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このコーナーは、弊社の代表足立が「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」が発行するCSR担当者とCSR経営者のためのニュースレター「CSR monthly」に連載している「自然資本としての生物多様性」を転載したものです。
自然資本とは何か? なぜ企業が自然資本を意識した経営をすべきかについて、わかりやすく解説いたします。
原則として、毎週月曜日に記事を追加しています。
「CSR monthly」にご興味がおありの方は、こちらをご覧ください。

 

自然資本「超」入門

#01:生物多様性がビジネスを支える

 
 名古屋で生物多様性条約の COP10 が開催されてからもう2年が経つ。この原稿が皆さんの目に触れる頃には、インドでCOP11が行われている真最中だろう。(※1)
 
 COP10 以降、「生物多様性」という言葉も少しは知られるようになった。しかし、自分たちの会社と、ましてや自分たちの事業との関係性を理解し、十分に腑に落ちているという方はまだそれほど多くないのではないだろうか。

 
 それはおそらく、生物多様性というと、絶滅の危機に瀕した野生生物や、熱帯林の奥深くにひっそりと暮らす珍しい動植物のイメージが強いからではないだろうか。だから、「わが社の生物多 様性保全活動」としてNGOや市民による自然保護活動に社員ボランティアが参加したり、会社として寄付をしたりということを挙げる会社が多いのだろう。

 
 あるいは、植林やビーチクリーン活動などを挙げて胸を張る会 社も少なくない。もちろんそうした活動も立派であるし、是非これからも続けていただきたい。しかし、それだけでは企業がすべきこととしては不十分だし、経営にはあまり役に立たないだろう。

 
 この連載では、企業経営、特に事業をどう持続可能にしていくかという観点から、生物多様性を企業経営に生かすためのヒントを紹介していきたい。

 
 生物多様性についてなかなか理解が進まない原因の一つは、「生物多様性」という言葉にあるかもしれない。今まであまり聞いたことがない、何のことかよくわからない言葉が登場し、「これからは企業も生物多様性を保全しなくてはいけない」と急に言われても、面食らうのが普通だろう。なにせ多くの企業人は、自然からは遠く離れた、昼夜と四季であまり環境も変化しないような都市のビルの中で、仕事をしているのだ。生物とはもっともほど遠いようにも思えるではないか。

自然資本をどう増やすか
 
 では、「生物多様性」という言葉に代えて、これからの企業経営には「自然資本」が大切です、と言われたらどうだろうか。それが何を指すのかはわからないとしても、「資本」と言われると、 ビジネスと関係がありそうだと思えないだろうか。どういう話なのか、もうちょっと詳しく知りたくなるのではないだろうか。
 
 そういうあなたのために、この連載はある。あるいは、自分では生物多様性はとても大切だと思うのだが周囲の人たちにはなかなかそれが伝わらない。そういうあなたのためにも有用なはずだ。この切り口なら、きっとあなたの上司や同僚にも興味をもってもらえるはずだからだ。

 
 さて、そもそも資本とは何だろうか。一般的には、事業の元手 になるお金のことを言い、企業で言えば資本金のことを指す場合が多い。

 
 近代経済学において、資本金は土地、労働とならぶ生産三要素の一つだ。資本金を元に生産活動を行い、それによってまた資本金が蓄積していく。蓄積していくことからストックと称され、これに対し、ストックから生み出され生産活動のために使われるお金や、生産活動の結果得られたお金はフローと呼ばれる。これは皆さんご存じの通りだ。

 
 そして企業活動に必要な資本は、実はお金(金融資本)だけではなく、物的資本(建物、設備など)や人的資本(人材)もある。最近ではさらに社会資本も企業にとって重要な資本の一つに数えられることもある。

 
 
 これらは最初にある資本を使って活動が行われ(フロー)、その結果、余剰の価値が生まれるとそれによってさらに資本が蓄積され(ストック)、そのことによって次はさらに大きな活動を行うことができる、という性質を持つ。生産活動の拡大だ。

 
 さて自然資本であるが、「自然」―すなわち生物多様性と言い代えてもいいが―も「将来にわたって、私たちに価値のある商品やサービスのフローを生み出すストック」と考えることができるではないかというのが、その基本的な考え方だ。

 
 そして実際に生物多様性と私たちの関係をいろいろと分析してみると、まさに生物多様性が私たちの生活や企業活動を支えるストック、つまり資本であることがわかる。だとしたら、当然その資本である生物多様性は重要であり、これをどう守るか、いや、どう増やすかが、企業にとっても大きな課題になるのだ。

 
 次回以降は、自然資本が生み出すフローとは何なのか、それが企業活動とどう関係があるのかを具体的に紹介していきたい。

 
 
※1: オリジナルの記事が発行された2012年10月5日現在

(初出 2012年10月5日)

自然資本「超」入門