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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。

 

自然資本「超」入門

#17: 水リスクは事業リスク

 
 前回はCDP (カーボンディスクロージャープロジェクト) がカーボン (温室効果ガス) だけでなく、水についても企業に情報開示を求めている理由をお話しした。それは、サプライチェーン全体における環境負荷の大きさ(カーボンの排出量や水の使用量)が、将来の事業リスクと深くかかわっていると考えられるからであった。なので、CDPはそうした観点から投資家が個々の企業のリスクを推定し、投資先を選定できるように情報の開示を企業に促しているのだ。
 
 そうは言っても、サプライチェーンの水の使用量が、事業リスクに本当に関係するのだろうか。そう訝しむ読者もまだ多いに違いない。そこで今回は、実際に水の使用量、あるいは水のコストが、事業にどのように影響を与えているかを見てみたい。
 
 コットンは、実は最も水を多く利用する作物の一つであることをご存知だろうか。製品を作るためにその背景でどれだけの水が使われているかを示す「ウォーターフットプリント」という指標があるが、Tシャツ1枚を作るためには2500リットルもの水が必要なのだ。
 
 そのコットンの価格は2002年から2012年の10年間で約2倍、最も高かった2011年には瞬間的には3倍以上になっている。さらに、この期間中にもっとも価格が安かった2005年を基準にすれば、2012年は2.5倍、2011年は5.5倍である。その主要な原因は、気候変動をはじめとする水リスクにより、使用できる水の量が減ったためであると考えられる。
 
 
コットン価格と企業利益が連動
 
 Tシャツなどのアパレル製品は、原料価格が高騰してもそう簡単に小売価格に転嫁することはできない。したがって、原料価格が上がればそれだけメーカーの利益が圧迫されることになる。私たちの事業パートナーである英国のTrucost社が、世界の大手アパレル3社について実際に分析したところ、コットンの価格とこれらの企業の利益は18カ月の時差を経て、ほぼ完全に連動していることが確認されている。
 
 これ以外にも、食品、飲料といった農作物を原料とする製品を製造販売している企業は、同様に近年の世界的な水不足の影響を受けている。日本でも最近、食品価格の値上げが相次いでいるが、これは単に為替レートが円安になったことだけでなく、ドル建てでも原料価格が上昇していることも影響している。世界のコモディティ価格はこの10年でドル建てで平均約1.5倍に上昇しているのである。
 
 このように、水不足が企業の収益構造に影響を与えることがすでに現実に起きているし、そうした現状に対処するために、あるいはこれからさらに拡大するであろう水リスクの事業への影響を回避・最小化するために、海外の先進的な企業は具体的な取り組みを始めている。
 
 自社が水リスクとどの程度関係あるか気になる場合には、製品のウォーターフットプリントを調べてみるといいだろう。食品でも、原料とする作物によってウォーターフットプリントは大きく異なる。また、食品、飲料、アパレル以外にも実は半導体もかなりフットプリントが大きい。他にも、紙やバイオプラスチック、パーソナルケア用品、化学製品などの製造や鉱工業など、かなり多くの事業で注意が必要である。
 
 なので、この機会に自社の水使用量だけでなく、製品のウォーターフットプリントを調べてみてはどうだろうか。自社製品についてなるべく実測に基づくデータで算出するのが理想的だが、最近は様々な製品の平均的なウォーターフットプリントが算出されているので、まずはそうした値を確認するところから始めるといいだろう。
 
 ただ、一筋縄ではいかないのは、ウォーターフットプリントが大きいからリスクも大きいとは限らないことである。ある程度のフットプリントが大きくても、水が潤沢な場所で水を使っているのであればリスクは小さいし、逆にフットプリントはそれほど大きくなくても、水が不足している、あるいはこれから不足するであろう場所で操業している場合には、大きなリスクとなるからである。
 
 
(初出 2014年2月5日)

自然資本「超」入門