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第2回『サプライチェーンリスクを管理する方法』

| 2015/05/22

自然資本「超」入門

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第2回 2013年7月8日
『サプライチェーンリスクを管理する方法』
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前回は、サプライチェーン上に大きな環境リスクが潜んでいることを紹介しました。今回は、このリスクに対してどのように対処すれば良いかについて考えてみたいと思います。

サプライチェーン上のリスク管理と言われてすぐに思いつくのは、トレーサビリティを確保することだと思います。もちろん、トレーサビリティの確保はとても重要なことで、できているに越したことはありません。しかし、グローバル化が進んだ現在、多くの企業でサプライチェーンは非常に複雑に入り組んでおり、二次サプライヤーですら、どのような企業なのかまったくわからない場合の方が多いのではないでしょうか。したがって、サプライチェーン全体でトレーサビリティを確保するのはかなり大変な作業になり、時間もかかることでしょう。

サプライチェーン上のリスク管理のためにこのようなトレーサビリティの確保は本当に必要でしょうか? そもそも、サプライチェーン全体の中で、どこにリスクが潜んでいるかを見つけることが、一番重要なことのはずです。大きなリスクに優先的に対処することがリスクマネジメントの定石だからです。

つまり、サプライチェーン全体を見渡して、どこで環境に大きな負荷をかけているのか、どこに大きな環境リスクが潜んでいるのかの目星をつける。その上で、そのリスクを回避、軽減することに集中的に取組む。このようにして初めて、効果的にサプライチェーン上のリスクを管理することができるのです。そして、そのためには必ずしもトレーサビリティを完全に確保し、すべてのサプライヤーの状況を調べる必要はありません。なぜなら、すべてのサプライヤーを実際に調べなくても、概要だけであればもっと簡単に算出し、もっとも負荷やリスクが大きいところを見つける手法があるからです。

前回ご紹介した、”Natural Capital at Risk: the Top 100 Externalities of Business”では、実際にサプライチェーン上の自然資本コストが算出されています。この分析を担った英国のTrucostは、このような分析を企業単位で行うこともできます。というより正確に言えば、Trucostはむしろそうした個々の企業のサプライチェーン上の環境負荷を算出することを得意にしており、そこから全体像を集計したものが先のレポートなのです。

もっとも有名な例として、TrucostはPumaの事業全体の自然資本コストを算出しています。この結果は世界初の環境損益計算書として、Pumaから2011年5月に公開されています。
詳細はPumaのプレスリリースをご参照下さい。

01_環境損益計算
図の作成:Trucost、和訳:レスポンスアビリティ

この環境損益計算書を作成するために、Pumaは全ての原材料のトレーサビリティを確保したわけではありません。綿や牛皮といった重要なものについては原産地にまで遡っていますが、全ての原材料でそうしたわけではありません。また、綿などについても、すべての農場を現地調査したわけではありません。

この環境損益計算書が世界を驚かせたのは、サプライチェーンを含めた事業全体の環境負荷を測定したことにあります。しかも、温室効果ガスの排出だけではなく、土地利用、水利用、廃棄物、大気汚染物質の排出といった幅広い環境負荷について定量的に評価しているのです。

そして、経営に役立てるという面から考えると、これらの5つのバラバラの環境負荷を金銭という単一の単位(ここではユーロ)で表現していることが重要です。すべてを経済的価値に換算して評価することで、複数の環境負荷の大きさを比べることはもちろん、こうした環境負荷(コスト)が売上や利益にどのくらいのインパクトを与えうるのかを評価することができるからです。

この環境損益計算書からは、例えば次のようなことがわかります。
Puma自身による環境負荷は全体のごく僅か(6%程度)であり、サプライチェーンの最上流が環境に対して圧倒的に大きな負荷(57%)を与えていること
このことから、自社の環境負荷の低減だけを努めても、環境リスクの管理としては不十分であるといえます。

水資源の利用による環境コストが、温室効果ガスと並んで比較的大きいこと
水不足の問題は国際的に大きなリスクとして認識されていますが、Pumaの場合、サプライチェーンの最上流に最も大きな水リスクが潜んでおり、ここでの水管理を行わなければ事業全体が大きなリスクにさらされているといえます。

この他にも様々な示唆が得られますが、いずれにしてもPumaはこの環境損益計算書によって、これまでには見えていなかった環境リスクを定量的に理解することができたのです。そして、ここで明らかになった環境リスクを低減するために、Pumaは既に具体的に動き始めています。そのことについては、また次回ご紹介したいと思います。

 

自然資本「超」入門

 
 

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