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第9回『金融機関も注目する自然資本』

| 2015/05/22

自然資本「超」入門

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第9回 2013年10月21日
『金融機関も注目する自然資本』
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投資家が高い短期的リターンを期待するので、企業は中長期的な戦略よりも短期的に利益を生み出すことを優先せざるをえず、企業の長期的な発展が阻害されているのではないか、そのように金融の在り方が批判されることがあります。その一方で、金融界が企業の長期的な持続可能性をサポートする取組みも進んでいます。今回は、その動きをご紹介します。

2012年6月、ブラジルで開催されたリオ+20の会場で「自然資本宣言(NCD:Natural Capital Declaration)」が正式に発表されました。これは、以下の4項目を推進することを目標とした、世界の金融機関によるイニシアティブです。現在、44の金融機関が署名しています。

 

「自然資本宣言」の4つの目標
1. 金融機関の事業が、自然資本にどのように依存し、どのような影響を与えているか、
  そしてそのことによってどのようなリスクとチャンスがあるのかを把握する
2. 自然資本の評価を金融商品やサービスに組み込む
3. 企業の会計や意思決定に自然資本を組み込むことに関する、国際的な合意を形成する
4. 自然資本を統合した情報公開に関する、国際的な合意を形成する

(仮訳:レスポンスアビリティ)

1項目めは、金融機関についてのことですが、2〜4項目めは、一般の企業にとっても無視できない内容です。この取組みが進めば、当然、金融機関以外の企業も、自然資本コスト(※1)の定量化を要求されることになります。

金融機関がこのNCDを発足させた背景には、企業のパフォーマンスに影響を与えるほどに環境リスクが顕在化してきているとの認識があります。NCDの取組みを説明した資料(※2)では、水不足による原材料の綿花の不作と価格上昇が世界的なアパレルメーカーのH&Mの経営に影響を与える可能性があることや、気候変動によってユニリーバーの事業が受ける影響が年間で265万ドルにもなると試算されていることなどが紹介されています。水不足や水質の悪化、生物多様性の破壊と生態系の悪化などの環境問題が明らかに企業の業績に悪影響を与え、それが、債券や株式市場、保険、融資に対する重要なリスクであると認識されはじめているのです。

金融機関が環境リスクに大きな関心を持っていることは、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)が多くの投資家から注目を集めていることからもわかります。CDPは、気候変動(温室効果ガスの排出)、水利用、森林との関わりに関する質問書を、それぞれ2002年、2010年、2013年から企業に送付し、情報の開示を求めており、これは多くの機関投資家によって支持されています。気候変動に関するアンケートに賛同する機関投資家は722機関、その投資金額は87兆ドルにものぼり、これは世界の投資資金のおおよそ1/3に相当します。これだけ多くの投資家が、企業の環境リスクに注目し、CDPが集める企業の環境データを見ているのです。

「環境パフォーマンスであれば、企業は環境報告書やCSRレポート、サステナビリティレポートなどで報告しているじゃないか」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。しかし、これらの報告書による情報開示のやり方で、投融資に関する環境リスクを低減させたいという金融機関や投資家の要求を満たせるでしょうか? 答えは残念ながらNOです。それは、開示されている情報と経営との関係性や、経営上の重要性が不明確だからです。また、環境負荷の評価範囲が自社の操業に限られていることがほとんどで、サプライチェーン全体をカバーしきれていないからです。

それでは、どのようなデータを開示すれば、それぞれの企業の環境についての本当の実力やリスクを知ることができるのでしょうか? その答えは、次回にご説明します。

※1:自然資本コスト:経済活動が必要とした、もしくは開発や汚染によって損ねた自然資本の経済的価値のこと
※2:“The NCD Road Map” Natural Capital Declaration (2013)

自然資本「超」入門

 

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