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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。

 

自然資本「超」入門

#05: 生活を豊かにする「文化サービス」

 
 皆さんは、休日をどのように過ごすことが多いだろうか?この時期は寒いので頻度は下がるかもしれないが、近所の公園や河原に出かけたり、あるいは少し足を延ばして近くの山をハイキングするのが好きという人もいるだろう。まとまった休暇が取れるときには、自然の豊かなところに出かけてリフレッシュする、そんな過ごし方が好きな方は多いだろう。
 
 実際、美しい自然を見て、澄んだ空気を吸えば、日ごろの疲れも吹き飛ぶ気がする。もちろん優美にデザインされ、整然とした建物も美しいと感じるが、誰がデザインしたわけでもなく、むしろいろいろな要素が複雑に混じり合って混然としている自然の景観に、美しさのみならず、安らぎを感じる。不思議なものである。
 
 そのメカニズムはともかく、このように私たちに安らぎを感じさせ、忙しい日常の疲れや悩みを吹き飛ばしてくれるのも、自然の重要な機能、すなわち生態系サービスだ。
 
 さらにはその景観や、そこで聞いた小鳥のさえずりや葉が擦れる音に、そして様々な生物の色彩や形は、私たちが絵を描いたり、音楽を作ったり、詩歌や文学作品を生むヒントにもなっている。今のような忙しい時代の都会の生活者だけでなく、はるか昔から人間は自然を楽しんできたのである。
 
 もちろん自然には厳しい側面もある。したがって、多くの地域、多くの文化において、自然は崇敬の対象となり、また特定の場所は聖なる場所として大切に守られて来た。自然の中に霊が宿るという考え方は、決して日本だけのものではない。凛とした美しさに、人を寄せつけない厳しさに、誰しもが霊的なものや畏怖の念を感じるのだろう。
 
 このような自然の美しさ、そこで感じる安らぎ、幸福感、敬虔な気持ち、こうしたこともすべて生態系が私たちに提供している”サービス”だ。これらは特に「文化的サービス」と呼ばれている。これまでに紹介した「供給サービス」や「調整サービス」がモノや特定の機能に関するものに比べると、意識しにくいかもしれない。しかし、生態系があるお蔭で私たちがそうした”サービス”を享受できているのであるから、やはりこれも生態系サービスに含まれるのだ。
 
 
生態系サービスが土地の文化や食を支える
 
 ところで、現代の社会では、こうした自然がもつ美しさ、精神的価値、霊的価値が、娯楽の対象、産業の基盤にもなっている。散歩、ハイキング、キャンプ、森林浴、バードウォッチング、海水浴、ダイビング、ラフティング――。様々なレクリエーションは、様々な自然が存在すればこそ楽しめる。そして、ツーリズム=旅行業も、様々な生態系があることに大きく依存している。最近では、珍しい生物や自然を楽しむことを目的としたエコツーリズムも盛んになってきたが、これに限らず、実はほとんどの旅行が生態系サービスに依存していると言ってもよい。
 
 なぜなら、旅行先で私たちは、その土地の自然の美しさのみならず、その土地ならではの食や文化も楽しんでいる。ではなぜ地域ごとに様々な食があり、文化があるのかと言えば、それはそれぞれの地域ごとに異なる自然があるからだ。
 
 食材はもちろん自然の恵みであり、多様な自然があるからこそ、食材も、食文化も、多様なものになる。そして食以外の各地の文化も、その場所の気候や風土とそこに息づく自然に依存して、生まれ育って来たのである。最近では、祭事に使われるその地方に特有の植物が少なくなり、止むを得ず代わりのもので済ませているという話も聞いたりする。
 
 つまり、旅行業は生態系サービスのおかげで成立している産業なのだ。だからこそ、世界的には生物多様性の保全に力を入れている旅行業者も少なくない。一方、私たちは普通、こうした文化的サービスに対して直接対価を払うことはないので、その価値をほとんど意識しなかったり、あるいはとても低くしか考えていない。もちろん、私たちがその価値を認識していようがいまいが、文化的サービスの重要性は変わらないし、本当の価値は、私たちが想像している以上に大きなものであろう。さて、あなたはこれまで、文化的サービスをどのぐらい意識していただろうか?
 
 
(初出 2013年2月5日)

自然資本「超」入門