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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。

 

自然資本「超」入門

#19: 実は身近な自然資本会計

 
 前回は自然資本会計が世界的に急速に普及しつつあることを紹介したが、そうは言っても、まだ周囲に自然資本会計を採用している日本企業はないし、実感はわかないという読者が多いだろう (ただし実際には、水面下でいくつかの企業がそうした準備を進めているかもしれないが――)。
 
 しかし、実はいわゆる「自然資本会計」そのものではないが、それに類することに皆さん自身がすでに関与していることをご存知だろうか。
 
 例えば、温室効果ガスの排出量を Scope 3 基準で測定して報告する企業が増えている。言うまでもなく Scope 3 というのは、自社による直接的、間接的な排出に加えて、サプライチェーンにおける排出量まで含めたものだ。サプライチェーン全体を通じての環境負荷を明らかにするという意味 で、まさにこれは自然資本会計と同じ方向性であると言える。
 
 一方、自然資本会計と Scope 3 とで異なるのは、自然資本会計では、その名前から想像できるように、自然資本への負荷を会計システムに組み込むことを想定していることだ。 Scope 3 は温室効果ガスの排出量という物理量による報告に過ぎない。そのため、自然資本会計に移行するには、排出量を経済価値 (コスト) へと換算する必要が出てくる。
 
 もう一つは、自然資本への影響を考えるには、当然ながら温室効果ガスだけでは不十分だ。それ以外にも、水使用や土地利用、化学物質や廃棄物などを通じて企業活動が生態系に与えている影響も大きい。したがって、自然資本会計と呼ぶ場合には、こうした様々な環境負荷の影響を含める必要がある。
 
 ただし、もちろんすべての影響を考慮することは現実的ではないし、また、すべての環境側面が同じぐらいの大きさの影響を持つわけでもない。したがって、通常は多くの環境負荷の中から特に影響が大きいものを特定し、優先順位が高いものに代表させている。
 
 当然その優先順位は事業内容により異なるが、温室効果ガスの排出、水使用、土地利用、化学物質の排出などが大きな負荷となっていることが多い。また、こうした異なる物理量の負荷の影響を相対的に評価し、最終的に一つの尺度で合計するためには、前述の経済評価が必須となるのである。
 
 
マテリアリティの特定に有効
 
 しかし、ここで一つ言えることは、これまで行ってきた環境影響の測定をScope 3 基準で行うようにすれば、自然資本会計の基礎データである物理量としての環境負荷は計算できることになる。
 
 しかも考えてみれば、これは全く目新しいことと言うわけでもない。なぜならこれを製品ベースで行っているのが LCAだからだ。逆に言えば、LCAを事業全体で行うことが、自然資本会計の第一歩とも言えるだろう。また、一部のLCAでは、異なる環境側面の影響を総合的に考えるために、経済価値に換算した統合評価を行っている。こういうことを考えると、自然資本会計も、全く新しいことばかりではないということがわかるだろう。
 
 また、多くの種類の環境負荷について総合的に考えるというと、もう一つ別のことを思い出さないだろうか。自社の様々な環境影響のうち何がもっとも重要か。それはまさに、マテリアリティの特定にほかならない。
 
 GRI のG4 の登場によって、今後のサステナビリティ報告においては、すべての側面を網羅的に報告するのでも、また、自分たちが恣意的に選んだ側面について報告したのでも、 良い報告とは評価されなくなるだろう。自社の事業にとって何が重要な側面なのか、いわゆるマテリアリティをきちんと特定すること、それをその特定のプロセスを含めて報告することが求められるようになったからだ。
 
 となると、実は自然資本会計はマテリアリティの特定にもピッタリではないだろうか。主要な環境負荷について、事業 の全プロセスを通じてその影響を測定し、またそれを経済価値に変換して報告する。すると、自動的に何が自社にとって重要な環境側面になるのか、一目瞭然というわけである。つまり、自然資本会計に挑戦することは、説得力のあるマテリアリティの特定にも必須の作業ということができるだろう。
 
 
(初出 2014年4月7日)

自然資本「超」入門