環境に興味はあるけれど、詳しいことはわからない。そういう方の方が多いのではないかと思います。最近はお子さんや家族連れも多いので尚更です。

 立派なブースで、きれいな女性が、CMのように作り込まれた美しいプレゼンテーションをしているのを見れば、一般の方々は易々と「騙されて」しまうでしょう。「そうはおっしゃいますけど、こういう点はどうなんですか?」と思わず突っ込みたくなること満載の説明もありましたが、大人なのでそこは我慢しておきました(笑)。が、もちろん自分の中でその企業の評価はグッと下げます。所詮この程度なんだと。

 まじめに努力している企業と、グリーンウオッシュと呼ばれかねない宣伝をしている企業。しかし、一般のお客さんにはその違いがわからない… あなただったら、どうしたらいいと思いますか?

 環境に対する配慮があたり前のことになり、エコプロの規模が広がることは嬉しいことです。しかし、質をどう担保するのか。そろそろ整理が必要なのかもしれません。こんなとろこにも、有名になり、たくさんの人が集まるようになったエコプロ展の課題があるように思いました。

 ところで、私事ですが、12月のはじめに自宅を引越しました。そして、こんな時でなければもうずっと整理しないだろうと、思い切っていろいろなものを処分しました。

 つくづく感じたのは、「もったいない」とか、「後から使えるかもしれない」というモノのほとんどが、結局使われることはないまま古くなってしまったことです。言われ尽くされたことですが、「後から」というときは、まず来ないのですね。

 特に自己嫌悪を感じるのが、「お徳だから」という理由で当座の必要なく買い込んだモノです。たしかに価格的には「お徳」だったかもしれないのですが、結局ほとんど使わずに捨てる羽目になったモノの山を見て、もうこれで最後にしようと誓いました。

 なんでもかんでも「もったいないから」とか「お徳だから」と手を伸ばすのではなく、本当に必要なもの、気に入ったものだけを選び、それを末長く使い続ける。あたり前のことですが、それが結局一番エコでお徳なのですね。

 そんなわけで、引越のおかげで私は強制的に「整理」をすることができました。それでも急な慌ただしい引越だったので、整理の余地はまだ残っています。ちょうど大掃除のシーズンですし、今年中にしっかりと整理をして、余計な垢はすっかり落として、新鮮な気持ちで新しい年を迎えたいと思います。

 最後になりましたが、今年一年お付き合いいただき、どうもありがとうございました。

 どうぞ良い年をお迎えください。

【No.167】『水リスクをチャンスへ』

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【No.167】 2013年12月03日
『水リスクをチャンスへ』
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 今年はじめに巻頭言で何回か連続して水リスクについて紹介しましたが、覚えていらっしゃいますでしょうか? 水リスクについて取り上げたのは、日本企業の中にもこの問題を真剣に考えるところが増えて来て、私たちも問い合わせを受けることが増えてきたからでした。

 その後いろいろな企業からお話をうかがっていると、水リスクについての関心が高まったて来たのは、やはり海外の投資家などからのアンケートで問われることが増えてきたことが一因のようです。

 日本では国内で水のことがあまり問題にならないので、どうしても私たちは無関心になりがちです。身近にリスクがなければ、あまり考えようとしないのも当然ですね。

 しかし、実はここに大きな誤りがあります。一つは、サプライチェーン全体で考えると、日本企業もけっして水リスクと無縁ではないということです。

 いやむしろ、日本企業がこれからもっと商品を作ろう、売ろうと考えているアジアには、既に水リスクが高かったり、これから急速に高くなる国が多くあります。そして、いま世界が懸念しているのは、まさにこうしたサプライチェーン全体での水リスクなのです。なぜなら、サプライチェーンのどこかで問題が起きれば、商品を作ったり売ったりすることが難しくなるからです。

 そうした国際的な動きも意識して、私たちのところでは10月には、事業パートナーである英国のTrucost社と一緒にいくつかのセミナーでお話をさせていただきました。私たちが主催したセミナーでは、サプライチェーン・リスクの中でも特に水リスクに焦点をしぼってお話をしたところ、そのリスクの意外な大きさに参加なさった方々は一様に驚かれたようでした。

 水リスクについてのもう一つの誤りは、日本は決して水が豊かではないということです。たしかに私たちは日常的にはあまり水不足を感じることはなくなったのですが、かつては日本でも水不足で旱ばつが心配されたり、取水制限が行なわれていました。あるいは、地下水の汲み上げ過ぎが問題となって、規制されるようになりました。こうしたことが起きていたのは、つい数十年前なのです。

 日本は降水量こそ多いのですが、細長い山国であることから河川は短く急ですぐ海に到達してしまいます。また人口が多いことから、一人あたりの水資源量は世界平均の半分でしかないのです。

 なのになぜ私たちが今水不足を感じないかと言えば、そこが日本の技術力なのです。かつて水で苦労したことを、節水技術等でカバーしているのですね。

 こうした技術はもちろん、海外に進出した際にも役立つはずです。ただ残念なのは、これまでのところこうした技術が個別の企業が持つ技術だけになっており、全体をまとめたパッケージ化されていないことです。逆に言えば、それをきちんとシステム化すれば、魅力的な商品になり、大きな市場を生むことになるのではないでしょうか。

 個別企業でも同様です。自社の工場の中での節水等は高度に行なっていても、サプライチェーンというビジネスを支えるシステム全体について、統合的に水の利用を把握し、管理できているわけではありません。そこが今後のビジネスで、アキレス腱になってしまうかもしれません。

 最近では、サプライチェーン全体が生態系に与える影響をも考慮し、生態系と水を共有する、ビジネスも含めてた生態系で水を循環させるという、さらに広い視点の考え方も登場しています。

 こうした広い視点から自社の水リスクを理解したいという方のために、レスポンスアビリティではこの度、「水リスクチェック」という水リスクを簡単に把握するためのサービスを開始しました。

 また、私たちが事務局を務める企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)では、エコプロ展初日の12月12日に「水から取り組む自然資本~企業の実践ガイド」と題するシンポジウムを開催し、JBIB水と生態系ワーキンググループが作成した「生物多様性に配慮した企業の水管理ガイド」を配布し、先進企業の水リスクへの取組みをご紹介します。

こうした機会をご活用いただき、水リスクをチャンスへと転じていただければ思います。


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