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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。

 

自然資本「超」入門

#02: 自然資本が生む生態系サービス

 
 この原稿は、生物多様性条約第11回締約国会議 (COP 11) が開催されているインドのハイデラバードで書いている。今回のCOPは、今一つ目玉が見えにくく、意味のある成果が出るかどうかかなり微妙であるが、その中で「自然資本」という言葉は着実に普及しつつあるように思える。
 
 ビジネスや経済と生物多様性について議論するサイドイベントなどでは必ず自然資本という言葉が登場し、欧州を中心にこの考え方を広めようとする強い意志の存在を至るところで感じる。
 
 さて前回は「今後の企業経営には自然資本が大切だ。私たちの生活や企業活動を支えるフローを生み出すストックだからだ」と述べた。では、自然資本が生み出すフローとは何なのだろうか。
 
 自然資本が生み出す様々なフローを、私たちは普段無意識に使っている。例えば、木材だ。割り箸にはじまり、家具、建材、梱包材、燃料(薪や木炭)など、日常生活だけでなく、様々な産業の極めて多くの場面で使われている。私たちが毎日大量に使っている紙も、元はと言えば木を原料にしている。
 
 この木材を提供しているのは言うまでもなく森林という生態系であり、これこそが自然資本だ。森林生態系という資本があればこそ、私たちは、木材というフローを使うことができるのだ。木材を使い過ぎて資本(=森林)を減らすようなことになってしまっては、そこから得られる木材もまた減ってしまう。
 
 
森林が提供する経済価値に意識を
 
 森林という自然資本が私たちに提供してくれるのは、木材だけはない。キノコや木の実、イノシシやシカの肉など、実に様々な自然の恵みを私たちも、産業も受け取っている。さらに言えば、 森林が私たちに提供してくれるのは、こうしたモノだけに限らない。
 
 例えば、森林は二酸化炭素を吸収するし、そこに降った雨を貯留し、少しずつ流れ出るようにする。また、表土の流出や土砂崩れの発生を防ぐ。さらに、森林の内部は外側に比べて気候条件の変化が少なく、安定している。そのために、多くの生物にとって住みやすい環境となっている。こうした機能も、森林が私たちに 提供してくれるものだ。
 
 森林はもっと別の機能も持っている。私たちは誰しも休みの時には、自然の豊かな所でのんびり過ごし、リフレッシュしたいと 思うだろう。だからこそ、森の中をハイキングしたり、キャンプをして過ごすのだ。そこで絵を描いたり、一句ひねったりということもあるかもしれない。実際、森は絵画のモチーフにもなるし、 森を舞台にした文学作品も多い。
 
 森林が地域の文化の背景になっていることも多く、神聖な場所として、信仰の対象になっている場合もある。森林があればこそ、こうした人間活動が可能になるのであり、ツーリズムなどの産業も成り立つのだ。つまり、こうした機能も、森林という自然資本が私たちに提供してくれるフローと言っていいだろう。
 
 林野庁は森林が持つ様々な機能を、「森林の多面的機能」と呼び、その経済的な価値を推定している。それによれば、二酸化炭素の吸収は年間で1兆2,391億円もの価値があるとのことだが、レクリエーションの価値はその2倍近い2兆2,546 億円で、洪水緩和機能は6兆4,686 億円、表面浸食の防止においては28兆2,565億円分の価値があるという。
 
 こうした「多面的機能」は、国際的には「生態系サービス (ecosystem services)」と呼ばれることが一般的である。生態系が提供するサービスという意味だ。
 
 生態系サービスのより一般的な説明は次回に行うが、森林生態系一つをとっても、これだけ多くの生態系サービスを提供しており、その経済的価値は非常に高いことがお分かりいただけただろうか。しかも、ここに挙げたものは、そのごく一部に過ぎない。 森林という自然資本は、実に莫大な生態系サービスを私たちに提供してくれているのだ。
 
 
(初出 2012年11月5日)

自然資本「超」入門