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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。

 

自然資本「超」入門

#14: 水に依存し、水を守る企業たち

 
 前回は、事業の持続可能性のために飲料会社が水源を守っている事例を取り上げた。非常に分かりやすいし、本質的な活動である。しかし、水が事業の持続可能性に欠かせないのは、飲料に限らない。であれば、飲料会社以外でもこの問題に当然取り組む必要があるし、実際にそうしている企業も増えている。
 
 
「産業のコメ」は水田が守る
 
 半導体はしばしば「産業のコメ」と称される。幅広い産業で使われ、基盤となる材料だからである。しかし、実は半導体とコメにはもう一つ共通点がある。それは両者とも、大量のきれいな水を必要とするということである。最近では環境配慮により、以前に比べれば使用量は大幅に削減されているようであるが、それでもきれいな水がなくては半導体を作ることはできない。
 
 したがって半導体工場は、きれいな水が大量に得られる場所に立地することが多い。ソニーセミコンダクタの熊本テクノロジーセンター(熊本TEC)も、熊本市の豊富できれいな地下水を利用している。しかし、その水はソニーなどの工場が使うだけではなく、熊本市の市民にとっても重要な資源なのだ。ところが、近年の減反政策や都市化の進行により、地域の水田面積が減少したことから、田から浸透量が減り、豊かだった地下水量が急速に減ってしまったのだ。
 
 そこで熊本TECは、地元のNGOの呼びかけに応じて、休耕時の農家の水田や畑に川から水を引き、2003年から地下水の涵養を行っている。そして今では熊本TEC自身の水使用量を上回る水を地下水に涵養しており、水に関してゼロ・インパクトを実現している。
 
 工場での水管理というと、工程や機器の改良による水使用量の削減や、水の循環利用などがすぐに思い付く。もちろんそれはそれで良い試みではあるが、それでも水使用量をゼロにはできない。工場の外で水の涵養量を増やすことで差し引きゼロにしようという考えは、素晴らしい発想の転換と言え
るだろう。

 
 熊本TECの場合には周囲に休耕田などが多くあったため、水田を使う水源涵養というやり方ができた。周囲に水田がない場所ではこのような方法は使えないが、雨水を下水に流さずに地下に戻すような工夫をするだけでも地下水の涵養はできる。もちろん製造工程で使う水の量はそれではまかなえないだろうが、雨水の有効利用、生態系に供給される水の確保、下水の負担の軽減といった観点から十分意味がある活動と言える。こうした取り組みは海外では「ウォーターハーベスト」と呼ばれ、環境保全のための基本的な活動の一つとなっている場合も多い。
 
 もう一つ事業にかかわる、しかし少し変わった例としては、コスタリカの水力発電会社エナージア・グローバルの例が挙げられる。1990年代、同社は、せっかく作ったダムにすぐに土砂が溜ってしまうため、貯水量が減り、発電出力が低下してしまうことに悩まされていた。浚渫すれば貯水量は回復するが、多額の費用がかかる上に効果は長続きしなかった。
 
 よくよく調べてみると、これはダム上流の傾斜地にある森林を、地主が牧畜や農業のために伐採し続けていることが原因だった。そこで同社は地主と交渉をして、傾斜地を再び植林する活動を始めた。このことにより、土砂流出は止まり、ダムの貯水量と発電出力を高いまま維持できるようになったのである。
 
 最後に紹介したいのは世界最大級のビールメーカーであるSABミラーだ。持続可能性を重視する同社は、自社工場での水の使用の削減はもちろん、原材料の栽培においても農家と協力して節水と水源保全に取り組んでいる。そしてさらには、自社の工場で使用する電力の水力発電所で使う水までもスコープに入れ、総合的な水管理に取り組んでいる。
 
 水に強く依存している同社らしい取り組みといえるが、水に関して何が問題であるかを徹底的に分析した上で戦略的に取り組んでいる同社の姿勢からは、たとえ業種が異なっても、日本企業が学べることは多いだろう。
 
 
(初出 2013年11月5日)

自然資本「超」入門