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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。

 

自然資本「超」入門

#09: 自然資本へ巨大な影響を与える採掘産業

 
 企業と生物多様性や自然資本の関係を考えたとき、海外でまず最初に話題に上る業界は鉱山開発や石油開発などの資源採掘産業である。例えば、世界第一と第二の鉱山会社であるBHPビリトンやリオ・ティント、石油メジャーのBPやシェル、セメントメジャーのラファージュ、ホルシム、セメックスなどは、ビジネスと生物多様性に関する国際会議には必ず登場するか、先進事例として取り上げられる。
 
 しかし、こうした世界的企業も、常に優等生であったわけではない。むしろ、過去においては生物多様性や生態系を大規模に破壊しているとして、NGOなどから徹底的に攻撃されてきた。
 
 実際、鉱山開発や油田開発は地形を大きく変えるような大規模な採掘を行い、土壌や河川、地下水、海洋を重金属や化学物質で汚染し、さらには掘り出した土砂を処分するために周囲の生態系を破壊するなど、きわめて重大な環境破壊を起こして来た。
 
 そのことが地元住民やNGOから、時には国際的な世論からも強い批判を受け、もはや鉱山開発は政府からの操業許可だけでなく、「社会からの操業許可(ソーシャル・ライセンス・トゥ・オペレート)」がなければ行えないというのが現在の国際的な常識と言っていいだろう。
 
 また、法律が未整備あるいは実施能力が弱い途上地域で開発が行われることも多いことから、個々の企業が自主基準を作成したり、こうした課題に対応する目的で国際金属・鉱業評議会(ICMM)という国際的な業界団体が創設され、自主規制を行っている。
 
 それゆえに、メジャーと呼ばれる最大手はさすがにあまり乱暴なことはしなくなってきたが、それでも事故も絶えないし、また、より規模が小さい採掘企業はいまだかなり多く問題を起こしているとの指摘も根強い。
 
 したがって、採掘産業においては、自らが生態系サービスやそれを生み出す自然資本に依存しているからというよりは、人類共通の資産である自然資本を大きく損なう可能性が高いという点から、自然資本すなわち生態系に与える負荷を最小にすることが強く求められている。
 
 
ノーネットロスが世界の潮流に
 
 そして、日本以外のほとんどすべての先進国においては、鉱山開発などで生態系を破壊する可能性がある場合には、それと同質・同面積以上の生態系をそのごく近くで保全ないし再生する、いわゆる「生態系オフセット」が義務化されている。
 
 先日私は関連の国際会議に出席したが、欧州ではそもそも貴重な動植物の生息地を保全するため、開発の際にはオフセットを義務化する生息地指令(ハビタット・ディレクティブ)があるが、それをさらに明示化し、オフセットを行うことで開発の影響を差し引きゼロとするノーネットロスを義務化するための議論が進んでいた。
 
 一方、途上地域ではオフセットを義務化したり、義務化の準備を進めている国は少ないが、前述のようにむしろそうした国で鉱山開発は多く行われている。その地域の国内法が未整備だという理由で、生態系を破壊することは許されない。地域によって異なる基準を適用してダブル・スタンダードだと批難されることがないように、世界中で事業を行う資源会社は、厳しい統一的な基準で自主管理を行う必要がある。
 
 そのためにNGOや国際機関も含めた関係者が集まり組織したBBOP(ビジネス・アンド・バイオダイバーシティ・オフセット・プログラム)という団体が、生物多様性オフセットに関する国際的な規準を作っている。ここで熱心に活動している企業は、やはり鉱山会社だ。
 
 最も先進的な企業は、生物多様性をオフセットするだけでなく、その生物多様性が地域社会に提供している生態系サービスが損なわれないよう、文化的側面、経済的側面も含めたオフセットを行っている。
 
 さて、こうした話題は日本国内ではほとんど聞かれることがないが、日本企業には関係ないのだろうか。次回は、そのことについて詳しく説明したい。
 
 
(初出 2013年6月5日)

自然資本「超」入門