Response Ability Inc. Response Ability, Inc.

         

メールマガジン
サステナブル経営通信

サスナビ! (代表ブログ)

サステナ・ラボ(旧ブログ)

巻頭言集
自然資本を測る
サステナ・ラボ
CSR monthly

問い合わせ・資料請求

■最新の記事



 このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。自然資本とは何か?なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。
 

自然資本「超」入門

#21: 自然資本リスクの分布を把握しよう

 
 前回説明したように、GHGをScope3で測定し開示するのは、それ自体が目的ではない。サプライチェーン全体で測定することで、どこにどれだけ環境負荷があるのかを把握し、必要であればそのサプライヤーに働きかけ、サプライチェーン全体で環境負荷を減らす=環境パフォーマンスを向上させることが、真の目的なのだ。
 
 TEEB(生態系と生物多様性の経済学)の成果を企業活動の変革に活かしていくために結成された TEEB for Business Coalition(TEEB ビジネス連合、 現在は Natural Capital Coalition すなわち自然資本連合に改名)は、まさにこのことを目的に掲げてスタートした。この団体がユニークだったことは、サプライチェーン全体にわたる環境負荷を物理量で示すのではなく、経済価値に変換して示していることだ。
 
 というのも、これまではこうした環境負荷は外部不経済であり、企業や消費者がそのコストを負担していなかった。そのことが自然の重要性を軽視させてきた原因だと考え、逆にそれを 金額で示すことで、企業や個人の関心を高めようとしたのだ。
 
 金額換算することで、現実の企業経営や行政の政策決定の判断に参考しやすくなるというメリットもある。さらには、異なる環境負荷の間で重要性を相互に比較することが可能になることもメリットだ。
 
 TEEBビジネス連合は、結成後すぐに「Natural Capital at Risk」(※)という報告書を発行した。これは世界中の一次産業と一次加工業について、地域別に自然資本への負荷の大きさを測定してまとめたものである。その金額は7.3兆ドルにもなり、これは世界の経済活動(総GDP)の1割強に相当するものだ。つまり、もしこうした環境負荷をすべて内部化するとすれば、利益のかなりの部分が吹き飛んでしまうことになり、この数値は世界のビジネスリーダーを慌てさせた。
 
 
石炭火力発電の次に環境負荷が高い産業とは
 
 ちなみに世界的にもっとも環境負荷が高い産業は石炭火力発電だが、これはなんとなく想像がつくだろう。しかし、その次に負荷が大きかった産業が何か、想像がつくだろうか。実はそれは、農業なのだ。もう少し正確には、南米における放牧、南アジアにおける小麦・米の栽培、放牧、さらには北アフリカにおける小麦栽培の負荷が大きく、世界の環境負荷トップ10のうち5つが農業だった。
 
 農業というと、緑豊かで自然に優しい産業のように普通は感じるかが、大量に土地と水を使い、また近代的な農業ではエネルギーも大量に投入しているため、自然資本に与えている負荷は非常に大きいのだ。
 
 そして、一次産業と一次加工業の負荷が非常に大きいことから、通常サプライチェーンの上流に位置するこうした産業のあり方を変革しなくては、地球全体で環境負荷を削減することは 難しいことが想像できるだろう。
 
 自社のサプライチェーンの負荷を削減するためには、自社のサプライチェーン全体での環境負荷の分布、特にどこが一番環境負荷が大きいのか、すなわちホットスポットであるのかという分析が必要である。これは実測値を収集したり、詳細に計算するなどしてみないと正確なことが分からないので、すべての企業が今すぐにできるわけではないだろう。
 
 であれば、まずは第一歩として、こうした地域別・産業別の環境負荷の大きさを把握し、それが自社のサプライチェーンにどのように関係していそうか考えてみるといいだろう。単位生産量あたりの環境負荷は地域によって大きく異なるので、どこから原材料を調達することが有利なのか、リスクが高いのかということも理解できるだろう。これがまさに冒頭に述べた、サプライチェーン全体で環境パフォーマンスを向上させるという考え方なのである。
 
※「Natural Capital at Risk」の日本語概要を無料プレゼントいたします。ご希望の方は以下のURLからお申し込みください。

http://www.responseability.jp/pj/ncr
 
 
(初出 2014年6月5日)

自然資本「超」入門