Response Ability Inc. Response Ability Inc.

第6回『パソコンの真のコスト』

| 2015/05/22

自然資本「超」入門

===============================================================
第6回 2013年9月5日
『パソコンの真のコスト』
===============================================================

前回は食料品の「真のコスト」について話をしましたので、今回は機械、その中でも私たちが仕事をするためには欠かすことができない(この記事をご覧いただくのにも必要です!)パソコンの「真のコスト」について考えてみたいと思います。

前回に引き続き、Trucostによる自然資本コスト(※1)の分析結果をご紹介します。今回ご紹介するのは、パソコンの生産、使用、そして廃棄にかかる自然資本コストをデスクトップとノートパソコンで比較分析した結果です。詳しくは Trucostのウェブ(※2)で公開されていますのでご参照下さい。
 
(下図をクリックすると図が拡大されます)
Trucost_computer
図1:パソコンの真のコスト
作成:Trucost
 
この図は、デスクトップとノートパソコンについて、原材料が生産される段階、製品として製造される段階、輸送される段階、ユーザーの手元で使用される段階、そして廃棄される段階のそれぞれでどの程度の自然資本コストが発生しているのかを計算した結果です。計算の対象としているのは、温室効果ガスの排出、水利用、大気汚染、廃棄物の埋め立て、重金属による汚染の5項目です。

この分析によると、すべての段階のコストを合計すると、デスクトップでは69.6ドル、ノートパソコンでは35.24ドルの自然資本コストがかかっていると試算されています。もし、今は価格に反映されていないこれらの自然資本コストが何らかの形で小売価格に反映されたとしたら、ノートパソコンの場合は約6%、デスクトップの場合は約14%も値段が上がることになります。

どのような要因で自然資本コストが発生しているかを見てみると、いずれのタイプのパソコンでも、温室効果ガスの排出によって生じる自然資本コストがもっとも大きいことがわかります。例外としてノートパソコンの製造段階における水利用の割合が比較的大きいのですが、その他のいずれの段階でも温室効果ガスの排出が大きな割合を占めています。このことから、パソコンの環境リスクを考える場合、まずは温室効果ガスの排出量を削減することが重要になると言えます。

では、温室効果ガスの排出量はどうやって削減するのが効果的でしょうか? Trucostの分析結果では、デスクトップの場合、使用段階での自然資本コスト(41.55ドル)が全体の約6割であり、すべてのステージの中でもっとも高いことがわかります。そのため、使用時のエネルギー消費を削減すること、つまり省エネ製品の開発が必要だということがわかります。また、原材料の生産段階の自然資本コストも全体の28%と比較的大きいため、省エネ製品の開発と同時に、原材料の生産段階での温室効果ガスの排出を削減することも重要です。

ノートパソコンの場合はどうでしょうか。ノートパソコンの場合は、使用段階での自然資本コストは9.32ドルであり、デスクトップと比べてそれ程高くありません。もっとも自然資本コストが大きいのは原材料の生産段階です。そのため、原材料の生産段階に注目する必要があります。

「原材料の生産段階の温室効果ガスの排出量なんてどうやって削減すればいいのか?」とお感じの方も多いでしょう。Trucostの分析は、この疑問に対して1つの示唆をしています。Trucsotの分析では、ノートパソコンの主要原材料の1つであるアルミニウムは、生産される国によって、生産によって生じる自然資本コストが大幅に異なることがわかります(図1の右下の世界地図をご覧下さい)。

アルミニウムの主要生産国である5ヶ国を比較した場合、自然資本コストがもっとも大きい中国と、もっとも小さいカナダとでは、それぞれ0.79ドルと0.32ドルであり、前者は後者の2.5倍にもなります。Trucostによると、この差は、中国は発電でより石炭に依存しているのに対し、カナダは天然ガスを多く利用していることに起因するそうです。

つまり、原材料の生産段階の温室効果ガスの排出量を減らすためには、中国などの新興国に、温室効果ガスの排出が少ない発電方法に切り替えるよう促すことが1つの鍵となります。もちろん、企業としては、原材料の調達先として、より温室効果ガスの排出が少ない場所を選択することもできるでしょう。

本分析結果は、あくまでもパソコンに関する自然資本コストの平均値であり、一般的な傾向を示したものです。実際にはパソコンには様々な仕様や性能のものがあり、多様です。あなたが使っている、もしくはあなたの会社が製造しているパソコンの自然資本コストは、当然この分析結果とはちがってくるでしょう。もしかしたら、発生する自然資本コストは使用段階ではもっと小さいかもしれませんし、原材料生産段階ではもっと大きいかもしれません。温室効果ガスの排出以外の、例えば水利用による自然資本コストがもっと大きいのかもしれません。

いずれにしても、パソコンの製造・販売に関する自然資本コストを削減し、環境リスクを低減させようと考える時には、製品の性能をアップさせて消費電力を削減するだけでは不十分であることは確かでしょう。サプライチェーンにも目を向ける必要があるのです。

(※1)自然資本コスト:経済活動が必要とした、もしくは開発や汚染によって損ねた自然資本の経済的価値のこと。

(※2)Trucostの記事はこちらからご覧になれます。
    “The Trucost of Personal Computers”

 

自然資本「超」入門

 
 

あなたも、自社の製品の夏のコストを知りたくありませんか?
そのための簡単な方法をご用意しました。

ご興味のある方はこちらをクリックしてください。