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第4回『自然資本コストのうまい測り方』

| 2015/05/22

自然資本「超」入門

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第4回 2013年8月7日
『自然資本コストのうまい測り方』
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これまでの連載で、自然資本の定量化はおおまかなものであればそれ程大きな労力をかけなくてもできると述べました。しかし、この連載を読んでいただいている皆さんの中には、「本当だろうか?」と半信半疑な方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、このような疑問を解消するために、この分野で世界をリードするTrucostが実際にどのような方法で自然資本コストを測定しているのかをご紹介します。

自分たちの事業がどれだけ環境に影響を与えているのか、また自然の恵みを受けているのかを、自分たちの操業だけではなくサプライチェーン全体で算出することを想像してみて下さい。そんなこととてもできっこないと感じる方が多いと思います。確かに、生産している製品だけでも数百、数千はある。その原材料というと数万、数十万になる。もっと多い企業もあるでしょう。この原材料の1つ1つが生産されるのにどれだけの自然資本コストがかかっているのか… すべてを把握するのはとても無理だと感じるのは当然です。

しかし、前回、そして前々回でご紹介した通り、実際にPumaは環境損益計算書を作成しました。さらに、Pumaの親会社であるKeringは、18社もあるグループ全体の環境損益計算書を2015年までに作成することを宣言しています。それでは、Pumaはいったいどうやって、サプライチェーンを含めた事業全体の自然資本コストを測ったのでしょうか。

Pumaの環境損益計算書を作成したTrucostは各国の国勢調査、資源利用及び汚染に関する調査データ、統計データ、そして公開されている報告書から収集した世界4,500社の実データを格納したデータベースを構築しています。収集されたデータは、産業連関モデル(IOモデル:Input-Output Model)によって関連づけられているため、つまり、ある事業分野とその事業分野の製品生産に関係する事業分野が関連づけられているため、ある企業の情報を元に、その企業の生産活動に関係する、サプライチェーン上流の全ての産業による環境負荷が自動的に算出できるのです。このようにして算出された環境負荷は、これに環境経済学に関する世界中の研究成果から求めた係数を乗じることで経済的価値に換算されます。

Trucostのデータベースを単にそのまま利用しただけでは、業界の平均値しか求めることができませんが、自社やサプライヤーの環境関連の実測データ、どこで操業しているかという地理情報、原材料に関するデータ、製品のLCAデータ等を組み合わせることで、その企業の現実により近い自然資本コストを算出することができるようになります。Pumaもこのようにして、環境損益計算書を作成しました。

このような、TrucostのIOモデルを用いた自然資本コストの測定は、手元に詳細なデータがすべてそろっていなくても行うことができるため、データを集める手間がかからず素早く行えます。またどんな企業の自然資本コストでも必ず計算できるというメリットがあります。さらには、実データやLCAのデータ等を補足することでより正確な計算を行うことができます。

これに対して、IOモデルは正確性に欠けるのではないかとの反論もあるでしょう。しかし、私たちが最初に自然資本コストを測る目的は、正確な数値を求めることではないはずです。私たちが自然資本を測るのは、サプライチェーンを含めた自社の環境リスクを適切に管理するためです。また、自分たちの取組みを経済的価値というわかりやすい指標で評価するためです。これらを行うことができる程度に正確であればいいはずです(※)。正確性にこだわって足踏みをするよりも、厳密な正確性には少し目をつむっても、サプライチェーン上にどのような環境リスクが潜んでいるのかを早く見た方がいいのではないでしょうか。詳しく正確に調べるのは、リスクが大きなところを発見してからの方が合理的です。

さて、これまで4回にわたり「サプライチェーン・リスクの見える化」と題して、自然資本コストの測定がサプライチェーン管理にとって極めて有効であることをご説明いたしました。次回からは、自然資本コストを測ることでどのようなことがわかるのかについてPumaの環境損益計算書以外のいくつかの分析例をご紹介しながら、具体的にお話ししたいと思います。

※ : 実際にTrucostによるIOモデルに基づいた分析は、すでに多くの企業で利用されています。また、第1回目の記事でもご紹介したように、UNEPによるTEEBのように、国際機関の報告にも使用されていますし、Newsweekのグリーンランキングの順位の算出にも使われています。Pumaの環境損益計算書は専門家により評価され、改善点はあるものの、企業が自然資本の価値をビジネスの中に組み入れて、これを持続可能な形で利用するための優れたアプローチであり、企業が戦略的な意思決定を行うために有用であるとされています(報告書 “AN EXPERT REVIEW OF THE ENVIRONMENTAL PROFIT & LOSS ACCOUNT” はこちらからダウンロードできます)。

 

自然資本「超」入門

 
 

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