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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。

 

自然資本「超」入門

#10: 日本企業も無関係でないオフセット

 
 前回は、鉱山開発や石油開発などの資源採掘産業を中心に、生物多様性オフセットなどの手法を用いて自然資本すなわち生態系に与える負荷を実質ゼロにする「ノーネットロス」が先進国ではもはや常識であることを紹介した。こうした話題は日本ではほとんど聞くことがないが、果たして日本企業には関係ないのだろうか。それが今回のテーマである。
 
 たしかに、日本国内には、生物多様性オフセットを義務付けるような法律は存在しない。環境影響評価法では、事業による環境影響をできるだけ回避、低減することが求められているが、厳密な手続きなどが定められていないため、なんらかの影響緩和を行えば良しとされているのが実態であり、また、そもそもアセスが義務付けられるのはかなり大型の13事業に限られている。したがって、国内で事業を行う限りは、今のところオフセットをしたり、ノーネットロスを達成することを法律で求められることはない。
 
 また日本国内の鉱山は既にすべて閉山しており、セメント用の石灰岩を除けば、採掘は行われていないと言える。このことも、日本国内でオフセットが話題にならない一つの理由かもしれない。もっとも海外の大手セメント会社は、操業地域によらず、生物多様性の保全に熱心なのだが̶̶。一方、海外での資源採掘に関与・出資している日本企業は多数ある。だが、こうした企業からも、オフセットのことが語られるのは稀である。
 
 いくつか私が聞いたところでは、海外で鉱山開発をする場合は、日本企業が単独で事業を行うことはほとんどなく、また出資割合も少ない場合が多いので、実質的な操業と管理は大口の出資をしている会社が行っており、環境対策もそちらに任せているという。カウンターパートがしっかりとしていれば、結果的には問題ないということかもしれない。
 
 しかし、海外の鉱山も、すべてがきちんとオフセットや環境対策を行っているわけではない。特に準大手以下が途上国で開発する鉱山では、まだまだ様々な問題が生じている。こうした鉱山に日本企業が関与していないのか、ちょっと気になるところである。
 
 
鉱山会社以外にも責任はある
 
 また、今後気を付けなくてはいけないこととしては、様々な鉱物や、それを利用して作った部品を使っている一般のメーカーである。
 
 問題となっているのは今のところ紛争鉱物(コンゴ民主共和国と周辺地域で採掘されたスズ、タンタル、タングステン、金)と貴金属全般であるが、今後、より多くの鉱物についてもトレーサビリティーや、採掘過程での環境や地域社会への影響が問われるようになるだろう。
 
 実際、先日ある海外のNGOの専門家から、「日本企業が利用する鉱物のトレーサビリティーはどうなっているのか。そもそも日本企業は問題意識を持っているのか」という質問を受けた。製造業で世界をリードする日本企業が、原材料の採掘過程においてどれだけ配慮を行っているのか、国際的な関心は高いのである。
 
 このNGOの場合には、関心の高い企業があればトレーサビリティーを確認し、生物多様性への影響を最小化するような活動を一緒にしたいというポジティブな関心であったが、逆に、こうしたことに無関心な日本企業を糾弾しようとするNGOがいつ現れても不思議ではない。したがって、多様な鉱物資源に依存している電気・電子産業や自動車産業は、このような課題にもっと注意をする必要があるかもしれない。
 
 さらにもう一つ気を付けなくてはいけないのは、鉱山開発以外の場面、例えば新しく工場や農場などを作るときなどにも、オフセットが求められる場合があることだ。オフセットが義務化されている国においては、事業の種類ではなく、開発場所に応じてオフセットの義務が発生する場合が多い。新たに事業を行おうと思っている場所においてオフセットが義務化されていないか、もしそうだとすれば、どのようにオフセットを行う必要があるのか。海外で事業を行うすべての企業が関係する問題と言っていいだろう。
 
 
(初出 2013年7月5日)

自然資本「超」入門