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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。

 

自然資本「超」入門

#07: 環境を自ら作ってきた生物たち

 
 前回は、生態系サービスを支える基盤サービスのうち、一次生産と栄養塩の循環について説明した。
 
 地球という限られた空間の中で、なぜこれまで38億年にもわたって生命が存在することができたのかと言えば、それは生物が太陽光をエネルギー源に、自分たちの身体を構成する物質(炭素と栄養塩)を循環させる仕組みを作り上げたからである。その仕組みこそが、一次生産と栄養塩の循環であり、したがって基盤サービスは生態系の仕組みそのものと言っても良いという内容だった。
 
 実は生物の活動を通じて循環しているのは、生物の身体を構成する物質やエネルギーだけではない。すべての生命にとって必要な水もまた、生物の活動を通じて循環している。
 
 水の循環というと、おそらく多くの方が太陽のエネルギーによって水が蒸発し、それが雲を作り、雨を降らせ、降った雨は川となり、海まで流れ出し、そしてまた太陽で暖められて̶̶という水の大循環を思い浮かべるだろう。もちろんこれが自然界における非常に大きな循環であるのは確かなのだが、これ以外にも生物による水の循環がある。
 
 
植物がつくる水の循環
 
 ご存じのように、植物の成長にとって水は非常に重要だ。しかし、植物は単に水を体内に吸収しているだけではなく、そこで化学変化を起こさせていることをご存じだろうか。
 
 光合成は二酸化炭素と水から糖類を作る反応であり、水(H20)は分解されて酸素を放出する。同時に植物は、葉にあいた孔(気孔)から、水を蒸散させている。これは気孔から二酸化炭素を取り込むときに起きてしまう不可抗力とも言えるが、根から栄養塩を葉まで吸い上げるために水の流れが必要だからでもあるし、また、強過ぎる日差しで葉温が上昇してダメージを受けないためでもある。炎天下でも植物の葉はひんやりしていることに驚いたことがある方も多いだろう。
 
 つまり、植物は地面から水分と栄養塩を吸い上げ、それで自身が成長すると同時に、空気中に大量の水を蒸散させているのだ。森の中がひんやりと湿っているのは、この蒸散の効果である。そして、森の樹冠からは大気へ大量の水蒸気が供給されるので、森の上には雲ができ、再びそれが雨となって落ちてくる。乾燥している土地に森ができにくいことは周知の事実だと思うが、逆に、もともと水が豊かな地域であっても、森がなくなると乾燥化は進行する。
 
 このように植生の存在によって、その地域での小規模な水の循環が生まれ、それがまた生物の生息を助けている。しかも同時に、植物は水の中に含まれる有機物を栄養として利用するので、水を中心に見ると、有機物で汚れた水が植物によって浄化されることになる。こうした植物の働きも、基盤サービスの一つである。
 
 さらには生物が生活するのに必要な土壌も、生物によって作られている。土壌の成分には岩石が風化した無機物もあるが、生物にとって重要なのは一番表面の有機物からなる層だ。もちろんこれは、土壌の上に積もった落葉をはじめとする生物の遺体とそれが分解されたものからなっている。
 
 こうした遺体を分解して「土に還す」のは微生物の仕事であり、その微生物の働きによってふかふかとした間隙の多い土壌が生まれる。これが植物の豊かな成長を可能にする。つまり、生物が成育しやすいような土壌を形成するのもまた、生態系の働きといえる。
 
 これ以外にも、昆虫や鳥、ときにコウモリが受粉を媒介する働きも、植物が次の世代を生むために重要な基盤サービスの一つである。さらにはこうした花粉媒介によって結実した植物の実を動物が食べ、種子を別の場所に運んで排出することもまた基盤サービスである。植物は自ら移動することはできないが、動物に種子を運んでもらうことで、次世代の生息域を広げていくのである。つまり、花粉媒介や種子散布も生態系が持つ基盤サービスの一種であり、このことで生態系自身が維持されるのである。
 
 このように生物は自ら生きると同時に、他の生物が生きることを助け、また生きやすい環境を作ってきたのだ。
 
 
(初出 2013年4月5日)

自然資本「超」入門