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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。

 

自然資本「超」入門

#16: なぜCDPは水の情報開示を求めるのか

 
 前回の記事で、CDP(カーボンディスクロージャープロジェクト)が最近はカーボン(温室効果ガス)だけでなく水についても、企業に情報開示を企業に求める活動を行っていることに触れた。しかもその範囲は、カーボンの場合と同様、サプライチェーン全体に広がりそうだ。
 
 なぜカーボンについての情報開示を求めるために作られた団体が、水についても同様のことを求めるのであろうか。それには大きく二つの理由が考えられる。
 
 まず一つは、水はビジネスを行なうために重要な資源であり、なおかつその供給不安が増大しているからであろう。つまり、水をどのぐらい使用しているかが、近い将来のビジネスリスクになるからである。
 
 もう一つの理由は、水リスクは、自社の工場での水使用だけではなく、サプライチェーンの上流や下流、つまりバリューチェーン全体の問題であり、またカーボンリスクの場合と同様に、サプライチェーンにおける見える化できていないリスクの方が、自社の工場以上に大きな問題である場合も多いからだ。
 
 この見えないリスクを可視化しなければ、本当のビジネスリスクはコントロールできない。いや、それどころか、知らない間にどんどん大きくなってしまうだろう。なので、事業会社にこのリスクに「気付いて」もらう必要があるのだ。
 
 
自然資本コストの可視化をうながすCDP
 
 それでは、CDPはなぜ事業会社にカーボンや水などの環境パフォーマンスの開示を迫るのだろうか。それは、CDPは事業におけるこうした環境負荷、特にサプライチェーン全体における、つまり事業のすべてのステージにおける環境負荷の大きさが、将来の事業リスクと深くかかわっていると考えているからだろう。
 
 つまり、CO2をたくさん出したり、水をたくさん使用するような事業は、そうでない事業に比べて、環境に大きな負荷を与えており、それが事業の経済的パフォーマンス(損益)にも影響を与えると考えているのだ。だから、その情報を機関投資家に提供すれば、機関投資家は将来的に安定したパフォーマンスを期待して、環境負荷の低い企業に投資するだろうというわけである。
 
 そして、機関投資家がそのような行動を取れば、もちろん事業会社はサプライチェーン全体で環境負荷を削減するように動くだろう。こうして、事業の環境負荷は低くなり、経営は安定し、投資家は安定的なリターンを享受でき、自然への負荷が減り、事業が持続可能になるという好循環が生まれることが期待できるわけだ。
 
 ご存知の読者も多いと思うが、実はCDPはカーボン、ウォーターに続く3つめの開示項目としてフォレストを選定し、すでにいくつかの企業に情報開示を求め始めている。
 
 この3つの開示項目がいずれも自然資本と深く関係するものであることは興味深いが、これはもちろん偶然ではない。自然資本はビジネスを支えており、健全な自然資本なしにビジネスは行なえない。しかし、これまでは自然資本への負荷はほとんど評価されることがなかった、つまり外部不経済であった。なので、これまでは重要であるはずの自然資本なのに、先に使ったもの勝ち、汚したもの勝ちという状況が続いてきたのだ。
 
 CDPの活動は、このようにこれまできちんと省みられることがなかった自然資本への影響を可視化し、さらにはその影響を軽減するという流れを作ろうとするものであると言っていいだろう。それだけでなく、可視化をサプライチェーン全体、すなわち全ビジネスプロセスにおいて行なおうとしていることに、非常に大きな意味があると言える。
 
 サプライチェーン全体のカーボンを測定・可視化しようとする動きとしてはGHGプロトコルのスコープ3も有名だが、自然資本への影響の可視化という意味では、CDPの方がより範囲が広く、注目したい。そして実際、事業会社が水などの自然資本コストを意識せざるを得ない状況がすでに起きている。これについては、次回紹介したい。
 
 
(初出 2014年1月6日)

自然資本「超」入門