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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。

 

自然資本「超」入門

#03: 生活と産業を支える供給サービス

 
 ビジネスを行うには、資本が必要だ。その資本を使って、ビジネスに必要な様々なサービスを買ったり、作ったりすることができるからだ。そして自然資本もまた、ビジネスに必要な様々なサービスを提供してくれる。しかも、タダで。
  
 これがまさしく、生物多様性がビジネスにとって重要な理由だった。前回は森林という生態系を例に、森林の生物多様性=自然資本が作りだす様々な生態系サービスを紹介した。今回からは、それをより細かく、体系的に見ていきたい。
 
 生態系サービスという言葉は耳慣れなくても、「自然の恵み」と言えば誰しもピンと来るだろう。季節の移ろいにしたがって、また地域ごとに、私たちが様々な食材を楽しむことができるのは、様々な生きものがいるからこそである。私たちはその豊かさに感謝の気持ちを込めて、それらを自然の恵みと呼んでいる。
 
 食料だけではない。木、竹などの素材も生物由来であり、私たちはそれを様々な道具や家具に加工し、家を作るのにも使っている。綿、麻、絹、羊毛、毛皮――。服などを作る繊維も、基本は生物由来だ。最近では化学繊維も多く使われているが、そもそも天然繊維の代替物であり、いまだ天然繊維の方が優れている場合も多い。
 
 繊維のもう一つ重要な使い道は紙だ。書いたり、印刷したりするだけでなく、包んだり、クッションにしたり。こうした紙も、木などの植物繊維から作られている。薪や炭などの燃料も生物由来である。戦後は石油やガスの方が一般的になったが、気候変動や化石燃料の有限性を考慮し、再び生物由来のバイオマスエネルギーへ注目が集まっている。
 
 
自然資本はビジネスの存在基盤
 
  こうした例を挙げると、一次産業にかかわるもの、古くさいものばかりだと思われるかもしれない。たしかにいずれも昔からあるものだ。しかし、その機能や価値が低いわけでもないし、一部の用途にしか応用できないわけではない。
 
 例えば、生物由来の油脂や樹脂は工業用の原料としても重要だ。フィルム、タイヤ、石鹸、塗料、化粧品――。代替の人工素材がある場合も多いのに、今も様々な工業製品を作るために生物由来のものが多く使われている。
  
 薬への貢献はさらに大きい。生薬はもちろん、植物や動物、微生物などの成分から、新しい薬が開発されている。最近では機能性食品として、健康維持に役立っている場合もある。
 
 最後にもう一つ、生態系が私たちに提供してくれるものとして、生物そのものやその成分ではないが、重要なものを紹介しよう。それは水である。
 
 もちろん、水はもともと地球上に存在し、生物が作る有機物ではなく、無機物である。しかし、私たちが一度使って汚してしまった水が再びきれいに使えるようになるのも、あるいは有限な資源である水が地球上でうまく循環し、常に「新しい」水を使い続けることができるのも、生態系のおかげだ。
 
 生態系サービスの中でも、このように様々な物質を私たちに提供してくれるものを、特に「供給サービス」と呼んでいる。物質やそれを使って作られる製品やサービスには値札が付いていることが多いので、供給サービスの価値は私たちも理解しやすい。私たちが毎日使っている膨大な自然資源を考えれば、地球全体での供給サービスの価値の総計は、とてつもない金額になるだろう。
  
 しかし、供給サービスのすごさは、規模だけではない。冒頭の食材の例で述べたように、場所や季節が違っても、類似の物質を供給してくれることもある。それが故に、熱帯地域でも、温帯地域でも、人間は食料を得ることができるのだ。そしてもう一つすごいのは、生態系はこうした物質を、毎年毎年供給し続けてくれるということだ。化石燃料などの枯渇性資源とは根本的に違う点である。
 
 したがって、この供給サービスを作り出す自然資本を保全すれば、私たちはこれからもこのサービスを、そしてそれらがもたらす様々な物質を、ほぼ永遠に使い続けることができるだろう。だから自然資本は、ビジネスの、そして私たちの存在の基盤なのだ。
 
 
(初出 2012年12月5日)

自然資本「超」入門