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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。

 

自然資本「超」入門

#15: なぜ水なのか

 
 これまで3回ほど連続して水をテーマに書いてきた。それはもちろん、きれいな水は豊かな生態系によって提供されるものであり、自然資本が提供する重要な生態系サービスであるからだ。しかしもう一つ、私たちビジネスパーソンが水のことを真剣に考えなくてはいけない理由がある。それは、水資源が、今後圧倒的に足りなくなるということである。連載第12回でも書いたが、世界の水需要は今後ますます増加するが、水の供給はほとんど変わらないため、2030年には需給ギャップが40%にもなると予想されている。
 
 地球は水の惑星、いくらでも水はあるではないかと思われる読者もいるだろう。しかし、地球上の水の97%は海水だ。残り3%弱の淡水も、ほとんどは南極や北極の氷であり、湖や河川などの地表に現れている、すなわち私たちが直接使うことができる水は、全体の0.01%にも満たない。そしてそのごくわずかな淡水資源の2割が汚染されていて、使いものにならないのだ。そのわずかな水が地表と大気圏の間を循環しており、それを私たち人間と多くの生物で共有している。
 
 それなら、海水を淡水化して使えばいいのでは、と思われる方もいるだろう。もちろん、技術的には可能だ。しかし、それにかかるエネルギーやコストを考えると、とても現実的とは言えない。どうしてもそうするしかない場面以外では、そんな贅沢な作り方をした水はとても使えないのだ。
 
 
 
水不足の社会で生きる

 
 その結果、国連食糧農業機関(FAO)の予測によれば、2025年には18億人が深刻な水不足を抱える地域に住み、また世界人口の3分の2は水ストレスが高い地域で生活することになるという。日本について言えば、一人あたりの年降水総量は世界平均の3分の1、一人あたり年水資源量は世界平均の2分の1と必ずしも豊富ではない。しかし、水消費が特に大きい食料生産は海外に依存しており、工業プロセスでは節水技術を進展させてきたため、現在では水不足に悩むことは少なくなってきている。さらに今後は人口が減少し、工場の海外移転もさらに進むであろうことを考えれば、国内での水不足はあまり経験しないかもしれない。
 
 こうした予測を聞くと私たち日本人は、あぁ良かった、私たちは影響を受けないで済む。世の中には気の毒な人たちが増えるようだが、それは遠い国の人々だけの話だ。そう思ってしまいがちである。
 
 しかし、それは早計というものだ。なぜなら、別の予測によれば、2030年には世界のGDPの70%が水不足の地域で作られるという。その時までに日本企業の多くは、生産のみならず、市場も海外にシフトしているだろう。その海外には、水不足の地域も多いはずだ。
 
 つまり、私たちはこれから、水不足の社会でビジネスをすることになるのだ。水不足を前提としてモノを作らなければいけないし、また製品も水不足の社会で使えるものでなければ売れないだろう。そういう常識を私たちは持たなければいけなくなるのだ。
 
 水不足の社会に適応するためには、ビジネスをどう変革したらいいのか、どう変革しなくてはいけないのか。その動きは、すでに始まっている。
 
 カーボンディスクロージャープロジェクト(CDP)と言えば、企業の気候変動対策に関する情報開示を行っている世界的な団体であるが、2011年からはカーボン、すなわち温室効果ガスだけではなくウォーター、水についての情報開示を企業に求める活動を行っている。そしてその範囲はもちろん、カーボンのときと同様にサプライチェーン全体だ。
 
 自社が使用する水の量を管理している企業は少なくないが、サプライチェーンとなると話は別だ。CDPが2011年に世界の生活必需品セクター企業に水に関する取組みについて聞いた際も、サプライヤーへ水について働きかけていると答えた企業は32%に過ぎなかった。しかし、翌2012年にはその割合は48%と、わずか1年間で1.5倍になったのだ。
 
 こうした世界の動きについて、次回以降、さらに詳しく紹介したい。
 
 
(初出 2013年12月5日)

自然資本「超」入門