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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。
 

自然資本「超」入門

#20: 「Scope3」の目的は単なる「報告」ではない

 
 前回はScope3での温室効果ガス (GHG) 排出量の報告と自然資本会計について、サプライチェーン全体について測定するという点においては共通しているが、自然資本会計は物理量でGHGを測定するのに比べてより踏み込み、GHG以外の環境負荷も含めて総合的に、経済評価をすることが特徴的であると述べた。
 
 しかし実は、Scope3での排出量の報告と自然資本会計が目指しているところ、狙っているところにはかなり共通点もある。GHG排出量においてScope3での報告を求めるのは、アウトソーシングをしている企業が増えたり、今や「メーカー」でありながらファブレス、すなわち工場を持たない企業が増えているので、企業としての「責任範囲」は自社のみならずサプライヤーまで含めるべきだ、ということもあろう。
 
 実際、中には自社の排出量を下げるために、排出量の多いプロセスを意図的にアウトソースしようと考える企業がいないとも限らない。そういうことに対応するためには、自社のみならずサプライヤー、さらにはサプライチェーンで排出量を測定し、情報を開示させる必要がある、ということもあるかもしれない。
 
 しかし、一番の狙いは、決して排出量を「報告すること」ではない。より重要なのは、企業ごとにGHG排出量が開示されるようになれば、同じような事業を行うためにA社とB社でどれだけ気候変動に与えている影響が違うのか、つまり、どちらがより「地球に優しい会社」なのかを簡単に比較できるようになるということだ。
 
 
GHG排出量の開示は業績にも影響を与える
 
 もっと言えば、売上高あたりや純利益あたりの排出量を比べれば、異業種であってもこのような比較ができてしまう。まったく異なる業態の企業を比較しても意味がないように思えるかもしれないが、投資家はそうは考えないかもしれない。そして、実際、そのことにはある程度の意味はあるのだ。
 
 なぜなら、GHG排出量が多いということは、石油の価格が高騰したり、炭素税が高くなったりしたときに、その企業の利益がそれだけ影響を受けやすいことを意味している。すなわち、その会社の株や債券を買うことは、それだけリスクが高いことになる。当然、投資家はこの値を注意深く比較するだろう。
 
 GHG排出量を注視しているのは、投資家だけではない。むしろ、同じように情報開示を迫られている企業、特に自社の製品やサービスの納入先の企業こそ、シビアにその数値を見ていると考えた方がいいだろう。
 
 なぜなら、同じ部品を作るのにA社とB社でGHG排出量が違うとしたら――。調達先を変更するだけで、自社のScope3での排出量を減らすことができるからである。すぐに調達先を変更しなくとも、調達先に対してエネルギー効率の改善を求める納入先からの圧力は、今後ますます高くなると考えて間違いないだろう。
 
 BtoBではなく、BtoCの事業でも同じである。企業ごとや製品ごとの排出量が開示されるようになれば、それを指標にどの会社のどの製品を買うかを決める消費者も増えていくだろう。つまり、Scope3で開示された排出量は、単にそれを開示すればいいのではなく、そのことが自社の環境パフォーマンスを示す「成績」として使われるのであり、であれば当然、企業はその数値をより小さくしようと努力するだろう。これこそが、Scope3と自然資本会計の共通の目標と言っていいだろう。このことを理解すれば、「Scope3で報告をした」だけでは環境担当としての仕事は終わっていないことは明らかだ。
 
 このようにステークホルダーがGHG排出量に注目することもあり、CO2の排出量をゼロにすることを宣言したり、すでにゼロを達成している企業も出てきたりしている(※)。これらのすべてがScope3でゼロなのかどうかは不明だが、単なる「省エネ」では済まない時代がもうすぐそこまで来ていることは間違いないだろう。そして、こうした数値を実際にどのように改善していくかについては、次回説明したい。
 
※具体的な企業は、以下の「サスナビ! 045 カーボン・ニュートラルはもうあたり前?」で紹介しています。

 
 
(初出 2014年5月7日)

自然資本「超」入門